第69話 お土産と言う名の自前の品②
お待たせいたしました
翌朝から僕は、お世話になった人達にあいさつをして回るべく、荷物をもって暖炉亭を出発した。
まず最初に向かうのはイザベラさんのところだ。
さすがに八百屋さんは朝が早く、店の棚に、新鮮な野菜がところ狭しとならべられていた。
「おはようございます」
「あら、ヤムちゃんじゃないの!いつ戻ってきたの?」
イザベラさんは嬉しそうな顔で挨拶をしてくれた。
「昨日です。商業ギルドで用事を済ましていたら遅くなったので、ご挨拶が今日になってしまってすみません」
「なにいってるのよ。無事に帰ってきてくれて嬉しいわ」
イザベラさんは僕の頭にぽんと手を置いた。
小さな子供にするような行為だけれど、不思議と嫌ではなかった。
「そうだ。これ、お土産です」
ほっこりした気持ちを振り払い、神様のバックからとりだして渡したのは、王都で流行っているペンダントとイヤリングの納められた箱。
イザベラさんはすぐさま箱を開けると、取り出して眺め始めた。
この国では、プレゼント的なものはその場で開けるものらしい。
「あら。綺麗なデザインねえ。王都ではこんなのが流行ってるのね」
イザベラさんは嬉しそうに耳と首にアクセサリーをあてがったりしていた。
そして、このメセの街に定住すると告げたところ、
「なにかあったら遠慮なくたよってね!」
と言われ、しっかりと手を握られた。
次にやって来たのは教会だ。
とはいえ、先ずは神パウディル様へのお供えと思い、責任者のアンジェリカさんに許可を貰おうとしたところ、
「神パウディルにお供えねぇ…。供えてから5分もしないうちにガキ共が食っちまっていいなら供えていきなよ」
と、返された。
よく見れば、子供達が柱や窓や扉の陰から、ちらちらとこちらの様子を伺っていた。
僕は、リガルトさんに言われたとおり、チョコレートではなく、バターたっぷりのクッキーを供えることにした。
神パウディルの像の前にクッキーを供え、祈りをささげる。
その祈りが終わり、後ろを向いた瞬間に、バタバタという音が響き、
「あまーい!」
「おいしい!」
「ありがとー!」
といった黄色い声が聞こえてきた。
その様子を見て、やれやれという表情をしていたアンジェリカさんは、なんとなく嬉しそうに見えた。
しかし次の瞬間、
「で?アタシ個人への土産はないのかい?言っとくが、アタシは装飾品の類いは嫌いでね」
僕の肩に肘をのせ、悪い笑みを浮かべてきた。
「どちらかと言うと喉を潤すものが有りがたいねえ。たとえばエリプの薫りがする飲み物とかさぁ…」
そういって、眼を閉じながらグラスを傾ける仕草をする。
実はアンジェリカさんにもアクセサリーを買ってきたのだけれど、仕方がないので、本当はお菓子に使おうと買ってきたエルディク(リンゴ酒)を渡しておいた。
多分、神様のバックからクッキーを取り出すときに間違って出したのを見逃さなかったのだろう。
誰かにあげる予定があったわけではなかったので問題はなかった。
色んな作家さんの作品で、エルフバッシングが多いように感じます。
私も乗っかろうかどうか迷い中です。
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