第40話 初めての旅行① 出発報告
ちょっと遅くなりました。
今回から新しい展開です
モンスタースタンピードの事件があってから7日後。
僕はある決断を秘めて、メセの街にやってきた。
決断といっても深刻な話ではない。
王都に観光にいってみようと思ったのだ。
よく考えれば、この異世界ルタースに来てから、死滅の森とメセの街しかみていなかった。
前世では、修学旅行すらしたことがないので、旅行をしてみたくなったのだ。
商業ギルドに納品したらそのまま出発するつもりだ。
実は神様のテントは毎回もってきているので、道中の宿も問題はない。
城壁はまだ修理が続いているが、城門は普段通りの仕事をしていた。
いつもの隊長さんに、挨拶とチェックを受けてから街に入る。
「こんにちは。お疲れ様です」
「やあ、お嬢さん。この前は世話になったねえ」
隊長さん達の所は、幸いに犠牲者はいなかったらしい。
実は隊長さんは、僕の所に運ばれて来ていた。
部下の人をかばって、グレートボアに突進されたらしい。
「後遺症とかはありませんでしたか?」
「ああ、お陰でバッチリだ」
ちなみに、救護所には奥さんがお手伝いに来ていて、治療したらものすごく感謝されたのは記憶に新しい。
そして今日はそのまま、商業ギルドに向かった。
商業ギルドは相変わらずの盛況ぶりだった。
「こんにちはミルカードさん。買い取りをお願いします」
「いらっしゃいヤムちゃん。はい。番号札ね♪」
ミルカードさんはなぜかご機嫌だった。
理由は多分、つやつやの髪とつるつるの肌のせいだろう。
先だってのモンスタースタンピードの事件がおわったあと、僕から買い上げた、石鹸・シャンプー・トリートメント・薬用オールインワンクリームの効果だ。
そして僕が待合の長椅子にすわると、商人の人達が、ちらちらと視線を向けて来るのが分かった。
先だっての事で名前が知れ渡ったのかもしれない。
話しかけられると面倒だと思ったので、掲示板をみることにした。
掲示板には先だってのモンスタースタンピード事件の顛末が張り出してあった。
あのスタンピードは、フレーメル王国の工作員が引き起こした人為的なもので、元受付嬢のフォルミナが手引きをした。ということらしい。
フォルミナに雇われていただけの連中は、取り調べの後、個々の罪状によって刑罰が課されたらしい。
工作員らしいあの魔道士の男は、取り調べの後、工作活動の証拠として監禁。
フォルミナは、元々の違法奴隷売買の上に、他国の工作員に協力し、メセの街を壊滅させようとした国家反逆罪で、死刑が決定されたらしい。
僕がサキュバスだったことには全く触れておらず、危うく奴隷にされかけた事と、犯人達を街の人達と一緒に取り押さえた事だけ書いてあった。
他にも色んな記事をよんでいる内に、番号を呼ばれた。
商談室にはいると、リガルトさんが出迎えてくれた。
「こんにちは。今回もお願いします」
「ああ、此方こそ、先だってのモンスタースタンピードの時に制作の依頼を受けてもらって、心から感謝をしたい」
「いえいえ。その後に私事で御迷惑をかけてしまいました」
「あれは君の責任ではないし、被害がなかったのだから問題はないだろう」
申し訳ない思いをしながらも、いつもの倍の量の、買い取り用の高品質ポーション一式を取り出した。
リガルトさんは、僕がいつもの倍の数のポーションを取り出したことを疑問に思い、ゆっくりと訪ねてきた。
「普段の数より多いようだが?」
「実は、王都に行って見ようと思いまして」
「王都に?!」
僕の返答に、リガルトさんは声をあげた。
「王都には観光にでもいくのかね?」
リガルトさんはやけに真剣な表情だった。
やっぱり道のりや身分証明などが難しいのだろうか?
そう思いながらも、王都に向かう理由を話す。
「はい。私はこの国に来てまだこのメセの街しか知りません。なので、少しは他の街を見てみたいとおもいまして。王都ならメリックさんのお店もありますから、ご挨拶にも行きたいですし」
実際、メリックさんのお店には一度いってみたいと思っていた。
僕が話し終わると、リガルトさんは軽く息を吐き出し、表情を和らげた。
「出発はいつかね?」
「たしか明日、王都への定期便がでますよね。今からそのチケットを取りに行くんです」
「なるほど、王都クルストンはちょうど建国記念祭が開かれる時期だから街も華やかなはずだ。道のりはかなり寒くなるだろうがね」
実はそれも目当てのひとつだ。
地域のお祭りは、登下校の最中に準備や撤収をしているのをみることはできたが、参加することはできなかった。
このリーフェン王国建国記念祭が、初めて参加するお祭りになる。
商業ギルドを出てからは、定期便のチケットをとるために、定期便を運営している商会へとむかい、無事にチケットを手にいれる事ができた。
その日は、イサベラさんをはじめとした知り合いの所に挨拶に行き、暖炉亭に泊まることにした。
その日の夜は、楽しみでなかなか眠れなかった。
色々調べたところ、馬車の平均的な速度は、時速12㎞程だそうです。
もちろん馬車の大きさや積載量にもよるとはおもいますが。
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