第74話 売れ筋商品達
転居がようやく落ち着いたので、ポーションの納品と、洗髪剤一式の詳しい話をするべく、商業ギルドにむかった。
ギルドは、相変わらず商人達でごった返し、実に賑わっていた。
先だって出版された『ストーンダル男爵の美食探訪』の本も記事も人気らしく、何人もの人が待ち合いの時間を利用して読みふけっていた。
僕は買い取りの整理券を取って、待合室の長椅子に座る。
そして誰に話しかけられることなく時間は過ぎ、番号を呼ばれたので、指定された6番の商談室にむかう。
そのドアをノックすると、聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。
「どうぞ~」
「失礼します」
「久しぶりねヤムちゃん♪」
「お久し振りですアイーダさん」
商談室にいたのは、やっぱりアイーダさんだった。
「じゃあ、お願いできるかしら」
「はい」
今までと変わらないいつもの対応に、今更ながらに帰ってきた実感が浮かび上がってきてしまった。
買い取ってもらうのは、全て高品質の、
ポーション50本・5万クラム。
ハイポーション20本・10万クラム。
マジックポーション20本・10万クラム。
ハイマジックポーション10本・25万クラム。
合計50万クラムのいつもの納品分だ。
「はい。たしかに。代金は直ぐにご用意いたしますね」
アイーダさんは手際よく品質チェックを済ませると、用意しておいたポーション収納用のボックスに納めていった。
「それから、これなんですけど」
次に僕が取り出したのは、せっけん・洗髪剤・調髪剤・薬用肌用軟膏のセット、10セット分だった。
それをみたアイーダさんの顔が、嬉しそうな表情に変わった。
「ありがたいわ。姉さんがそろそろ失くなりそうだって嘆いてたのよ」
「遅くなってしまってすみません」
「いいわよ。姉さんからは、代金以外からしっかり巻き上げるから♪」
アイーダさんはものすごくいい笑顔をしていた。
ちなみにそれぞれのお値段は、
洗髪剤1本・14000クラム。
調髪剤1本・14000クラム。
せっけん1個・4000クラム。
薬用肌用軟膏1個・28000クラム。
1セット合計6万クラムという、なかなかのお値段だけれど、ミルカードさんいわく、これで適正価格らしい。
むしろ効力を考えれば安いくらいだという。
「そうだ。リガルトギルド長はいますか?ちょっとご相談したいことがありまして」
「その一式を王宮に献上する話かしら?」
アイーダさんも話は聞いているらしく、特に驚くようなことはなかった。
「はい。色々と相談しておきたくて」
「いまなら執務室で書類とにらめっこしてるはずだから、代金をもってくるついでに面会の許可をもらってくるわね」
アイーダさんは、洗髪剤一式を抱えて部屋を後にし、暫くすると戻ってきて、ポーション一式とシャンプー一式の代金、110万クラムの支払いを終了し、その足で、執務室に向かうことにした。
商品の値段はわりと適当です
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