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閑話 6

お待たせしました

~メリック商会会長 メリックの視点~


あれは、私がメセの街で取引の成功に浮かれて、翌日の午後から商談があるのを忘れて、酒を飲み過ぎて酷い二日酔いになっていた時のことだ。


商談に遅れるよりはと、商談の場に指定している商業ギルドのロビーで、二日酔いに苦しんでいた。

そんな時、私の隣に誰かが腰をかけた。


ふとみてみると、フードを被ってはいるが、若い娘であることが見てとれ、足元にある大きな背負い袋から、行商人らしい事がわかった。


そのとき、ギルドの若い男の職員が、買取待ちの番号を大声で叫んだため、頭にガーンと響き、

「あいたたたたっ!」

思わず声がでてしまった。

「あの、どうかしましたか?」

彼女はびっくりした様子で私に話しかけてきた。

「いやあ…昨日ちょっと飲み過ぎてしまって…いたたた…」

私の返答に、彼女はなるほどと納得し、自分の背負い袋をごそごそとやりはじめた。

そして、随分と滑らかな表面の木製の箱を取り出すと、その中から小さな包みを取り出し、

「これどうぞ。二日酔いの薬です」

そう言って私に差し出した。


この国でそれなりに名前の知られた商人の私に媚びを売ろうとする輩は多いが、彼女の様子から、私がメリック商会の会長だとは知らないらしい。

「ああ、ありがとう」

純粋な好意であるらしいのと、商業ギルドのロビーで毒殺もないだろうと、私は包みを受け取った。

すると彼女は、取手のついた光沢のある銀色のカップを取り出し、水生成の魔法でカップに水を注ぎ、

「どうぞ」

私に差し出した。

私は包みを開け、その粉薬を口に含み、カップを受け取って水を流し込む。

ありがたいことに、水はよく冷えており、なかなかに心地よかった。


同時に、彼女がなかなか腕のいい魔術師であることもわかった。

精神魔法の水生成の魔法で、水の温度まで操れるというのは、かなりの上級者でなければ難しいからだ。

「暫くゆっくりしていれば、次第に収まって来ますから無理をしないようにしてくださいね」

「ああ。この薬はお嬢さんが作ったのかい?」

「はい。先生の所から一人立ちしたばかりですが」

どうやら彼女は、商業ギルドに薬を売りに来ているようだ。

彼女は番号が呼ばれ、商談室の方に向かっていった。


薬をもらったとはいえ、後数時間は頭痛と気持ち悪さに悩まされる。


そう思っていた。


しかし、15分もすると頭痛も気持ち悪さもすっかりなくなってしまったのだ。

私は、彼女の応対をしていた受付主任のミルカード嬢に、彼女の事を訪ねた。

「ああ。ヤムちゃんですか。ええ、腕のいい薬師ですよ」

ミルカード嬢の様子から、嘘やお世辞には聞こえない。


どうやら彼女は間違いなく腕のいい魔術師であり薬師のようだ。

それを確信した私は、買取を終えて出てきた彼女に声をかけ、薬のお礼と自己紹介をすることができた。


本音を言えば、彼女をさらってでも、うちの商会の専属薬師にしたいところだが、そんなことをすれば間違いなく、嫌われるどころではすまない。

私が若い頃に働かせてもらっていた商会の会長いわく、

『自分のものにしようとして嫌われるよりも、自分のものにしようとしないで仲良くなれ』

の言葉に従うべきだろう。

せっかく友好的な出逢いができたのだから。


そのおかげもあって、私は彼女・ヤムさんとはいい関係を築けている。


商業ギルドを通してではあるが、二日酔いの薬や風邪薬や胃薬などを、少量ながら卸して貰えたのだ。


だが残念な事に、大半を身内で消費してしまっている有り様だ。

とくに二日酔いの薬と胃薬を…。

本編の時系列としては、11月の終わりから12月の始めくらいです。


喉が痛くて声が出にくい…

風邪だったら更新が遅れるかもしれません


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