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第31話 メセの街の風景⑤

お待たせしました

暖炉亭で部屋を確保すると、そのまま図書館にむかった。


図書館は、街に着た時の大きな楽しみだ。


「こんにちはナターシャさん」

「いらっしゃい。今日も閉館まで居座るつもりかしら?」

「あはは…」

司書のナターシャさんとは、初日につまみ出されてからの付き合いになる。

時々好きな本の話をしたり、僕が薬師だとわかると、体調やお肌のトラブルの対処法なんかを教えたりもしている。


「先週は大変だったわね。無事でよかったわ」

「ご心配をお掛けしましました」

事件の時には閉館していたために、確認は出来なかったが、心配をかけてしまっていたらしい。

僕は、心配を掛けてしまった人達への、何回目になるかわからない、感謝の言葉を言う。

すると、ナターシャさんは僕の手首をつかみ、

「そう思うなら出すものをだしなさい」

悪い笑顔を向けてくる。

「わかってますよ」

怪しい言い方をしているが、ギルド長の事件の前に、肌が乾燥するという相談を受けていて、その解決策を寄越しなさいと言うだけだ。

「どうぞ」

僕がとりだしたのは、口径が15㎝、高さ2㎝ほどの円筒形の陶器に、その陶器より口径はほんの2㎜大きく、高さは5㎜低い円筒形の陶器を蓋にした、容器の方に白い軟膏をびっちりと詰めた、肌荒れ用の薬用クリームを手渡した。

肌荒れ用とは言っているが、スキンケアの成分も入ったオールインワンクリームでもある。

「指一本で少しだけすくって、手や顔に伸ばしてくださいね。寝る前に身体を洗ってからだと効果的です」

「わかったわ♪」

ナターシャさんは嬉しそうに軟膏をうけとる。

ちなみに代金は、商業ギルドを挟んで支払い済みだ。

「ではごゆっくり。閉館時間には出てきてちょうだいね」

「わかりました」

それから僕は、閉館時間までじっくりと本を読みふけった。



たっぷりと読書を堪能して、暖炉亭に帰ってくると、酒場の所にお客さんがひしめいていた。

「カフトフライとホルブのお代わりだ!」

「カフトフライを追加だ!」

「わかったからちょっと待っておくれ!」

どうやらポテトフライ目当てのお客さんらしい。

だが、在庫で大変だったのは英魂亭のはずだ。

「ただいまもどりました。一体どうしたんですかこれ?」

「おかえり!見ての通りさ。英魂亭の主人が、うちもレシピを知ってることをしゃべったらしくて、英魂亭でカフトフライを食べ損ねた連中がこっちにきちまったのさ。お陰でてんてこ舞いだよ!」

空のジョッキを片付けながら、カタリナさんが事情を教えてくれた。


ポテトフライ=カフトフライを食べた、デニスさんカタリナさん夫婦と英魂亭の御主人の反応を見る限り、気に入られるとは思っていたけれど、ここまで殺到するとは思っていなかった。


いそいで荷物を部屋に置くと、部屋にしっかりと鍵をかけてから下におり、

「お手伝いします」

お店を手伝うことにした。

とはいえ、空になったジョッキやお皿を下げたりするのが主で、注文取りや配膳をするカタリナさんの補助程度ではあったけれど。


時おりお尻や胸を触ってくるお客さんがいたが、その後にはカタリナさんの『O・HA・NA・SI』で大人しくなっていった。


暫く忙しくしていたが、次第にお客さんも帰っていき、

「悪いねえ、新しいメニューを教えてくれた上に手伝いまでしてもらって」

「いつもお世話になってますから」

カフトが無くなり、ホルブも底をついたらしく、酒場部門はようやく閉店となった。


「今回の宿賃は無料にするから、ゆっくり休んでおくれ」

カタリナさん夫婦も、いきなりの事にかなり疲れたらしく、ぐったりとしていた。

「そうはいきませんよ。この事態は私が招いたようなものですから」

「じゃあ半額だね。半額」

これ以上は、押し問答すら出来そうにないほど、僕もカタリナさん達もヘロヘロになっていたので、

「ではそれでお願いします」

それを了承して部屋にむかい、休むことにした。


が、大事な事を思い出した。

僕は部屋に戻ると、オレンジピールの入った壺を取り出し、1階に降りた。

「ん?どうかしたのかい?」

「これをお渡しするのを忘れていました。先日御迷惑をかけたお詫びにもなりませんが」

僕が差し出した壺を夫婦で覗きこんでくる。

「これは?」

「レジルスの皮を乾燥させた保存食です。甘いものなのでお口に合うかはわからないんですが…」

少なくとも、カタリナさんはお酒好きだからあまり食べないかもしれないが、ちょっと甘いものが欲しいときにはいいはずだ。

「ちょっといただくよ」

今度はデニスさんが、一つ手に取り、噛み契り、咀嚼しながら断面を眺めている。

「これは…砂糖と水で柔らかくなるまで煮てから乾燥させたのか。そのあとさらに砂糖でコーティングしている。金銭に余裕のある、薬師ならではの贅沢な御返しだ」

「嫌みな返しをするんじゃないよ。こんな結構なものをいただいたってのにさ」

デニスさんに釘を刺しながら、カタリナさんもオレンジピールを手に取り、美味しそうにかじり始める。

「ああ、すまない。そういう意味じゃなくて、ありがたい御返しだと思ったのでね」

デニスさんはすまなそうに頭をさげる。

「ともかく今日はありがとうね。ゆっくり休んでおくれ」

「はい。お休みなさい」

2階に上がっている途中に、カタリナさんがデニスさんにちくちくしながらオレンジピールを取り上げる声が聞こえてきた。

僕は部屋に戻ると、しっかりと鍵をかけ、ベッドに横になった。



その時街の外で何が起こっているか知ることもなく。

日常風景は終了

次回からは騒動です


キャラクターのセリフを考える時に、身の程知らずにも声優さんをイメージしてみたりするのですが、出来るキャラと出来ないキャラの差が大きいです。

イザベラ =後藤邑子さん(ゴットゥーザ様)

カタリナ =甲斐田裕子さん

ミルカード=丹下桜さん

ハルナ  =東山奈央さん

ナターシャ=桑島法子さん

リガルト =小山力也さん

こんな感じで考えています。


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