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第36話 正体の露見と意外な反応

お待たせいたしました。

よく考えれば、魔眼を使ってフォルミナ達全員を魅了すればよかった。


魔法弾(マジックブリット)を使って奇襲し、女の子を救出してもよかった。


だが、僕がとったのは、一番短絡的な行動だった。


連中が、僕は自分達に攻撃はして来ないだろうという隙があったのも幸いし、近寄って自分の右腕でナイフを止め、男の手から女の子を奪還し、ついでにランドドラゴンの召喚アイテムを奪った。

「なんで?『隷属の首輪』をしているのになんで勝手にうごけるのよ?!」

フォルミナは、僕が勝手に行動したのが信じられなかったらしい。

だが、僕の行動に反応した男の1人が、女の子を確保した左腕を狙ってきた。

僕はともかく、女の子が傷つくのは許されない。

しかも、ランドドラゴンの召喚アイテムを奪ったせいで、素早く動けない体勢だった。


二本の足での移動では。


僕は、皮膜の翼を生やすと、斜め上に全力で飛び上がった。

そしてもちろんその姿は、その場にいた全員に見られる事になる。


フォルミナはしばらく呆然としていたが、僕がサキュバスだと認識すると、突然大声を出し始めた。

「魔族よ!魔族がいたわ!しかもサキュバス!淫魔っていうのよね?道理で下品な見た目だったわけよね!」

僕はその罵声を無視して、女の子を母親に返し、自分の右腕に治癒魔法をかける。

当然だが、街の人達は僕を遠巻きにしていた。

「サキュバスが街に潜入していたなんて大問題よ!ほら、あなた達を騙して街に入り込んでいた魔族よ!今すぐ捉えて、奴隷にするのよ!」

フォルミナは喜色満面で街の人達を煽りたてる。


僕は、フォルミナの言葉をおとなしく聞いていた。

これで多分、街にはいられなくなるだろう。

街の人達が出ていけというなら、大人しく出ていく覚悟はあった。


しかし、

「彼女がサキュバスなのがどうかしたのかね?」

リガルトさんは、逆に不思議そうにフォルミナに訪ねていた。

「だって魔族よ?私達人間の精気を吸う悪魔の一族なのよ?」

すると、そのフォルミナの返答に、その場にいた街の人達が一斉に大笑いをはじめた。

さらには、フォルミナの連れていた連中の一部も、くすくすと笑っていた。


その光景に、僕もフォルミナも呆然としてしまった。


ひとしきり笑い声が響き渡り、それが収まると、リガルトさんが前にでて、フォルミナに対峙した。

「貴女はひょっとして、このリーフェン王国ではない国。しかも、リーフェン王国に対して中立をたもっている国で育ったのではないかな?」

「だったらなによ?私の母はガルキスラント王国出身で、12歳までは母といっしょにガルキスラント王国で暮らしてたわ。父が冒険者ギルドで職員を始めてから、私たちを呼び寄せたのよ」

フォルミナの話を聞くと、リガルトさんはなるほどと納得した様子だった。

「我がリーフェン王国は、貴女の言う魔族が建国した国家であり、40年前に貴女の出身国・ガルキスラント王国と戦争をしたルシフェンド魔王国とは、30年ほど前から友好的な国交を結んでいる。そのため交易も盛んで、互いの人の行き来もある。こちらに移住。もしくはあちらに移住というのも普通に行われている」

「嘘よ!エルフやドワーフや獣人はともかく、サキュバスやバンパイアなんか見たこともないわ!何より、魔族と友好関係結んでただなんて公表されていないじゃないの!」

リガルトさんの説明に、フォルミナはもの凄く驚き、声を張り上げていた。


フォルミナと同様に、僕も驚いていた。

エルフやドワーフや獣人の人は見たことがあったが、僕と同じサキュバスを始めとした魔族など見たことがなかったのだ。

何より図書館にあった歴史書や年表には、ルシフェンド魔王国と国交を結んでいるとは、何処にも書いていなかったからだ。


その疑問の答えは、リガルトさんが話してくれた。

「魔族で羽根や尻尾のある人々は、人混みで歩くとき邪魔になるため、普段は隠しているのだよ。バンパイアの方々は、夜に出歩いている。あなたが知らないだけで、様々な魔族の方々が出入りし、この街で生活をしている。そして、年表にその事が乗っていないのは、国交を結んだ当時は、ルシフェンド魔王国以外の魔族の国が人間の国と戦争をしていたため、『公表も年表に載せるのも止めた方がいい』という当時のルシフェンド魔王国国王陛下からの助言を受け入れたため。この国の子供は、その事を親や大人、貴族なら家庭教師から学ぶのが常識だ。それを知らないということは、貴女はこの国の出身ではない。ということだ。まあ、国や各ギルドの上層部は知っているだろうがね」


つまりこの国の人達にとって、魔王国との関係については、親から子。教師から生徒へ口伝されるもので、ある程度の年齢のものは知っていて当たり前なのだろう。

どうりで、フォルミナの後ろにいた連中は、騒ぎ立てる様子がないどころか、笑っているやつがいたわけだ。



その時、

「フフフフフフ…ハハハハハハ…アーッハッハッハッハッハッハッハッ!」

と、男達の中で唯一、フォルミナの失態(?)を笑っていなかった魔道士然とした格好の男が、いきなり高笑いを始めた。

最後の魔道士の笑いについてはだんまりを決め込みます(゜゜;)


智嚢神様に習っただけではわからない、世界情勢の諸々。


ご意見ご感想よろしくお願いいたします



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