第75話 召喚状
連日の雨で洗濯物がふえるたまるふえるたまる…
アイーダさんが執務室の重厚な扉をノックすると、中から声が響いてくる。
「入りたまえ」
「失礼します。ヤムさんをお連れしました」
「失礼します…うわっ!」
アイーダさんに続いて中に入ると、部屋の中には、デスクの上だけではなく、床やテーブルにまで、山のように書類が積まれていた。
「いやぁ、来てくれて丁度よかった」
山のような書類の向こうから、少しやつれた感じのリガルトさんが姿を表した。
「なにかあったんですか?」
僕が来て丁度よかったということは、僕に関係する事のなのだろう。
場合によっては、覚悟をもって相手と対峙しないといけない。
そんなことを考えていると、リガルトさんが1通の手紙を取り出した。
その手紙には、綺麗な縁取りと、しっかりとした封蝋がしてあった。
「この街の領主、ズィルバート・ドルゼン・フォン・ゼルバンド・オブ・メセ伯爵から、昨日届けられた。おそらく召喚状だろう。君が定住した事はまだしらないようだから、君が来た時に渡してくれと」
「ええっ?!」
驚きながらも手紙を開封し、内容を確認すると、やはり召喚状だった。
「以前あったからわかるだろうが、伯爵は立派な人物だ。悪いことにはならないだろう」
以前にあった、冒険者ギルド長ディウスの暴挙事件の時に、兵隊を連れて捕縛に来てくれた人物だ。
その後の対応も、我欲のないものであったから、酷い人でないのはわかるし、サヘラさんが問題ないと判断した方なのだから大丈夫だろう。
「それで、いつお伺いすれば?」
「明日連絡をするから…早くても面会は明後日になるだろうな」
とはいえ、リガルトさんはにこやかに笑っているけれど、僕は不安でいっぱいだった。
国王陛下に初めて謁見した時は、自分の意思ではなかった。
2回目は判決の現場であり、違う意味での緊張でいっぱいいっぱいだった。
つまり、ちゃんとした招待を受けての訪問は初めてだからだ。
それからは、リガルトさんから色々アドバイスをいただいた。
ご領主であるゼルバンド伯爵のお屋敷に向かうにあたり、ドレスとか着ないといけないのかと思っていたが、私的な用事だからいつもの服装でいいだろうといわれたり、
商業ギルドに卸す予定の商品・現在卸している商品は、サンプルを持っていった方がいいとか、
さらにそれとは別に、贈り物も用意した方が良いらしいとも言われた。
そのため、家に帰ってからは、サンプルやら贈り物やらを準備するために、かなりバタバタしてしまった。
そして、商業ギルドで召喚状を受け取った翌々日。
領主、ズィルバート・ドルゼン・フォン・ゼルバンド・オブ・メセ伯爵のお屋敷に向かうこととなったのである。
今まで時々でてきた伯爵様からのお誘いです!
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