第7話 長い長い訓練の日々
僕の訓練の指導をしてくれる神様に引き合わされた次の日から、僕の訓練の日々は始まった。
朝起きると、軽い体操をこなしてから、合宿所の近くにある巨大な木に水をあげる。
始めは水道の水をあげていたが、智嚢神様に水を生み出す魔法を習ってからは、魔力の訓練も兼ねて、魔力で産み出した水をあげる様にした。
時々、智嚢神様の友人である闘神様がやってきて、杖術を教えてくれることがある。
転生先は、命が簡単に奪われる厳しい世界であるため、護身の一つくらいは身に付けておいた方がいいという、智嚢神様、技能神様の進言もあって、ならうことにしたのだ。
始めは剣術をと思っていたらしいが、僕自身が刃物を嫌がったのと、適性が杖術に向いているのがわかったため、杖術になったのだ。
勿論杖だって撲殺することができるが、棍棒なんかと違って、手加減が容易なのがチョイスの理由であるらしい。
因みに、訓練の最中は、
「気合いをいれろ!」
「お前なら出来る!」
「へこたれるな!儂がついておる!」
など、励ましてくれる。
それ以外にも、敵を相手にする時の心構えや、状況による対処法など、戦闘と言うものについて詳しく教えてくれる。
まさに熱血教官といったところだ。
その後は朝食。
神様達の分もきちんとつくる。
生前はどれだけ手間暇かけて作っても、不味いとしか言われなかったが、女神の細工=呪い。を解除してもらってからは、ちゃんと美味しいものに感じてもらえるようになった。
朝食のあとは、智嚢神様の授業である。
治癒魔法・医学・栄養学・無属性と言われる精神魔法・サキュバスの能力の理解・転生先の基礎知識・様々な雑学など、時に解りやすく、時に難解だが、非常に楽しいものだ。
時折する骨董品の脱線話は御愛嬌だ。
ただし、魔法の実践の際は、非常に厳しい表情になる。
「魔力の制御を疎かにしない!」
「魔力弾のような低コストな魔法なら、複数発同時は基本です!」
「生物の身体の構造を理解した上で、治癒する箇所に魔力を注ぎなさい!」
と、座学の時とは別人のようになってしまうのだ。
昼食をたべてからは、技能神様の製薬のお手伝いがメインだ。
薬草の採取に、薬草の擂り潰し。
製薬器具の準備に洗浄に後片付け。
鍋の掻き回しに、火加減の調整。
その隙間を縫っての薬学知識の講義と、物凄く目まぐるしい。
そしてもうひとつ。
女性としての様々な知識と技術を身につけるという指導を受けている
なにしろ僕は転生先で(今もすでに)夢魔として生活するのだから、女性として最低限の事は覚えて身に付けておきなさいと言うのが、技能神様のお考えだ。
下着の付け方から、メイク・ヘアケア・スキンケア。おまけに服装のセンスまでと色々教えられている。
この2柱、時に3柱の訓練が終わると、ようやく夕食。
その後は入浴の後の自由時間。
本を読んだり、昼間の復習をしたりしている。
そして寝る直前、魔力の訓練のために、魔昌石に魔力を充填して、自分の魔力を空にしてから眠りにつく。
これが1日のスケジュールだ。
転生先にあわせた10日に一度の休日には、訓練の時間が自由時間になるだけ。
大抵は掃除・洗濯をしてから料理や読書。もしくは自習が殆どだ。
たまに、闘神様も含めて他の神様達が遊びに来たりもする。
最高神様や他の神様の愚痴。取り留めの無い笑い話。下界の話などを話ながら、僕の作った料理を、お酒と共に食べまくったり。
女神様達には、着せ替え人形の如く、もてあそばれてしまったり。
僕が作ったお菓子を際限なく食べたり。
神の衣装を作るための裁縫の手伝いをしたり。
一部の女神様には、なぜか荒い呼吸をしながら、サキュバスになった感想を聞かれることなどもあった。
違和感を抱かないように洗脳されていたとはいえ、苦しくない。辛くないなどと言うことはなかった生前にくらべ、
実に充実し、実に楽しいこの生活を。
自分の納得いくまでしてよいという最高神様の言葉に甘え、
実に4億2615万3079年という時間をすごしていたのだった。
時間経過へのつっこみは御勘弁ください。
なお、天界にも腐界に首までどっぷりな女神は多数生息しています