第2話 阿鼻地獄の日々
無間地獄を阿鼻地獄に変更しました。
僕がこの阿鼻地獄に落ちてから、どれくらいの時間が立っているのか、最早意識すらしていない。
日付けの感覚なく続けられる責め苦は多岐にわたる。
ただひたすらに獄卒になぶり殺される。
縛り付けられて、熱したノコギリで切り刻まれる。
真っ赤になるまで焼けた鉄串を全身に打ち付けられる。
巨大な獄卒鬼に踏み潰される。
オリンポス山より高い、灼熱の鉄板の山を乗り降りさせられる。
これでもほんの一部でしかない。
初めは泣きわめき、悲鳴をあげていたが、今では呻き声一つ出なくなっていた。
今日?もこれから、焼けた鉄柱に鉄串で貼り付けられ、オリンポス山より高い針の坂から落とされるところだ。
「さて、ゴミカス糞野郎。楽しい楽しい落下の時間だ。悔い改めてこいっ!」
獄卒の青鬼が金棒で僕を殴り落とすと、 ガコン!グシャッ!ガコン!グシャッ!と、音をたてながら針の坂を転げ落ちてゆく。
この時、下では獄卒達が何やら慌てていたらしいが、僕には知るよしもなかった。
何しろ、針に頭を貫かれて、意識すらなかったからだ。
気がついた時。
そこは地獄ではなかった。
生きている時に入った事はないが、高級ホテルの様な部屋で、部屋の雰囲気も調度品も、嫌らしさのない素晴らしいものなのだろうと思った。
そして地獄では、腰にボロを巻いているだけだった自分が、いつの間にか綺麗な服を着ていたことに気がついた。
ちゃんとしたものではなく、貫頭衣のようなものではあったが。
するとそこに、ノックもなく綺麗な女性が入ってきた。
「失礼。起きていましたか」
透明感のある声を掛けられ、
「では、私に着いてきて下さい」
有無を言わさない様子で扉を開けたままにし、僕に着いて来るように促してくる。
それに従い、僕は彼女の後ろを着いていった。
部屋の外の廊下も、やはり高級ホテルの様な廊下で、キョロキョロと辺りを見回しながら彼女の後ろをついていく。
その内に、やはり豪華そうな扉の前までやってくると、コンコンコンとノックをし、
「失礼します。矢嶌六三さんを連れてきました」
と、中に声を掛けた。
「入りたまえ」
部屋の中から男性の声がすると、女性はおもむろに扉を開け、
「どうぞ」
僕に部屋に入るよう促した。
僕が部屋にはいると、広いその部屋にソファーとテーブルのセットがあり、そのソファーには、閻魔大王様と見知らぬお爺さんがすわっていた。
閻魔大王様の姿をみて、僕はすぐに土下座をする
「まあ、座りなさい。そのままでは話も出来ん」
「は…はい…失礼します」
お爺さんに促され、僕は怯えながらソファーに座る。
お爺さんは長いあご髭をひと撫でし、
「単刀直入に話そうかの」
その髭に手をやったまま、
「実はのう。お前さんは地獄に落ちるどころか、死んだことすら間違いだったんじゃ」
申し訳なさそうな顔で、信じられないことをいいはなった。
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