第76話 お屋敷訪問
今後の展開に悩み中…
ご領主であるゼルバンド伯爵のお屋敷は、メセの町の北側にあり、王都にあるサヘラさんのお屋敷と同じくらい立派なものだった。
リガルトさんが一緒に来てくれていて本当に助かった。
僕ひとりだと、とてもじゃないが入れる気がしなかった。
執事さんに案内されて通されたのは、いわゆる応接室だった。
メイドさんがお茶をだしてくれたけれど、緊張で手をつけることができなかった。
しばらくしてから、現れたゼルバンド伯爵は、貴族にしては簡素な感じの服を着ていた。
僕を誘拐したザザーコ男爵と違い、威厳も風格も備えた人物なのだと、改めて感じとれた。
「よく来てくれたなリガルト。街の事で色々と骨を折ってくれている上に呼びつけてしまって」
「とんでもごさいません。それに本日は、彼女の付き添いですので」
リガルトさんは何度も会っているためか、なれた様子だ。
「そして薬師ヤムよ。お主に会うのは2度目になるかな」
そして、僕にも声をかけてきた。
呼ばれているのだから当然だが、そうなると、以前の事件でお世話になった事実がおもいだされ、自然と頭を下げてしまう。
「冒険者ギルド長に濡れ衣を着せられた際には、お助けいただき、本当にありがとうございました」
「なに、あれは領主として当然の義務を果たしただけだ。むしろあやつを放置せざるを得なかった私に咎がある」
冒険者ギルド長・ディウスが引き起こしていた様々な事件や不利益は、解決した今でも忸怩たる思いがあるのだろう。
伯爵様は苦い顔をしていた。
しかしすぐに表情を変え、
「むしろこちらの方こそ、例のモンスタースタンピードの時の尽力に礼を言わねばな」
モンスタースタンピードの時の御礼を言われてしまった。
こうなると、今度は僕が申し訳なくなってくる。
「あれは私が原因のようなものですから、心苦しいです…」
「気にすることはない。例えお主が絡んでいなくとも、あの工作員がいずれ発生させていたのだからな」
なんとなく、御礼とお詫びの応酬になってしまった。
これ以上は埒が明かないと考えたのか、ゼルバンド伯爵が話題を変えてきた。
「それより薬師ヤム。洗髪剤と調髪剤。それから、せっけんと薬用の肌用軟膏といったか?それを制作していると聞いたが、間違いはないか?しかもそれを王妃様が御用達にしたというのも」
そう尋ねてきた伯爵様の顔は、真剣そのものだった。
「はい。間違いございませ…」
「そうか!ではそれを是非とも売ってくれ!噂を聞いた妻にせっつかれているのだ!」
僕が伯爵様の質問にを答えると、伯爵様は必死な表情を浮かべながら、食い付き気味に僕の手を握りしめてきた。
それにはリガルトさんも驚いたらしく、目を丸くしていた。
「いま持ってきていますから、お手をお離しください…」
「なんと!感謝するぞ薬師ヤムよ!」
伯爵様は歓喜の表情を浮かべ、腕を激しく上下に動かした。
リガルトさんの助言は、本当に的確だった。
実は、この作品の執筆をはじめてから、
『鬼灯○冷徹』江○夏実:著
という作品をしりました。
そのため、こうしたほうがよかったとか、
この閻魔大王様なら、隠蔽しようとせず、本気で謝ってくれただろうな。とか、
そもそも、報告書と本人の様子との矛盾を鬼○様が見逃さないはずはないよな。
とか思ってしまいました。
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