第47話 初めての旅行⑧ 勧誘のち到着
今回は短めです
取り押さえられていた迷惑親子と、盗賊と行商人のおじさんは、縛られた後に冒険者の魔術師に魔法で眠らされて袋に入れられ、冒険者達の馬車に押し込まれたり屋根にくくりつけられたりしていた。
なお、僕と若旦那さんの護衛の狼獣人の女性にも、盗賊の賞金を分配してくれるそうだ。
通常はそのような分配はしないのが普通らしいので、この冒険者達は親切な人達なのだろう。
そしてやはり、なにをやったのかと尋ねられることになった。
この世界に来たばかりの頃なら、魔法だと誤魔化したと思う。
でも今は誤魔化すつもりはない。
「私は淫魔です。この人の精気を掌から吸い取りました」
1人くらいは顔をしかめる人が居るかもと思っていたが、幸いにも居なかった。
その後、あの親子の乗っていた馬車と、僕の乗っている馬車に、冒険者が乗り込むことになった。
こうしないと、捕縛者達を乗せておく場所が確保出来ないらしい。
そして、僕の乗っている馬車に乗り込んできたのは、冒険者リーダーの女性だった。
「リファーナと申します」
冒険者達のリーダー・リファーナさんは、金級冒険者であり、冒険者クラン『蒼珠の剣』のリーダーでもあるらしい。
さらには、今回この定期便の護衛をしている冒険者は、全員が彼女のクランメンバーだという。
道理で連携が取れていたわけだと納得できた。
馬車の中で、リファーナさんは老夫婦や若旦那さんと談笑した後、僕にも話しかけてきた。
「モンスタースタンピードの時に救護所にいた方ですよね?」
どうやら彼女のクランは、あの防衛戦に参加していたらしい。
「素晴らしい治癒魔法でした。しかも前線に提供されたハイポーションの制作もなさっていたとか」
僕は彼女を覚えていないから、別の人が治療をしていたか、仲間を連れてきていたか、なのだろう。
「おまけに魔法弾のあの威力に弾数!貴女はかなりの魔法の使い手のようですね」
それにしても随分と押しが強い上に、いやに褒め称えてくる。
僕はその圧力に押され、「はい」とか「ええ」としか返せないでいた。
これはつまり、
「どうだろう?うちのクランに所属してはもらえないだろうか?」
勧誘だったということだ。
このあと彼女は、自分のクランの利点や特典をあげるが、僕はクランに興味はないので、
「ごめんなさい」
と、丁寧にお断りした。
リファーナさんは、断られた事には残念そうだったが、『なにか依頼があるときにはぜひ』と言い、それ以降は勧誘してくる事はなかった。
そしてその日の夜営から翌朝にかけて、流石にもうトラブルが起こることはなく、平穏なままに王都クルストンにたどり着いた。
到着してすぐに、御者さんの1人が警備兵に事情を話しにいった。
するとすぐに、迷惑親子と行商人のおじさん。そして盗賊達は、現れた警備兵に連行されていった。
そのあとに、入都審査と手続きをおえ、盗賊の賞金の分配をうけとると、定期便の乗車は終了となる。
これでようやく、生まれて初めての旅行の一番の目的が達成出来る場所に到着したのである。
次からは王都での行動になります。
どんなやっかいを起こそうかなやんでいる最中です…
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