閑話 1
閑話は主人公以外の人物の視点になります
後書きに説明を追加しました
~冥府阿鼻地獄所属獄卒鬼 赤鬼11459番の視点~
俺は閻魔大王様に使える獄卒鬼、赤鬼11459番だ。
俺の仕事は地獄に落ちてきた亡者どもに責め苦を与え、罪を洗い流してやることだ。
そして今日も、新しい亡者がやって来た。
「よく来たな最低のカス野郎!最高の地獄にようこそ!」
その日から俺は、その亡者に対して様々な責め苦を与えてやった。
最初は泣き喚き、悲鳴を上げまくった。
まあこれは全ての亡者に共通することだ。
中には反抗したり脱出しようとするやからもいるが、全ては無駄。罪が増えるだけだ。
その点コイツは反抗したり脱出しようとすることもなく、黙々と?責め苦を受けるから楽だ。
それから暫くして
コイツの責め苦を、友人の青鬼41459番に任せ、ちょっと休憩をしていた時だ。
気まぐれに罪科帳を開いてみた。
この罪科帳は、亡者達の罪が記されていて、どれだけ罪を洗い流したかがわかるようになっているものだ。
「アイツの罪はどれくらい洗われたかな?」
パラパラとページをめくると、アイツの書類が出てきた。
それを見た瞬間。
俺は自分の目を疑った。
罪科帳には、罪を犯した日は勿論、死んだ日も記載してある。
死んだあとの罪は、地獄で犯すもの。
そのほとんどは脱走未遂や亡者同士の諍いだ。
だが、アイツの罪科帳には
強盗・詐欺・恐喝・強姦・快楽殺人など、現世でなければ犯せない罪が、死んだあとの日付けで記載されていたのだ。
おかしい。
そう思った俺は、上司の黒鬼5963番に報告しようと、管理棟にむかった。
するとその途中に、閻魔大王様にお会いした。
ちょうどいいと思った俺は、思いきってお声をかけた。
「閻魔大王様!」
「ん?なんだ。なにかあったのか?」
「はい。これをご覧ください」
俺は、アイツのページを開いて閻魔大王様に見せた。
「なんだ、あの虫酸の走る亡者ではないか」
「ここをご覧ください」
「ん?なっなんと!これはどういうことだ!?」
閻魔大王様は、直ぐ様閻魔帳をとりだした。
罪科帳は、亡者が責め苦を受けた苦しみを吸いとり、残り罪科を表示することと、閻魔帳に記載されていることを写しとるだけで、書き込んだりすることは絶対にできない。
つまり、罪科帳に書き入れるためには、閻魔帳に書き入れるしかない。
そして閻魔帳には、罪科帳よりも詳細に亡者の情報が書かれている。
その閻魔帳を見た閻魔大王様はふるふると震えだした。
「どうしたのじゃ?」
そこに声をかけてきたのは、なんと最高神様だった。
なんでこんなところにいるのかはしらないが、お教えしたほうがいいだろう。
「はい。実は…」
「おい!」
俺がお教えしようとすると、なぜか閻魔大王様が俺を止めた。
「かまわん。何があったか話しなさい」
だが最高神様に話せと言われたら話すしかない。
俺は罪科帳を最高神様に渡し、全てを話した。
「これは由々しき事態じゃ。のう。閻魔大王」
「はい…その通りで…」
2人とも厳しい顔をしている。
確かに大変なことだ、厳しい顔にもなるだろう。
「先ずはこの亡者を地獄から出してやらねばのう」
最高神様は閻魔大王様に視線をむける。
「この亡者を管理棟につれてこい。急げ!」
「はいっ!」
俺は閻魔大王様の命令通り、アイツを連れにいった。
ただ、針の坂から落ちてくるまでに3日ほどかかったが。
アイツが管理棟に連れていかれてから随分時間が過ぎた。
聞いた話によると、アイツの罪は全部アイツの兄のもので、アイツの罪になっていたのは、神様の1人がアイツの兄を気に入ったかららしい。
アイツは神様達に修行をしてもらい、先日輪廻転生をしたらしい。
今度こそ、いい人生が送れることを祈ってやろう。
さあ。今日も亡者達を出迎えることにしよう。
落ちてきて、車に引かれたカエルの様になっていた奴が再生したところで声をかける。
「よく来たな最低のカス野郎!最高の地獄にようこそ!」
赤鬼11459=いい地獄
青鬼41459=よい地獄
黒鬼5963 =ごくろうさん
閻魔大王様は握りつぶすつもりだったのかもしれませんね
最高神がいたのは、たまたま偶然です
本物の閻魔帳は人間が行動する度に自動的に書き込まれるものだそうですが、ここでは人間一人一人に監視員のようなものがついていて、送られた報告書が自動的に閻魔帳に記載される形にしました。