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第49話 商業ギルドのマスター

メリークリスマス!

作品内の時期も同じくらいです


前回も書きましたが、クリスマスマーケットを想像していただけると分かりやすいです


薬の製作工程がおかしいことになっていたのをご指摘いただいたので修正しました。

僕が通されたのは、中央棟の最上階の4階にある執務室だった。

受付嬢さんがノックをすると、

「お入り」

おばあさんの声がした。

「どうぞ」

開けられた扉を中に進むと、しっかりとした作りのデスクに、絵本に出てくる魔法使いのようなおばあさんが座っていた。

「儂がこの商業ギルドの総統(マスター)をやっとるサヘラ・フェテセイロ・アルセルフじゃ」

深い皺のある顔から覗く眼は、魔眼のように此方を見透かしてくるかのような鋭さがあった。

「ヤムと申します。メセの商業ギルド長のリガルトさんから、お手紙を預かってまいりました」

僕は慌て挨拶をし、リガルトさんから預かった手紙を取り出した。

そしてそれを、ギルドマスターのテーブルに持って行こうとした時、

「そいつは御苦労だったね」

手紙が僕の手を離れ、ギルドマスターの手元まで飛んでいった。

どうやら『念動』の魔法を使ったようだ。

「歳をとるとこういう魔法が便利でね」

引き出しからペーパーナイフを取り出し、封を開けて中身を読み始めた。

「…ふむ」

そうして内容を確認すると、脇で待機していた受付嬢を呼び、なにやら指示をしてから僕に向き直った。

「この手紙によると、お前さん薬師だそうだね」

「はい」

「じゃあ1つポーションを作ってもらおうじゃないか。出来ればあんたが作れる最高のポーションをね」

その時ニヤリと笑ったギルドマスターの顔は、悪巧みをしている魔女そのものだった。


そして会議室の様な部屋に案内されると、そこには製薬道具と様々な材料が揃えてあった。

「さ、やってもらおうかね。言っておくが、手抜きは無しだよ」

僕は言われるがままに、ポーション製作に取り掛かった。


後ろから刺すような視線を浴び、緊張しながらポーション製作を開始する。

①ローア草とゼーア草をしっかりと乾燥させる

②きちんと粉状になるまですり潰して粉砕する

③沸騰させたお湯に、乾燥粉砕させたローア草・ゼーア草・生のままのビッキの実を投入

④再沸騰したり焦げ付いたりしないように注意しながら、弱火で15分ほどゆっくりかき混ぜる

⑤④を布で()したものに、魔力を注入した生のルケン草を投入

⑥⑤に蒸留器を被せ、強火で30分ほど抽出する

⑦抽出された物のあら熱をとり、色がクリアになったら完成

⑧100㏄ほどの瓶に小分けする


緊張しながらにしては丁寧にできた方だと思うけれど、勢い余ってエクストラポーションを制作してしまった。

蒸留器はなかったので、かなり大きな鍋を『念動』で煮ている鍋の上に、蒸気を逃がさないようにしながら斜めに固定し、同時に『気流操作(エアーコントロール)』を使って蒸気のもれが出ないように細心の注意をはらった。

この蒸留のやり方は、道具がない時の蒸留の手段として、技能神様に徹底的に叩き込まれたやり方だ。


ギルドマスターは、片眼鏡(モノクル)を目に当てながら、僕の作ったポーションを鑑定しはじめた。

「驚いたね…。

薬学先進国のロイコア王国の腕利きが総出でも、普通の品質がやっとのエクストラポーションの極上品、別名フルポーションなんて呼ばれる、最難関ダンジョンの奥底で100年に1つ見つかるか見つからないかの代物じゃないか。それが2つも…。

なるほど。リガルト坊やの手紙は嘘ではなかったということじゃな」

ギルドマスターは片眼鏡(モノクル)を外しながら、ポーションをテーブルにもどすと、大きくため息をついた。

「おまけに別の魔法を同時使用なんて、王宮魔道師でも一握りの者にしか出来んことまでできるとはね…。

どうやらお前さんが、メセの街で極上品のハイポーションとハイマジックポーションを制作し、救護所で怪我人の手当てをしていた薬師ってのはまちがいないようだね」

リガルトさんの手紙には、モンスタースタンピードの事が書かれていたらしい。

しかし、僕自身に対して試すような事をしてきた事には疑問を感じてしまった。

「あの…私はなにか疑われていたんでしょうか?」

すると、ギルドマスターは片眼鏡(モノクル)をしまいながら話し始めた。

「実はな、数日前にその功績を成し遂げたという娘が、メセの薬師ギルド長の紹介で王の御前に現れた。

儂はてっきり、リガルト坊やが嘘をついたか、その娘が商業ギルドから乗り換えたかと考えておった。

が、今回の手紙と、お前さんの実力をみて、お前さんの方が本物だと確信したのさ」

どうやら知らないうちにややこしい事態が進行していたらしい。


「それで、どうするね?」

「どうするというのは?」

不意の質問に、僕は首を傾げてしまった。

「乗り込んで偽物をとっちめるかい?ってことさね」

それはつまり、王様や貴族にかかわり合いを持つことになる。

王様が悪い人ではないのかも知れないが、良い人じゃないかも知れない。

もしかすると貴族のパーティー的なものにもでないといけないかもしれない。

それを考えると、その人がやってくれるならこんなに嬉しいことはない。なので、

「別にいいです」

しっかりとお断りした。


僕の返事を聞くと、ギルドマスターはにっこりと笑った。

「そうかい。じゃあせっかくだから祭りと王都の見物でもしていくんだね。宿は決まってるのかい?」

「いえ、まだです」

「じゃあ儂の屋敷に来な。部屋はあまっているからね。ああ、明日は儂は建国記念の宴にでなきゃならんし、ギルドは祭り関係で色々いそがしいからね、見物は1人でいっといで。それから、屋敷では儂のことはサヘラさんと呼びな」

ギルドマスター=サヘラさんはそういうと、

「そうそう。こいつは宿賃にもらっておくよ♪」

エクストラポーション2本を懐にしまいこんだ。


あまりにもさらっとした行動にあっけにとられていたが、ちゃっかりとエクストラポーションを持っていかれてしまった。


案内されたサヘラさんの屋敷はギルドのすぐ側にあり、

「もどったよ」

「お帰りなさいませ奥様」

使用人の人達が綺麗に並んでお出迎えをしてくれた。

僕がその様子に圧倒されていると、サヘラさんに声をかけられた。

「驚いたかい。ここは身分の高い客のための迎賓館も兼ねてるから、普段からこうなのさ。もちろん仕事をしている奴は並んでないよ」

そういってサヘラさんは執事らしき初老の男性に向き直ると、

「ヨハン。この子はヤム。漸くここに滞在するからね。大事な客人だ。粗相(そそう)がないようにたのむよ」

「かしこまりました奥様」

僕の事をそう説明したので、僕は慌て頭を下げて挨拶をする。

「ヤムと申します。よろしくお願いします」

「はじめましてヤム様。執事のヨハンと申します。お見知りおきを。さっそくお部屋にご案内を」

執事のヨハンさんの指示で、メイドさんの1人が僕を部屋まで案内してくれた。

今回は品物の品質と、ポーションのお値段を説明します


この世界の品物の品質のランキングは低い方から、

無価値

粗悪品

低品質

普通

高品質

優良品

極上品

と、なっている。

品質が上がるにつれて価格があがっていく。


価格の推移

無価値=9割引

粗悪品=7割引

低品質=3割引

普通 =通常の基準価格

高品質=2倍

優良品=5倍

極上品=10倍


品質普通のポーション1本の基本価格

ポーション=500クラム

ハイポーション=2500クラム

エクストラポーション=10万クラム


品質普通のマジックポーション1本の基本価格

マジックポーション=2500クラム

ハイマジックポーション=12500クラム

エクストラマジックポーション=50万クラム


エクストラの両ポーションは取引自体が皆無なため、オークション開始価格


マジックポーションの価格はポーションの5倍が基本


実際には、流通量や輸送コストなども反映されるでしょうから、上記の価格はあくまでも平均のものです。


私の好きなキャラクターである、『計算高く抜け目がないが頼りになるばあちゃん』を登場させることができました!

以前に出せた『面倒見のいいマッチョオネエ』グリオル以来です。


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


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[一言] 『面倒見のいいマッチョオネエ』 僕も好き。オネエなのに侠気はたっぷりあったりね。ニンスレのザクロ=サンとか。 ただ最近はLGBT的にどうなのかなーとか思わないでもない。どうしてもコミックリリ…
[一言] 偽者薬師をヤムの影武者にするんだな。 王家預りの薬師は他国からの暗殺者から命を狙われやすいからね。腕の良い薬師がいるせいで王家の人間を暗殺しようとしてもすぐに治されるから、王族の次に命を狙わ…
[一言] おいおいサヘラさん、高い宿賃だな。悪い人ではなさそうだからいいけど、それに国のお偉いさんと繋がりがあるぽいな、ヤムさんまた色々と巻き込まれそう。
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