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第8話 出立

自分が十分納得するまで訓練をして4億2615万3079年たった今日、僕は天界から下界へ転生することになった。


その日は朝から闘神様と最後の手合わせをしていた。

朝に時々していただけのものだが、仕上がり具合が見たいという闘神様の要望だ。

「はあっ!」

僕は杖の中程を持って、左肩を狙って振り下ろす。

当然、闘神様はそれをかわす。

しかも、僕の振り下ろした杖の1㎜先でかわすのだ。

僕はそれがわかって居るから、直ぐに杖を引き、鳩尾を狙って突きを放つ。

が、距離などないはずなのに、身体を捻って簡単にかわしてしまう。

このままだと反撃を食らうため、僕は直ぐに距離をとった。

「よく判断したな。遅かったら食らっていたぞ?」

闘神様はニヤリと笑いながら、杖で自分の肩を叩く。

かなり悔しいが、これが僕と闘神様との実力の差なのだからぐうの音も出ない。

僕は呼吸を整えると、一足で踏み込んで、唐竹割りを放った。が、

「遅いっ!」

「ぐはっ!」

しかしというかやはりというか、杖でがっつり止められ、腹に蹴りを食らってしまった。

「ほれ。まだこれるだろう?」

腹を押さえてうずくまっている僕に、有名なムービースターのような挑発をする闘神様。

僕はなんとか立ち上がると、杖を構え、一気に距離を詰め、ぎりぎりまで距離を詰めると、足元を狙って凪ぎ払いを仕掛ける。

「甘い!」

闘神様は当然それをかわす。

その瞬間、僕は身体を回転させながら杖をスライドさせ、喉を狙って突きを放った。

タイミング的にはバッチリだった。

たがしかし。

僕の杖は、闘神様の杖によって、しっかりと止められていたのだ。

僕は杖を力なく降ろし、

「まいりました…」

丁寧に頭を下げた。

実はいままで訓練をしてきて、闘神様に攻撃を当てれたことが、1度もないのだ。

護身術としての訓練と分かっていても、やっぱりちょっと悔しい。

「まあ、それだけの動きができるなら身を守るくらいは出来るだろう」

「一撃くらいは当てたかったです」

「はっはっはっ!お前程度に当てられるほどヤワではないわい!」

闘神様は杖を肩に担ぎ、豪快に笑う。

敵わないのは当たり前。

でも、なぜかそれが嬉しかった。



最後の朝食も終わり、僕は以前から用意していた、転生先でも違和感のない服装を身に付け、転生の間と呼ばれるところにいた。

ここから、転生をさせるのだという。

「さて、これからお前さんを転生させるわけじゃが…その前に」

最高神様が視線を向けると、智嚢神様が歩み寄ってきて、

「これは僕と闘神からだ」

真っ直ぐな木の棒を渡してくれた。

僕の身長(160㎝)より少し長く、六角形をしていて、片方に幾つかの輪っかが取り付けられていた。

これはいわゆる、日本のお坊さんが持つ錫杖というやつだ。

「君が毎日水をやっていた世界樹の苗木の枝で作った杖だよ。これを使えば魔法の威力が増幅されるし…」

「儂の加護もつけておるからドラゴンブレスでも燃えはせんし、そこいらの刃物でも傷すら出来んぞ!」

智嚢神様の説明を遮って、闘神様が顔を出してきた。

「人が説明をしているのにじゃまをしないでくれ」

「別にかまわんだろう」

正反対な感じの2人だが、あれで一番仲が良いらしい。

それにしても、あの木が世界樹で、さらにあの大きさなのに苗木だとは思わなかった…。


「私からはこれよ。一番の自信作、無限のバッグ!」

技能神様が差し出してきたのは、茶色で肩掛け式の鞄で、わかりやすくいえば茶色い革でできた肩掛け式の学生鞄だ。

「大きさ無視。重量無視。容量無限。内部は時間停止式。生物も収納可能。更には持ち主以外は出し入れ不能で、盗まれても瞬時に手元に戻ってくるわ。それと、転生先の銀貨が10枚入った財布と、フード付きの特製マント。貴方が毎日魔力を注入した魔晶石。調合用の機材一式。そしてもうひとつ『いいもの』を入れておいたわ」

技能神様は興奮ぎみになりながら、バッグの説明をする。

この方は、自分の作品の自慢をするのが好きなのだ。

「既に持ち主はムツミに設定してあるからバッチリよ♪」

笑顔でウインクをしながら、バッグを僕にかけてくれた。


「では早速といいたいが、渡しておかないといけないものがある」

そういうと、最高神様は僕の頭に手を乗せ、

「今から与えるものは、お前さんに与えた祝福とは別に、転生するもの全員に与えられるものじゃ」

にこりと笑ってから、掌から青い光のようなものを発した。

「まずは完全言語理解。は、智嚢神に習って完璧じゃな」

青い光が消え、次は赤い光に変わる。

「次は完全鑑定…も、智嚢神に習ったか」

赤い光が消え、

「そうじゃ!お前さんの場合は完全偽装もつけておかんとな。淫魔は種族として認識されてはおるが、忌避されやすいからのう」

白い光を発しながら、最高神様はちょっと嬉しそうだった。

そしてさらに黄色い光になり、

「そしてこれは儂からの餞別じゃ」

にっこりと笑い。

「時空間超越調達。転生先のルタースのもの。地球のもの。創作物に出てくるような超技術のもの。これらを金銭か品物を支払うことで手にいれる事が出来る技能じゃ」

つまりは便利な買い物が出来る技能ということだ。

が、

「だめですよ!僕はもう神様からの祝福を戴いてしまっているのに!」

それはよろしくない。

僕はもう祝福を貰っている上に、神様達から訓練を受けて十分な知識や技能、さらには餞別まで貰っている。

これ以上いただいては、兄だった男と同じになってしまう。

僕はなんとか最高神様の手を振り払おうとする。

しかし最高神様の手は離れず、

「これは餞別といったじゃろう?智嚢神たちのその杖と同じじゃよ。それとも儂からの餞別はきにいらぬか?」

最高神様はからかうような笑いを浮かべる。

「そっそんなことはありません!でも…」

「もらっておきなさい。折角最高神様から戴けるのだから、断るのも失礼よ」

技能神様にそう言われ、僕は受けとることにした。

「わかりました。ありがたくいただきます」

そうすると光は消え、最高神様は手を離した。


「それでは、これでお別れじゃ。今度の人生が良きものになるようにな」

魔法陣の真ん中に立ち、見送りに来てくれた神様達をみつめる。

生きていた時は、家族を含めた全てといってもいい人間から、最低最悪の対応と扱いしかされてこなかった。


死んでからも、やってもいない犯罪のせいで地獄におとされた。

でも、いろんな人の、いや神様達のおかげで、僕は初めて幸福を味わうことができた。


おこがましいかも知れないが、家族を感じることができた。

転生の眩しい光につつまれながら、

「ありがとうございました!いってきます!」

愛しい人達と離れる寂しさと、注いでくれた愛情に感謝し、ぼろぼろと涙を流しながら、


深々と頭をさげつつ、


新たな人生へと旅立っていった。


ようやく天界を降ります。

長いプロローグが終了な感じです。


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