第20話 ギルド長の暴挙
お待たせしました
冒険者ギルド長に理不尽な命令をされた日から9日目。
不安を抱きながらも、僕はメセの街にやってきた。
今回納品したら、しばらく納品を控えるつもりで、少し多めにポーションをもってきていた。
いつもの城門にやってくると、なぜか門の外に、柄の悪そうな冒険者が十数人たむろしていた。
前世でよく見た、コンビニの前で座り込んでいる不良のようだった。
いつもいる城門の警備兵の人が、彼等を迷惑そうに睨み付けている。
なんとなく嫌な予感がしたので、人の居ないところまで引き返して、透明化を使ってすり抜けようと思ったのだけれど、
「おい!居たぞ!捕まえたら10万クラムだ!」
「どうせなら楽しんでから連れて行こうぜ!」
しっかりと見つかってしまった。
しかも彼等は、かなり不穏当な事を口走りながら、武器を手にして僕に近寄ってきた。
さっきの会話から察するに、軽く怪我をさせておとなしくさせてから連れていくつもりなのだろう。
この状況での魔眼使用は、後々面倒な気もするので、僕は金剛杖を構えた。
「やる気らしいぜ?」
「どさくさ紛れに胸でも揉むかぁ?まあどさくさ紛れじゃなくても揉むけどな!」
胸を揉むといった男が、叫びながら長剣を振り下ろしてきた。
僕は杖の腹でいなしつつ、男の喉に突きを放った。
ボコッ!という音と、「ぐえっ!」という声が響き、胸揉み男は口を開けたまま泡を吹き、倒れて動かなくなってしまった。
手加減したから死んではいないはずだ。
それを見て、冒険者達は目付きを変えた。
「優しく捕まえて楽しむつもりだったが、もう容赦はしねえ!」
そういうと、一斉に襲いかかってきた。
しかしその動きは、僕の杖術の先生であった闘神様に比べると、実に鈍重だった。
かわしては顔面を叩き、武器をいなしては足元を払って頭から落下させ、間合いを詰めては溝尾に突きを入れたりしているうちに、冒険者達は全員地面に倒れて気絶してしまっていた。
すると、警備兵の人達が手際よく彼らに縄をかけ始め、
「見事なもんだ。お嬢さん意外にやるもんだね」
いつもの隊長さんが話しかけてきた。
「すみません。お騒がせをしてしまいました」
「気にしなくてもいいさ。普段から素行が悪い連中にうろうろされてちゃあ気分が悪いし、いつかはぶちこんでやるつもりだったからな。それよりお嬢さん。これ、身に覚えはあるかい?」
そういって隊長さんが見せてくれたのは、僕の顔が書かれた手配書だった。
それには、
『冒険者ギルドに納入されるポーションを、商業ギルドに横流しした横領犯』
と、書かれてあった。
「ありませんよ!そもそも冒険者ギルドに登録すらしていませんし!」
僕は慌て否定する。
「だろうな。冒険者ギルド長がお前さんに因縁をつけた話は聞いてるからな。あんな連中がのさばってるのも、あの冒険者ギルド長が原因だ」
隊長さんは軽く笑いながら、僕にその手配書を渡してきた。
嫌な予感が当たった。
あの傲慢な冒険者ギルド長の事だから、なにかはしてくるだろうとおもっていたが、こういう手段をとるとは予想外だった。
そして僕の頭に浮かんだのは、親切にしてくれた街の人達のことだった。
こういう場合、僕に所縁のありそうな人に迷惑がかかるというのは、よくあることだ。
「街の人達や商業ギルドの人達はどうなっているんですか?」
僕は思わず隊長さんに詰め寄った。
「街の連中でお嬢さんの事を知ってる連中は、手配書を見ても鼻で笑ってるよ。
それに、手配書が配られてからお嬢さんが街にきたのは今日が初めてだから、みんなで暫く見てないの一点張りだな。
商業ギルドは冒険者ギルドから色々と嫌みを言われたり、嫌がらせをされているらしい。ま、商業ギルドのギルド長は出来るヤツらしいから、上手くかわしてるらしいがね。
まあ、今のところ怪我人なんかは出てないよ」
「そ、そうですか…」
それを聞いて、少しだけ安心した。
だが、僕が原因で迷惑をかけているのは事実だ。
謝罪し、そしてその原因を確実に取り除かないといけない。
僕は自分の顔を両手で叩くと、
「見つからないように、商店街や商業ギルドにいってみます!」
「おい!町中は冒険者ギルドのチンピラ冒険者が徘徊を…」
隊長さんの制止を無視して城門をくぐり、すぐさま路地に入ると、『透明化』の魔法を使った。
最初に冒険者ギルド長に絡まれた時に助けてくれたモーティアちゃんたちには申し訳ないが、あの時邪魔をされなければ、今回の事は起こらなかっただろう。
その事で彼女等を責めたり恨んだりすることはない。
タイミングの問題だ。
そして悪いのは、冒険者ギルド長のディウスに他ならない。
なによりまずは、お世話になった人達の安全を確認することだ。
ポーション類は、1本が100㏄くらいです。
リポ◯タンDが分かりやすいでしょうか。
実は最初のアイデアでは、同じように日本から転生してきた剣道師範で酒好きなOLのお姉さんを用心棒に、娼館にスキンケア用品・石鹸・シャンプー・コンディショナーなんかを行商し、サキュバスとしての吸精衝動を押さえるために、時々春も売るというものでしたが、色々あってボツになりました。
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