第4話 転生への不安要素
「あの…幾つか質問してもよろしいでしょうか?
あ、その前に閻魔大王様を許してあげてください。閻魔大王様も騙されていたわけですし…」
「甘いとは思うが、それが君の良さでもあるか…」
神様は、閻魔大王様にソファーに座るよう促す。
地獄での生活?の間、獄卒達から閻魔大王様がどれだけ偉大な人物かを刷り込まされた身としては、閻魔大王様が床に正座しているのはいたたまれない。
「それで、質問はなんじゃな?」
「その、僕におかしな細工をした神様はどうなったんですか?」
それが一番の不安要素だ。
もし、逃げ仰せていると言うなら、冗談ではない。
転生してもなお、同じことをしてくるかも知れない。
しかも今度は神様からの祝福まで奪われかねない。
そんな僕の不安を悟ったのか、
「安心せい。その愚神はきっちりと滅神の刑に処しておいたわい」
にっこりと笑いながら答えてくれた。
「滅神というのはまあ、死刑のことじゃ。元々素行も悪く、下界での2500年ほど前にも同じようなことを、しかもそれを皮切りに更に2回もやらかしおったからな。最早慈悲はかけれん。質問はそれだけかな?」
神様は渋い顔で髭を撫でながら答えてくれる。
地球での2500年ほど前のことも気になるが、それ以上に僕にとって大事なことをたずねることにした。
「じゃあもう一つ。転生って赤ん坊からやり直すってことですよね?」
「そうじゃな。まあ、お前さんへの謝罪でもあるわけじゃから、記憶はそのままに転生することになるがな」
「赤ん坊からは!嫌です…」
それを聞き、僕は間髪いれず大声を出してしまい、慌てて声を絞った。
「なぜじゃな?」
神様は驚いた表情を浮かべながら訪ねてきた。
「その…また赤ん坊から始めるとなると、同じような事をする神様が居ないとも限らないじゃないですか」
この時の僕の表情は恐怖と怒りが混じったものなのだろうと自分でも自覚した。
だがよく考えれば、きちんと神様が見張ってくれている状態で転生するなら、絶対安全なはずであり、かなり失礼である事に、言い終わってから気づいてしまった。
だが、毒を喰らわば皿まで。
自分がどうしてもやっておきたいことも、思いきって言ってみた。
「あと出来れば、ここで訓練をしたりしてから転生とかは駄目でしょうか?」
神様の加護があるところで身につけた技術なら、奪われないかなと思ったのと、
なにより、努力が実を結ぶ。というのを体験したかったからだ。
僕の失礼な発言に腹をたてた様子もなく、神様は眼を閉じて考え込みはじめた。
そして暫くして目を開けると、
「わかった。天界での訓練は許可しよう。じゃが成人からの転生となると種族を選ぶことは許さん。完全なくじ引きになる。
しかも与えられる祝福をつかうことになる。
それでも赤ん坊からの転生ではなく、成人からの転生を望むかね?」
神様は此方を試すような表情を向けてきた。
それでも、僕の考えと不安は変わらなかった。
「お願いします」
その時神様は、やれやれという笑みを浮かべていた。
ちょっと短いです。
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