第25話 小悪党の情けない幕切れ・後編
本日2回目の投稿です
ポイントは280Pをこえました。
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しかし。
僕の予想と、そしてディウスの思惑とも違った反応が、伯爵から帰ってきた。
「貴様、誰に向かってその様な口の利き方をしている?」
「は?いまなんと?」
ディウスは、信じられないといった顔で伯爵をみつめた。
こいつは自分の命令に従う。
そういう思惑が外れたからだろう。
「誰に向かってその様な口の利き方をしているといったのだ!この無礼者が!」
伯爵は憤怒の表情をあらわにし、ディウスを怒鳴り付けた。
その伯爵の態度に、
「無礼者?この私が?冗談じゃない!私は冒険者ギルドのマスターだぞ!私が一言かければ、冒険者達に魔物を刈らないように命令し、流通も行き来も出来なくすることが出来るんだぞ!?この私の影響力を理解してものを言っているのであろうな伯爵!」
ディウスは直ぐ様顔を真っ赤にし、苛立ちを隠すことなく、御領主である伯爵を怒鳴り付けた。
それを聞いても、御領主のゼルハンド伯爵は平然と、むしろ鼻で笑いながら答えを返した。
「貴様がそうやって不敬な口をきけるのは、ベスダン侯爵の後ろ楯があってこそ。しっているか?ベスダン侯爵は反逆罪で斬首になったそうだ」
それを聞いた瞬間、ディウスは呆気に取られた表情をした後、伯爵を小馬鹿にした顔をする。
「はっ!そんなデマを誰が信じるか!」
どうやらこの男の態度は、後ろ楯があったから出来たことらしい。
虎の威を借る狐とはこのことだろう。
「残念ながら本当なんだよね~」
その時、兵士達の後ろから、あのときの4人が現れた。
その彼等を見た手下達は、何故かざわざわとし始めたが、ディウスは気がついてはいないようだった。
ディウスは彼等を鼻で笑い、
「貴様はあの時の無礼者共か…貴様等が馬鹿馬鹿しいデマを伯爵にふきこんだのか?!」
可哀想な者をみる目をしていた。
「とんでもない。ベスダン侯爵の斬首は事実だし、国王陛下からの正式な通達もある。これが、国王陛下からの正式な通達書」
あの金髪のイケメンの人がとりだした巻物には刻印がしてあり、ディウスの反応を見るかぎり、どうやら間違いなく国王陛下からの正式な通達書であるらしかった。
「ちなみに、貴様の家屋敷・別荘・愛人宅・冒険者ギルドの全施設は、現在家宅捜索中だ。そして貴様の娘がやらかした女性冒険者の人身売買についても、王国の正式認可奴隷商の協力で、一部身柄の保護・証拠の確定ができている。冒険者ギルドからは、マスター詐称と、冒険者ギルドの信用失墜の証拠も揃っているそうだ」
ゼルハンド伯爵は畳み掛けるように、現状を報告しながら一歩前に出ると、ディウスの後ろにいるチンピラ冒険者に視線をむける。
「さて、そこの大罪人と共にいる者共に告げる。其奴の味方をするなら、其奴の共犯として余すことなく死罪だが、雇われただけで、これ以上抵抗しないというなら、情状酌量の余地をやろう。なお、街中を徘徊していた其奴の配下は、現在捕縛中だ。助けは来ないものと知れ」
それを聞いた手下達は、全員が武器を手離して両手をあげる。
その事実に、ディウスは真っ赤になりながら彼らを怒鳴り付ける。
「貴様ら!この私を裏切るとはどういうつもりだ!金はいくらでも払ってやるといったはずだ!」
「冗談じゃない!あいつらは有名な琥珀金級冒険者パーティーの『星嵐』だぞ!敵うわけないだろうが!」
「楽に金が手に入るから従ってただけだ!お前なんかと心中してたまるか!」
手下たちは、命おしさに早々にディウスを見限り、大人しく降参して捕縛されていく。
その光景を、ディウスは怒りに震えながらみつめていた。
ゼルハンド伯爵は、ディウスに剣をつきつけると、
「さて、どうするディウス?大人しく捕縛されて死罪となるか!それとも抵抗してこの場で斬られるか!好きな方を選ぶが良い!」
最後通告をおこなった。
それを聞いたディウスは、僕の方を睨み付けてきた。
「貴様が大人しくこの私の命令を聞いていれば!こんなことにはならなかったはずだ!」
唾をとばしながら、必死の形相で怒鳴り付けてくる。
「関係ないとおもいますよ」
「五月蝿いっ!この私に意見をするなぁ!」
ディウスは剣を抜くと、僕目掛けて襲いかかってきた。
僕は咄嗟に金剛杖を握りしめて、牽制のために振り下ろした。
この剣を止めた時に、ディウスに魔眼をつかい、操るつもりだった。
その時、この世界の神様のいたずらか、ディウスが足を滑らせてしまい後ろに仰け反った。
「うわっ!」
そして運悪く、僕が振り下ろした金剛杖の先端が、
「あ」
ディウスの股間に直撃したのだった。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
ディウスは声も出せないほど悶絶してその場に転がり、回りにいた男性達は、思わず腰を引いた。
こうして、冒険者ギルド長のディウスは、僕の覚悟を嘲笑う形で、あっさりと捕縛されたのである。
この男がやったことは、非常に腹立たしく許せない事だ。
しかし前世が男の僕としては、ちょっぴり申し訳なく思ったのも事実である。
今回の落ちは、キャラクターを制作した時から決定していました。
小悪党は小悪党らしい情けない最後を。
自害とかして華々しく散ると言うのは、大物だけに許された最後です。
結局正体はバレなかった…
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