第18話 冒険者ギルド長からの因縁
続けざまの厄介事です
チンピラ冒険者に絡まれてから8日後の納品日。
これからもあんな連中に絡まれるのは面倒極まりない。
どうしたものかとため息をつきながらも、メセの街にやって来た。
いつもの隊長さんに挨拶をして街に入り、商業ギルドへの道を歩いていると、護衛付きの豪華な馬車が、僕のすぐ近くでとまった。
なんだろうと思っていると馬車の窓が開き、彫りの深い顔で目付きの鋭い人が顔をだした。
そして僕をじろじろとながめると、
「最近商業ギルドにポーションを卸しているのはお前だな?今日からは全て我が冒険者ギルドに納めろ。代金は一律で1本につき100クラムだ。午前中には納めておけ。いいな」
と、言い放った。
一瞬何をいわれているのか理解できなかった。
僕はこの人とは初対面。
なおかつ話の内容からすると、冒険者ギルドの人のようだが、僕は冒険者ギルドに所属してはいない。
で、あるにも関わらず、こんなことを言われて、はいわかりました。と、従わなければならない理由はない。
「お断りします。私は冒険者ギルドに所属すらしてないので、貴方の指示を聞く必要がありませんから」
そういってその場から離れようとしたのだが、護衛の冒険者?に道を塞がれた。
「お前。この私が誰だかわかっているのか?私は冒険者ギルドマスターのディウス様だぞ!」
ディウスと名乗った冒険者ギルドのマスターは、馬車の窓から、イラついた表情で睨み付けてくる。
前世で同じような会話をする教師が、中学の時にいた。
「俺は教師だからお前達より偉いのだ」
と、わめき散らし、何かしら嫌なことがあると、生徒(主に僕)を呼び出して怒鳴り付け、殴り付けてきたのを覚えている。
目の前の冒険者ギルドマスターを名乗るこの男を鑑定したところ、横領・詐欺・恐喝・殺人教唆などの罪状が羅列していた。
「お断りします。さっきも言いましたが、私は冒険者ギルドに所属していませんから、貴方の指示を聞く必要がありません」
以前、冒険者ギルドの受付嬢が、僕を邪険にして追い出したのは、このギルドマスターと関わらせない様にとの配慮だったのかもしれない。
だとしたらお礼を言わないといけない。
「おい!この女を連れていけ!多少躾てもかまわん!」
我慢の限界がきたのか、ギルドマスターは、護衛の冒険者?に僕をさらうように指示した。
街中ではと思うが、捕まれた瞬間に魔眼で催眠をかけてやろうとしたとき、冒険者?の腕を何者かが掴み取った。
その人物は、身長2mはあるスキンヘッドの大男だった。
「だめよ。襲われた訳でもないのに女の子に乱暴しちゃ」
そしてその喋り方と雰囲気は女性のもの。
いわゆるオネエの人だった。
「それに、ギルドマスターだって?誰の許可があってマスターを名乗っているんだ?」
僕の前に立ち、ギルドマスター=ディウスにつめよったのは、背は僕より高く、剣を腰に差した金髪のイケメンな男の人だった。
「何だ貴様らは?私がこのメセの街の冒険者ギルドを治めているのだからマスターなのは当然だ!」
ギルドマスターのディウスは、怒り心頭でそう主張する。
そう言えば智嚢神様に習ったこの世界の組合の仕組みでは、
「総統を名乗れるのは、ギルドが置かれている国の、全てのギルドを纏める立場にいるものを指すわ。この国の場合は王都にある冒険者ギルドの責任者の事。それ以外の責任者は全て長と呼ばれるわね」
こうなっている…。
僕が思い出した事を全部説明してくれたのは、商業ギルドのアイーダさんばりのエロい雰囲気の女の人だった。
「お前がマスターを名乗るのは詐欺行為…」
その後ろには、ツインテールの髪型をした女の子が剣呑な雰囲気でギルドマスター改めギルド長を睨み付けていた。
「貴様ら!冒険者ギルドのマスターであるこの私にたてついて、今後ギルドを利用できると思っているのか?!」
「俺達は王都に所属する冒険者だから、別にこのメセの街の冒険者ギルドが、使えなくても問題はないんだよ」
ディウスが顔を歪ませながら怒鳴り付けるが、金髪のイケメンはニコニコしながらディウスに反論する。
ディウスは、王都の冒険者と聞き、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「おい女!明日までに納品しろ!いいな!」
そして僕に一方的に命令をすると、馬車を出して去っていった。
馬車の去っていくのをみつめ、ふうと息をついたあと、助けてくれた人達に向き直り、
「助けていだだいてありがとうございました」
丁寧に頭を下げる。
「大丈夫?酷いことされてないわよね?」
「はい。大丈夫です」
最初に助けてくれたオネエの人が、顔を近付けて心配をしてくれた。
迫力は凄いが、本気で心配をしてくれているのが滲みでている。
あとの3人は、僕を囲みながらも、冒険者ギルド長が去っていった方向をみつめていた。
「あれはもうだめだな」
「色々手間が掛かりそうね」
王都から来たということは、あの冒険者ギルド長絡みかなと推測できるが、聞いたりするのは良くないだろう。
なににしても、面倒事になってしまったことはまちがいがなかった。
モチベーション維持に、漫画やアニメや小説を色々探して本屋巡りがたのしい。
こういう悪役は見苦しく行動させるのがたのしい。
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