第14話 図書館の利用と街でのお泊まり
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役所に併設されている図書館は、利用には身分証が必要で、入館料1000クラムで時間制限は開館から閉館まで。
平民は貸し出し不可。
持ち出したり破損したりすると、罰金・逮捕は勿論、最悪死罪なんてこともあるそうだ。
僕は図書館や図書室が好きだ。
前世の家では本を読む暇は与えられなかったが、学校では、昼休みの時間、みんなが昼食を食べている時にだけは、図書室で本を読むことができた。
図書館は、僕以外の家族が旅行に行っている間だけ行くことができた。
司書の人には睨み付けられ、30分したら追い出されていたけれど。
それでも、図書館・図書室の本だけは、嫌がらせをせずに知識をくれた。
なので、せっかく来たのだからと、このメセの街の図書館にはいってみることにした。
書架が並び、本が整列し、インクの匂いがするのは、前世の図書館と変わらなかった。
僕は入館料を払い、さっそく本を手にとった。
世界地図や歴史書。
神話に寓話に昔話。
魔法のハウツー本に研究書。
魔物図鑑に動物図鑑。
武器防具のカタログに流行りの物語小説など、色々な本を読みまくった。
そのため閉館時間になっても玄関にこなかったために、
「御客様。閉館時間でございますので…」
笑顔で怒っている司書さんにつまみ出されてしまった。
外に出たときには、日が傾き始めていた。
八百屋のおばさんのところで、なにか買ってから帰ろうと寄ってみたところ、
「そういえばあんた。宿は決めてあるのかい?」
「いえ、このまま城門をでて帰りますが?」
僕としては平常運転なのだが、おばさんから見ればとんでもないことだったらしく。
「何馬鹿なこと言ってるんだい!あんたみたいな若い娘が夜に独り歩きなんて冗談じゃないよ!私の知ってる宿を紹介してあげるからそこに泊まっていきな!いいね!?」
「はいっ!」
おばさんの迫力に思わず返事をしてしまった。
よくよく考えれば、中世な感じのこの世界で、夜に移動するのは犯罪者か訳有りか、盗賊か魔物に襲われている時くらいだろう。
それに、一応。女1人で夜にうろうろすると怪しまれるのは間違いないので、泊まっておくのは正解だ。
そうしてたどり着いたのは、清潔な感じのする建物だった。
看板には、『暖炉亭』と書かれてあった。
「こんばんはー」
中にはいってみると、外見の印象と同じく清潔で、右手にはカウンターを兼ねた厨房があり、左手は広いスペースに椅子とテーブルが並び、食事ができるようになっていた。
そしてその壁には看板通りの、煉瓦で出来た大きな暖炉が存在感をはなっていた。
「いらっしゃい。暖炉亭にようこそ。食事かい?それとも泊まりかい?」
声をかけてきたのは、年齢は40代くらいなのだろうが、体育会系で引き締まった感じの女性だった。
多分ここの女将さんなのだろう。
「あ、泊まりでお願いします」
「あいよ。一泊素泊まりで5000クラム。食事は別払い500クラムで提供してる。風呂は無いけど、別払いでタライとお湯は提供してるよ」
「じゃあ、一泊お願いします。あと夕食も」
僕はそう言って、鉄貨5枚と、青銅貨5枚を女将さんに渡す。
「毎度。部屋は2階に上がって左の奥だよ。夕食はもう食べられるから、荷物を置いたら降りてきな。あ、戸締まりと貴重品の管理はしっかりね」
そう忠告しながら鍵を渡してくれた。
あてがわれた部屋は、やっぱり清潔で、ベッドのクッションもなかなかだった。
とりあえず入り口以外の鍵をきっちりとかけ、神様のバッグにリュックや金剛杖やフード付きのマントやらをしまい、それを肩にかけて、食事をするべく下に降りていった。
下の食事をするスペースはさっきと変わっているはずもなく、何人かの宿泊客が食事をしていた。
空いている席にすわると、女将さんが食事の乗ったトレイをもってきた。
「おまたせ。今日のメニューは、カフトと野菜の重ね焼きに、ルマーのスープ。ブートは3つ目からは1つ30クラムだよ」
「ありがとうございます。いただきます」
女将さんが笑顔を浮かべながらカウンターに戻ったのを見届けたあと、早速いただくことにした。
カフトと野菜の重ね焼きは、ジャガイモ・ニンジン・キャベツのキッシュ。
カフトはジャガイモのことだ。
ルマーのスープはトマトのスープ。
ブートはバターロールくらいの丸いパン。
キッシュはジャガイモがぎっしりつまっていて食べ応えがあり、トマトスープは酸味がきいていて、タンパクなキッシュの味付けの意味もあるらしい。
そのコンビネーションは実にすばらしかった。
夢中で食べていたために、夕食はあっという間に終わってしまった。
今いるお客さんは物静かな人ばかりみたいだけど、面倒が起こらないうちに、部屋に引き上げることにした。
「ごちそうさま。おいしかったです」
「そいつはよかった。ゆっくり休んでおくれ」
「はい。おやすみなさい」
そう言って僕が部屋にはいって鍵を閉め、荷物整理や確認をしていると、下から大声が響いてきた。
「おう女将!酒だ!」
「なにが酒だい。既に酔っぱらいじゃないか!」
酒場にもなっているらしいから、そういうお客もくるのだろう。
そのまま荷物の整理をおえると、僕は気にすることなくベッドに横になった。
いずれは街への定住か、テレポートゲートでの移動を考えています。
食品の名前を考えるのが大変…
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