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第22話 安全確認・暖炉亭

お待たせしました



イザベラさんハルナさん母娘(おやこ)に挨拶をしてから、次に向かったのは暖炉亭だ。

僕が常宿にしている事は調べられているだろうからだ。


透明化(インビジブル)』の魔法を解除して入ろうとしたところ、中から怒鳴り声が聞こえてきたので、そのまま入ることにした。


中では、ガタイのいい、チンピラとしか思えない冒険者が、女将さんと旦那さんに因縁をつけていた。

「だから。ヤムって娘は泊まってないっていってるだろう」

「やかましい!その女がここを常宿にしてるのは調べがついてるんだ!」

「だから。()()泊まってないっていってるじゃないか」

「いい加減正直に吐かない痛い目みるぞゴラァ!」

そういってチンピラ冒険者は女将さんの襟首をつかんだ。


それを見て、僕が魔法弾(マジックブリット)を発動させて放とうとしたとき、

「あいつバカだな」

「カタリナに喧嘩売るとか正気の沙汰じゃねえ」

常連さん達が、チンピラ冒険者に哀れみと蔑みの目を向けたのだ。


次の瞬間、

女将さんの襟首をつかんでいた男の溝尾(みぞおち)に、

女将さんの右拳がドボォッ!という轟音と共に叩き込まれ、

前のめりになった男の顎に、女将さんの左拳がゴキィッ!と、音を立ててめり込み、

止めとばかりに放たれた右の打ち下ろしが、男の顔面をボコォッ!とへこませながら床に叩き付けると、男は鼻から血を流しながら動かなくなった。


「このババア!」

それを見たもう一人の男は、剣を抜いて女将さんに斬りかかった。

しかし女将さんは、その動きに合わせるように綺麗に回転しながらかわしつつ空中にとびあがり、片方の足をブンと振り抜いて、斬りかかってきた男のこめかみに、回し蹴りを食らわせた。

男は吹き飛び、壁にぶち当たって気絶した。


その鮮やかな動きに、常連さん達は歓声を上げ、僕は透明化の魔法の維持を解除してしまっていた。

当の女将さんはやれやれといった様子で、肩をぐるぐるとまわしていた。

「鈍ったねえ。こんなのに3発も入れちまった」

「流石は『鉄拳女帝(てっけんじょてい)』だぜ!」

常連のお客さんが、ジョッキを掲げて囃し立てる。

「恥ずかしいからやめておくれよ!」

なんとなくそんな気はしていたが、女将さんも元冒険者らしかった。


しかもかなり強かったらしい。


それはともかく、この騒ぎの原因は間違いなく僕にある。

「こんにちは」

僕は意を決して声をかける。

「おやいらっしゃい」

チンピラ冒険者が倒れている状況であるにも関わらず、女将さんはいつもの対応をしてくれた。

「申し訳ありません。これ、僕が原因なんです」

「これかい?」

やっぱり手配書が回ってきていた。

「ごめんなさい!僕が冒険者ギルド長と対立してしまったせいで…」


それだけではない。

9日間街に来ていなかったために、事態が悪化したのかもしれないし、その間迷惑をかけ続けていたのかもしれない。

原因を取り除くなんて傲慢な考えをした自分が嫌になる。


すると女将さんは手配書をくしゃくしゃと丸め、暖炉に放り込んだ。

「そもそもおかしいじゃないか。あんたは冒険者じゃあない。だったら従う義務はない。冒険者ギルドにポーションを納める依頼も受けてないんだろう?」

「はい。商業ギルドに直接持ち込むだけですから」

「だったらあんたに非はないじゃないか」

「でも…」

たしかにその通りだが、僕の選択の結果、今回の事件が起こったのだから、僕に責任はあるとおもう。

「それに、こいつらは私に喧嘩をうってきた。その喧嘩を買っただけのことさ」

女将さん=カタリナさんは歯を見せてにっこりと笑った。


「そうそう、うちのカタリナにはいつものことだから、気にしないでいい」

「デニス!」

そこに声をかけてきたのは、旦那さんのデニスさんだった。

「現役時代は『鉄拳女帝(てっけんじょてい)』だけじゃなくて、『トロールを殴り殺せる女』とか『撲殺愛好家』とか『泥酔拳王(でいすいけんおう)』とか色々物騒なあだ名もあったからね」

昔を懐かしむように眼を細め、うんうんと頷いている。

お客さんも含めて。

「今はそんなことはない!酒だって1日2杯に控えているじゃないか!」

カタリナさんは、恥ずかしそうにしながらも、旦那さんに向けて抗議をする。

「じゃあそこに倒れているのはどう説明するつもり?」

「うっ!うるさい!」

鋭い?指摘をされたカタリナさんは真っ赤になりながらも、チンピラ冒険者を縛り上げていく。


なんかこう…惚気られた感じがするのは僕だけなのだろうか?


すると、旦那さんと目があった

すると旦那さん=デニスさんは、にっこりと笑い、

「ともかく、僕達は大丈夫だから。それに、まだ行きたいところがあるんだろうからいっておいで。部屋はとっておくからね」

自分より背の高いカタリナさんを抱き寄せながら、僕を送り出してくれた。




僕は

前世では他人に親切にされたことは1度もなかった。

自分はどうして嫌われているのだろうと、悩んだこともあった。

死亡して、地獄に落とされて、神様に保護されて、ようやく他人から無条件に嫌われなくなった。

そしてこの異世界で、神様達以外で親切にしてくれる人達に出会えた。

その人達に依存をしてはいけないのはわかっている。

でも、僕が原因で迷惑をかけた事に対して、責任くらいは取るつもりだ。


たとえ正体がばれようとも。



逞しいメセの街の住人達その2


カタリナさんを本気で怒らせると、オーガを一発で吹き飛ばすほどの崩拳がとんできます。


今後の展開をどうしようかと悩んでいます



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