閑話 19
お待たせしました。
~パウディル聖教巡教団団員 ラーナの視点~
今回の巡教の旅を終え、リーフェン王国での出来事を法王猊下にお伝えしたのち、久しぶりの自室に戻ろうとしたときです。
広場で、修道士・修道女見習いである7~8歳ほどの子供達が、1人の男の子を取り囲んで口論をしていました。
「どうしたのですか?」
先頭にいた少年に、口論の原因をたずねてみる。
「だってこいつが、獣人や魔族の信者なんか追い出せっていったんだ!」
「みんなパウディル様に使える神職なのにおかしいわ!」
すると、取り囲んでいた少年少女達は、取り囲んだ少年を睨み付けながら、口々にその少年の発言に対する怒りが吹き出てきた。
すると取り囲まれていた少年が、
「うるさい!パウディル様が祝福をくれたのは人間だけなんだ!だから動物や魔物は神都から追い出さないとだめなんだ!」
そういいながら、囲んでいる側にいた、猫獣人の女の子に石を投げた。
「きゃあ!」
当たりはしなかったものの、再度石を投げようとした少年の腕を、私は捕まえた。
「離せ!それが正しい教えだって司祭様がいってたんだ!」
「ねえ。その司祭様って、どんな人?」
私は少年に問いかけた。
「それは誰に教えてもらったの?」
「ひっ!」
どうやらかなり恐い顔をしていたのだろう。
少年は怯えた。
しかし、人間至上主義などという、前世でも蔓延した人種差別そのものの考えを広めている存在を許せなかった。
しかも前世と違い、神と対話できるこの世界で。
「教えてくれたのは…」
少年の口から聞かされた人物の名前は、納得できる名前だった。
~パウディル聖教法王兼パウディル神聖国国主 ラグウス・バリュヌスの視点~
私がその人物の報告を聞いた時、
そのような力と技術を持つものが居たという驚き。
その力を神パウディルのためにふるって欲しいという願い。
そして、蔓延っている拝金主義者に目を付けられるのではないかという心配。
私がどれだけ心配したところで、どうなるというものではない。
法王などといわれたところで所詮は人間。
どれだけの事ができるというのだろうか。
この神聖国内にも、神パウディルの教えを曲解している者が増えてきている。
ひとえに私の教えが悪かったのだろう。
なにが法王だ。
私より法王に相応しいものは既にいる。
が、本人はそれを受け入れない。
自分は若輩だからと。
その謙虚な思考も、法王として相応しいと、私は思っている。
無責任だと思うが、1日でも早く法王の座を譲りたいものだ。
~パウディル聖教の聖職者達の視点~
「聞いたかね?リーフェン王国に聖女に匹敵する治癒魔法の使い手がいるらしい。しかもとんでもなく高価なポーションも製作できるらしい」
「それはそれは…。随分と布施が集まりそうですな♪」
「しかも噂だと、女でかなりの上玉らしいですぞ♪」
「それはそれは!是非とも神都に連れてきたいですな!」
「枢機卿の身の回りの世話などは身に余る名誉ですから泣いて喜ぶでしょう♪」
「直ぐにでもリーフェン王国に命令を降しましょう!」
「そうですな。あのような小国には勿体無いというものです♪」
「1日でも早く我々の所に出家させなければなりませんな♪」
~???の視点~
「ほう、聖女に匹敵する魔力と、ポーション製作の技をもっている。と?」
「はい。未確認の話では、フルポーションを製作したとかしてないとか」
「それはぜひとも確認したいものだ。下がって良い」
部下を下がらせると私は椅子に身体を沈めた。
「僥倖だ、私の妾が2人になるか…。優秀な人材のようだから我が妻も邪険にすることはないだろう」
私は天を仰ぎみた。
「ああ、我が妻パウディルよ。私がお前を娶ったあとは、私が神の王として君臨してやろう!安心するがいい…」
舞台は整いつつある。
後はゆっくりとその時を待つばかりだ。
1日でも早くなどと焦ってはいけない。
この身が神となれば、100年200年など瞬く間でしかないのだからな…。
厄介な相手がきます
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