第13話 ペンキ塗りと意外な売れ行き
端午の節句投稿です
商業ギルドで薬を買い取ってもらい、
八百屋のおばさんに挨拶をし、
入都税の払い戻しをしてもらった後、
森の中の滝の前にある広場に帰った。
街中に住むのはなんとなく怖いのと、距離的にも丁度いいので、森の途中で休んでいるときに決めたのだ。
薬の調合をしているときに何かあった場合、被害を出さないためにもその方がいいと判断したからだ。
まあ、宿賃もバカにならないし、土地を買うとなると高いし、城壁の近くだと不審に思われるから、森の中はベストチョイスだとおもう。
そうと決まれば、この滝の回りを家の敷地にするべく、柵を作ることにした。
まずは必要な工具や、杭と板などの材料を購入した。
そしてその杭や板に、茶色と緑が混ざったような色のペンキを綺麗に塗り始めたのだが、それを全部塗り終ったぐらいで、ポーションを納める期日が迫ってきたので、慌ててポーション製作を始める。
こちらは慣れたものなので、規定数を1日でしあげることができた。
ペンキ塗りに時間がかかったのは、何日か雨が降って、外で作業が出来なかったのが原因だろう。
商業ギルドにポーションを納めるのは10日=1週間ごとにきめた。
商業ギルド側には期日は言っていないが、この期日は自分で決めたことなので、きちんと守りたい。
そして納品日の朝。
リュックに必要な物を入れ、街道の近くの森の端に飛んでいった。
地上に降りてから、角と羽根と尻尾をしまい、フード付きのマントにリュックというスタイルをし、街道を使って、街にむかった。
森に近かったこの街は『メセ』といい、リーフェン王国の辺境都市で、王都の西にあり、陸路交易の玄関口なのだそうだ。
この辺りは八百屋のおばさんに教えてもらった。
商人や旅人と一緒に入都への順番を待ち、15分程して僕の番になった。
「おはようございます」
「この前のお嬢さんじゃないか。また何かしら仕入れてきたのかい?」
「はい。お陰さまで」
対応してくれたのは、以前にもお世話になった上司な警備兵の人だった。
「じゃあ、身分証を確認させてもらおう」
言われたとおりに、商業ギルドの身分証をみせる。
「確かに。前にいったとおり、入都税は無料だ」
「ありがとうございます」
警備兵の人からギルドカードを受け取り、街の中に入る。
街中は、街の人はもちろん、馬車や荷車。荷馬を連れた人に、自分と同じようなスタイルの行商人や荷運び。警備兵や冒険者など、まさにファンタジーな町並みだった。
前回は、不安で余裕がなかったが、今回は落ち着いて街並みを見ることができる。
お昼前の時間なためか、食べ物の屋台なんかも仕込みに忙しそうだ。
あのおばさんの所ではない八百屋に、魔物の肉を売ってる肉屋や、魚の干物・酒・塩などの調味料や香辛料、布や小物に工芸品。薬を売っている店もあった。
途中にあった教会や役所の建物は美術の本で見たような荘厳なものだった。
役所には図書館も併設されているらしいから、あとでいってみようと思った。
色々と目移りしてしまうが、まずは商業ギルドに向かうことにした。
商業ギルドに入ると、前回より人が多くて混雑していた。
僕は以前御世話になった人を探し、その人の受付の列に並んだ。
暫く並んだのち、僕の番になった。
「いらっしゃいませ。商業ギルドへようこそ♪お久し振りです」
向こうも僕を覚えてくれていたらしい。
「こんにちは。また、買い取りを御願いします」
「では、ギルドカードの提出をお願いします」
僕がカードを出すと、色々とチェックをし、
「はい。結構です。本日は商談室が込み合っておりますので、此方の番号札でお呼び致しますまで、少々お待ちください」
番号の書かれた木札と共に返してくれた。
僕は待ち時間の間、掲示板に張ってある情報を眺めて見ることにした。
そこには、
街道の治安状況
世界情勢
最近の売れ筋商品
品物の価格変動
売りたい商品
買い取り希望
趣味のサークルのお知らせ
花嫁花婿募集など、様々な情報が溢れていた。
そしてそれを眺めているうちに、僕の番がやって来た。
3番の商談室に通されると、そこには無駄にエロい雰囲気の女性がいた。
とはいえ、まずは挨拶だろう。
「はじめまして。ヤムと申します」
「はじめまして。私が買い取り担当部長のアイーダよ。よろしくね♪さ、座って」
僕が丁寧に頭をさげると、にっこり微笑みつつ、僕にソファーに座るように促してきた。
「さて。貴女の事はリガルトから聞いてるわ。さっそく買い取って欲しいものを見せて頂戴」
「はい」
前回同様に全部の品をならべていく。
アイーダさんは並べられたポーションを、なんとなく艶っぽい仕草をしながら鑑定していく。
「なるほどなるほど…確かに見事なポーションね。数も品質も前回とおんなじ。買い取り額も前回とおんなじで50万クラムでいいかしら?」
「はい。ありがとうございます」
不満はないので、素直に買い取ってもらう。
「こっちとしてもありがたいわ。5日くらい前から、高品質のポーションはまだか!ってせっつかれてたのよ」
アイーダさんは、ポーションを眺めながら、ほっとした表情を浮かべた。
「そんなに売れたんですか?」
あんな感じのとはいえ、薬師ギルドまであるのだから、わりと出回っているだろうと考えていたのだが、僕の言葉を聞いて、アイーダさんはため息をつき、
「いい?高品質のポーションというのは、腕の良い薬師でも30本に1本出来ればいい方なの。
それがこれだけの数揃ってるなんてかなり珍しいの。
さらにハイポーションやマジックポーションやハイマジックポーションまで高品質と来れば、売れない訳はないの。
貴女、自分がかなり別格だというのをちゃんと理解してるの?
していないなら今すぐしなさい!」
息継ぎも無しで一気に説明とお説教を畳み掛けてきた。
アイーダさんは、またため息をつくと、
「貴女はなんか危なっかしいし、早いうちに護衛を雇うことをおすすめするわ。戦闘の出来る奴隷でも良いわね」
そう、アドバイスをくれた。
僕を思ってのことのはありがたいが、僕は護衛はもちろん奴隷など買う気は全くなかった。
護衛は、どうしても色々知ってしまうだろうし、場合によっては護衛が一番危ない事もある。
勿論、魔眼でなんとかすることはできるだろうが。
奴隷は、情報や身の安全はあるが、どうしても忌避してしまうのだ。
なにより、何かあった時に、僕一人なら逃げやすい。
僕は商業ギルドをでると、ポーションの評価や護衛や奴隷のことなど、様々な事を考えながら歩いているうちに、いつの間にか図書館にやってきていた。
和菓子のお店で、こし餡とつぶ餡の二種類の柏餅を買ったら、両方共つぶ餡だったミステリー。
店員め間違えたな
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