第6話 先生達との出逢い
6/14 欠損部分を書き足しました
「それで。お前さんは何を訓練したいのじゃな?」
「はい。怪我や病気を治せる魔法や、そういう薬なんかを作れるようになりたいです」
生きている時は、風邪を引こうが怪我をしようが、医者は勿論、手当てすらしてもらったことはない。
なので、自分で治すことができたら有難い。
「では、講師を決めねばな」
神様はこめかみに指を当てると、眼を閉じてしまった。
おそらく通信か何かをしているのだろう。
そこに、閻魔大王様が話しかけてきた。
「矢嶌六三よ。すまなかった。私の怠慢のためにお前を阿鼻地獄に落としてしまった。本当にすまない」
閻魔大王様はまた頭をさげる。
確かにそのとおり。阿鼻地獄に落ちてあれだけ酷い責め苦を受けた原因は、閻魔大王様にも原因はある。
だが不思議と腹は立たない。
自分の非を認め、迷惑をかけた相手に謝罪する。それが出来るだけでもいい。
それに、閻魔大王様の立場なら、握りつぶして知らん顔をしておけばよいのに、わざわざ公にして、僕に謝罪し、頭まで下げてくれたのだ。
自分が原因であっても、僕の責任にしていた生前の家族(とは呼びたくないが)に比べれば天地の差だ。
「そういっていただけるだけでも有り難いです。それに、悪いのは細工をした神様です。どうか、頭を上げてください」
「ありがたい…。それだけに悔やまれるな。自分が情けない」
閻魔大王様は頭を上げ、大きく息を吐いた。
だが、直ぐ様拳を握り締め、決意を述べた。
「だが汚名は返上してみせる!今後はお前のような者は絶対に出さぬし、お前の兄が来た時には、必ずや阿鼻地獄に落としてくれる!」
そのときの閻魔大王様の背中には、決意の炎が燃え上がっているように見えた。
「よし。お前さんの講師が決まったぞ。お前さんが訓練する場所も含めて、紹介しよう。付いてくるがよい」
通信を終えるやいなや、立ち上がって部屋から出ようとする神様から声がかかった。
随分せっかちだなと思ったのは内緒だ。
神様に着いていくと、豪奢な屋敷のようなところから中庭の様な所にでて、そこから更に進むと、合宿所の様な建物にたどり着いた。
鉄筋コンクリート製の3階建て、その近くには、その建物を越える大きな木がそびえたっていた。
「ここが訓練する場所であり、宿泊するところでもある」
神様はガラスの扉を開けて中に入っていく。
僕も慌ててその後を追った。
神様が向かったのは、合宿所の談話室のような所で、そこには2人の人影があった。
「紹介しよう。智嚢神に技能神じゃ」
神様に紹介された2柱は、ゆっくりと近づいてきた。
「僕が智嚢神だよ。治癒魔法だけじゃなく、色々な授業をしてあげるから期待してほしいね」
智嚢神様は、若い文学青年といった感じて、なんと言うか、先生というよりは研究者といった雰囲気だった。
にっこりと笑い、手を差し出してきたので握手をと思ったが、不敬になるのではないかと思って躊躇したが、向こうからにぎってくれた。
「初めまして。矢嶌六三と申します。今日からよろしくお願いいたします」
そしてなんとか緊張しながらも、挨拶が出来たと思った。
技能神様は、年齢不詳の美人の女神様なのだが、なにも言わずに僕を見つめ、 いきなり抱き締めてきた。
「うわっ!」
失礼ではあるが、僕は声を上げてしまった。
「御免なさいね。私達の配下がとんでもない事をしでかしてしまって。おまけに阿鼻地獄にまで…」
技能神様は僕に謝罪しながら、ずっと抱き締めてきた。
母親に愛されたことがない。ゆえに、僕としては混乱しかできないでいた。
そして次第に、意識が薄れてきた。
既に死んでいるから死ぬことはないのかもしれないが、死んでから窒息するとどうなるかは未知の領域だ。
「これこれ!それでは呼吸ができぬぞ!」
「あら!私としたことが…大丈夫?」
神様=最高神様の一言で救われた僕は、なんとか窒息からまぬがれた。
大きなおっぱいってすごい…。
技能神様からのハグからのがれると、なんとか体勢を整え、きちんと姿勢を正し、
「矢嶌六三と申します。よろしくお願いいたします」
きちんと頭を下げて挨拶をした。
いままで努力しても一切の結果を出すことが出来なかった生前。
思い出しても、浮かんでくるのは、侮蔑と罵声だけ。
でもこれでようやく、まともな人生が始まる。
そんな予感がしていた。
これでストックがでつくしたので、次回からは不定期になってしまいます。
出来るだけ早めに更新いたしますのでよろしくお願いいたします。
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