第3話 知らなかった真実
説明多めです
お爺さんの話した内容に、あまりにも驚きすぎて呆然としてしまった。
地獄に落とされたのは間違い?
死んだことすら間違い?
いったいどういう事なのだろう?
そんなことを考えていると、
「まあ、混乱するのはよくわかる。じゃが、よく話を聞いてほしい。なぜそうなったかの理由をな」
お爺さんが声をかけてきた。
お爺さん。多分、閻魔大王様より偉い人。
は、その長い髭を撫でながら、僕を見つめた。
「事の始まりは、お前さんが、双子の兄の龍志郎と共に母親の体内に出来上がったときじゃ。
ある神が、お前さんの兄を気に入り、自分の従属神にしようと企んだ。
俗な言い方をすれば若いツバメじゃな。
じゃが、従属とは言え神に成るためには余程のことを成さねばならない。
そこでその神はある細工を施した。
それは、弟であったお前さんの、生まれもつ幸運・産まれてからお前さんに与えられるであろう親の愛情・自身の行動の結果によって向けられる好意・努力によって得られるプラスになる結果。
そのすべてが兄の物になるように細工された。
そして逆に、兄の生まれもつ不幸・自身の行動の結果によって生じる、マイナスになる結果・向けられる悪意と発生する罪・人生において発生するであろう健康被害や怪我。
そのすべてがお前さんに向けられるように細工されたのじゃ。
しかも、お前さん自身には、それをおかしいと感じたり、違和感を抱かないように精神支配をかけていたのじゃ。
さらには世界中の人間から、0.01%づつ努力の結果を奪い取るようにもしておった。
これにより、お前の兄はなんの努力をすることもなく何でもでき、全ての人間に愛され、怪我も病気も全くせず、どんな犯罪を犯しても罪に問われることが無くなったというわけだ」
神様はそこまで一気に話すと、ふう。と 、息をついた。
神様の話してくれた事が事実だとすると、いや、間違いなく真実だと断言出来る。
事実兄は、一切勉強をしていなくとも、全ての教科で満点をとっていたし。
スポーツも、全く練習をしていなくても、エースと呼ばれる結果をだしていたし。
誰からも、嫌われたり恨まれたり妬まれたりすることはなかったからだ。
「お前さんを殺した相手も、本来はお前の兄に遊ばれて捨てられた恨みなのだが、それをなぜかお前さんが兄に進言したせいだと思い込んだためじゃ」
それを聞き、殺された時の事を思い出した。
通り魔が僕を睨み付け、
「あんたのせいで私は捨てられたのよ!」
と、なんの事なのかわからないことを喚いていたのを。
「まあここまでは人間界でのこと、お前さん達人間にはどうにもならん。やらかしたのは曲がりなりにも神じゃからな。お前さんへの償いの話は、悪いが暫し後にしてほしい。先に説明しておかねばならんことがあるでな」
そういうと神様は、横に座っていた閻魔大王様を睨み付けた。
「いかに神が細工をしたからといって、冥府の支配者であり、審判を下すものとして、魂に穢れが有るかどうか見抜くのを怠るとはな」
「申し訳御座いません!部下からの報告を信頼しておりましたために…」
閻魔大王様は、ソファーから離れると、神様に対して土下座をした。
それをみてから、神様は僕に視線を向けた。
「本来なら、お前さんが冥府に来た時点で、こやつが真実を見抜き、もっと早く救済をしてやれるはずじゃった。それが、こやつの怠慢で3億7384万6921年もの間、阿鼻地獄で苦しめられる事になってしもうたのじゃ」
閻魔大王様がミスをしたのにも驚いたが、阿鼻地獄で3億7384万6921年も過ごしていたことにも驚いた。
絶え間ない責め苦で、時間の感覚などなくなっていたためだろう。
「お前さんには謝ったとしても、今までの事が消えるわけではない。せめてもの償いとして、祝福を授けてから、地球とは違う世界での、新たな人生を歩んで貰いたいのじゃ」
神様の言葉に、
僕はほんの少しの期待と、とてつもなく巨大な不安をおぼえるのだった。
再度お願いしますが、時間の概念はつっこまないでいただけるとありがたいです