第54話 意外な誘拐犯
おまたせいたしました
ちょっと短めです
おもてなしの翌日。
僕は王都の図書館に向かった。
明日には、年内最後のメセへの定期便がでるので、それに乗って帰る前のお楽しみだ。
でもその前に、あの教会に、朝方に新しく作ったカスタードアップルパイを、たぶん教会の人達で食べるだろうから、3ホールほどお供えに持っていく事にした。
残念ながらこの前いた修道女さんはおらず、おじさんの司祭様に許可をもらって、パウディル様にお供えしておいた。
王都の図書館は、メセの街とは比較出来ないほど巨大で、前世の日本ほどの出版量はないはずなのに、いったいどれだけの本があるのか、想像すら出来なかった。
正直、この図書館のためだけに、王都に定住してしまおうかと一瞬考えたくらいだ。
一般の人が利用できるのは6階まである建物の2階までで、その上は研究室や書庫になっているらしい。
入館料はメセと変わらず、開館から閉館まで1000クラム。
1日たっぷりと本を読みまくっていたため、いつの間にか閉館時間になり、久しぶりに司書さんにつまみ出されてしまった。
「あ、お姉ちゃん!」
その図書館の帰り道、僕に声をかけてくる人がいた。
王都での知り合いは、サヘラさんの屋敷の人達と、王都にお店があるメリックさん。そして昨日の御客様くらいのはずだ。
しかも、殆どが僕より歳上か、お姉ちゃんと呼ぶ人は
いない。
いるとすれば、メセの街で知り合い、一緒に王都まで来た女の子、
「お姉ちゃん!」
リノちゃんしか居なかった。
「リノちゃん。お父さんには会えたの?」
「うん!」
リノちゃんは嬉しそうに僕に抱きついてくる。
そして向こうからは、お母さんのリオさんが慌てた様子で近寄ってくる。
「あのねお姉ちゃん。ずっと前に悪いおばさんに捕まった時に助けてくれたでしょ?だからお礼がしたいの!」
悪いおばさんと言うのは、フォルミナのことだろう。
フォルミナはおばさんという年齢でもなかったのだけれど、リノちゃんからみればおばさんになってしまうのだろう。
「そんなの気にしなくていいんだよ」
「私がしたいの!お姉ちゃんしゃがんで眼をつむって?」
ほっぺたをぷくっと膨らませながら、僕の手を引っ張る。
「こう?」
僕は、いわれた通りにしゃがみこんで眼を閉じた。
「ごめんね」
「え?」
僕が眼を閉じた瞬間、リノちゃんが大人びた喋り方をし、ガチャッと言う音と共に、首に何かがつけられた。
そしてその瞬間、
「『魔法を使うな』『声を出すな』『眼を開けるな』『微動だにするな』!」
と、男性の声がした。
すると次の瞬間、僕の身体が動かなくなった。
そして、袋のようなものに全身を包み込まれた。
「この女で間違いないな?」
「はい。現場で遭遇、確認しておりますので…」
「ふふふ…これで儂は昇爵間違いなしだ!」
男性とリノちゃんの会話が聞こえ、
「乗せろ」
馬車に積み込まれ、その場から足早に離れていく音が響いてきた。
ついに拐われました!
誘拐犯はようじょ!
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