第65話 最後の1日
何とか書きあがりました
男爵の手から助けられ、
国王陛下からお咎め無しをいただき、
王妃様に連れられて王女様のお悩みを解決し、
そのための品物に関係する商談をメリックさんと交わすという、
ばたばたとした様々な事柄がようやく落ち着いたとおもったら、
その翌日にはサヘラさんの要望で、1日かけて様々なお菓子や料理を制作させられた。
そしてさらにその翌朝の今日。
サヘラさんは、僕が作った朝食のフレンチトーストに、ベリスの砂糖煮・レジルスの砂糖煮・エリプの砂糖煮・フロルアピスの蜜をかけたりして口に運んでいた。
フロルアピスの蜜というのは、いわゆる蜂蜜で、ヨハンさんが購入してきたらしい。
そうしてフレンチトーストを食べながら、サヘラさんは僕の予定を聞いてきた。
「それで今日はどうするんだい?明日一番の定期便でメセに帰るんだろう?」
「はい。あんまり長居するのも良くないと思いますので」
無理矢理とはいえ宮廷薬師に推されるのだからと、自分の配下にと勧誘してくる人が、昨日1日それなりの人数が押し掛けてきたらしい。
サヘラさんはその事も考えて、僕を1日拘束したのかもしれない。
「もし予定がないのなら、追加を作ってもらっても…」
「今日はお土産を買いに行こうかと」
サヘラさんが追加を要求しようとしたので、すぐに予定を報告した。
「そうかい。ま、仕方ないね」
それを聞いたサヘラさんは、実に残念そうだった。
やっぱり自分の欲望だったのかもしれない。
お土産はもちろんだけど、僕にはもう1つ出かける理由があった。
それがこの教会だ。
あのシスターさんに会えるかはわからないが、お供えをしにいくためだ。
教会の中に入ると、あのシスターさんがいた。
「おはようございます。お久しぶりです」
「あら!貴女はこの前の。ようこそいらっしゃいました」
シスターさんは、にこやかな微笑みを浮かべて、僕を歓迎してくれた。
「お悩みは少しは解決なさいましたか?」
「まだ少しは残っていますが、決心はつきました」
「そう…よかったですね」
シスターさんは、嬉しそうに微笑んでくれた。
その笑顔は、なんとなく技能神様ににている気がした。
「そうそう!この前いただいたエリプのお菓子は美味しかったわ!私の知り合いにもお裾分けしたんだけど、甘いものが苦手な人以外はみんな気に入ってたわ♪」
「気に入っていただけて何よりです」
やっぱり、というか当たり前だが、お供えしたカスタードアップルパイは、シスターさんや神父さん達で、いただいてくれたらしい。
その表情はまるで子供のようだった。
「あの…実は今日もお供えをするつもりでもってきてまし…」
ガシッ!
「有り難くいただくわ!」
もって来ましたと言い切る前に、肩をがっしりとつかまれ、ものすごくいい笑顔を浮かべてきた。
甘いものがお好きなのはわかるけれど、迫力が怖い。
ちなみに用意したのは、バタークッキー・チョコレートラングドシャ・イチゴジャムサンドクッキーの3種類を50枚づつ、地味な色の蓋付きの陶器の器に入れてきた。
シスターさんは蓋を開けて匂いを嗅ぎ、
「ん~いい匂い!美味しそうね♪」
そうしてうやうやしく器を像の前にお供えすると、僕の前に立ち、祈りのポーズをとり、
「神パウディルは平和に生きようとする全ての者達に祝福を与えてくださいます。貴女がその事に感謝するなら、また御供物を持ってきてくれてもよいのですよ?」
しっかりとおねだりをしてきた。
しかし僕は、明日にはメセに帰ってしまう。
そして、その事を黙っているつもりはなかった。
「あの…私は明日にはメセの街に帰ることになってまして…」
その事実を聞いても、シスターさんは笑顔を変えず、
「問題ありません。そちらの教会に供えても、神パウディルはお喜びになるでしょう」
にっこりと笑いかけてくれた。
クッキーを渡し、教会を後にした僕の次の目的は、もちろんお土産の購入だ。
女の人には綺麗な生地やアクセサリー。
それ以外の人は、カッカル豆を買って帰って、チョコレートを作ろうと思っている。
ちなみにこのチョコレートだが、いつの間にか『カッカルチップ』という名前がついていた。
なんでも『ストーンダル男爵の美食探訪』に紹介され、最初は『カッカル豆の甘い板』と呼ばれていたが、後に『カッカルチップ』と改名されたらしい。
それにしても、ストーンダル男爵はいつチョコレートを食べたんだろう。
まあ、想像はつくけれど…
もちろん買い物が終わった後は、図書館にいって心行くまで読書をしたのは間違いありませんでした。
アイデアを練るのに、近くの公園に行っていたのですが、行きづらくなったため、なかなか練れないでいます
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