第104話 罪は、現世では隠蔽出来ても、冥府では隠蔽は出来ない
本当にお待たせいたしました
『ウェイアス・カルタス・フォン・イルガルク。貴様の発言に、我等が長たるパウディルが我慢の限界でな。生きながら冥府に招待することになった』
モルテス様は、ウェイアスを睨み付けながら淡々と説明を始めた。
「お…お前はモルテスか?なぜ神の王たるこの私にこんなまねをする!」
ウェイアスは、モルテス様相手でも、尊大な口調を変えない。
どれだけ事態が分かってないのだろう。
そのウェイアスに対しても、モルテス様は表情を変えずに言葉をつづけた。
『まず。貴様が神パウディルと思っていたのは、神パウディルのふりをした、にてもにつかぬ下級の邪神だ。現在神界の総力をもって捜索中だ』
「下らない嘘をつくな!」
『そもそも、神の頂点たるパウディルより高き神がこの世界に居るわけはないし、よしんば選ぶとしても、貴様のような大罪人が選ばれる訳がない』
「私は大罪など犯していない!」
冷静に言葉を紡ぐモルテス様に、ウェイアスはことごとく噛みついていく。
しかし、次に発せられた言葉に、ウェイアスだけではなく、その場にいたパウディル聖教関係者全員が驚いた。
『ケルティッシュ歴3784年・落葉の月・2週の雲の日。ベルント王国ズックス村の住人、成人122名・未成年25名・乳幼児2名の計149名全員を殺害。教会には邪神崇拝の村として報告した。自分に差し出された食糧がみすぼらしく、金も自分からみればはした金であったこと。さらには見目のよかった娘が自分への奉仕を嫌がったことに激怒しての所業だ』
「嘘だ!出鱈目だ!」
ウェイアスは焦った表情を浮かべ、大声で否定する。
それを聞いて、より驚いたのはその場にいた枢機卿の人達だった。
「邪教の村の壊滅は、あの男の出世の一番の功績だぞ?ねつ造だったということか?」
「罪もない村人を虐殺して手柄にしたのか!」
「どうりで都合良く邪教の村など見つかるはずだ!」
「まさかそれ以外にも同じことを?!」
ウェイアスの功績を思いだし、怪しみ始めていた。
「奴らは邪神の使徒だった!それは間違いない!」
不味いと思ったのか、ウェイアスは否定する。
『私の眼前で、亡者は嘘はつけない。私からみれば、お前こそが邪神の使徒なのだがな』
しかし、冥府の神であるモルテス様の証言に敵う筈はなかった。
そして、今までその光景を見ていたラシャナさんは、ウェイアスを睨み付けていた。
事実が発覚するまでは、この人物を少しでも信頼していたのだろう。
その表情は実に悔しそうだった。
『問答は終いだ。宣言通り、貴様を生きながら冥府に招待することにしよう。後の者はお前達で裁くがいい』
モルテス様は、これ以上話すことは無いとばかりに、ウェイアスとともにゆっくりと陰に沈んでいく。
その途中でラシャナさんに視線をむけ、
『それから、ラグウス・バリュヌスは、迷うことなく冥府にたどり着いた。迷惑をかけてすまない。とのことだ』
「ありがとうございます…」
法王猊下の伝言を伝えてくれた。
そんなやり取りをしているあいだも、ウェイアスはみっともなく喚き散らかしていた。
「止めろ!私はパウディルの夫だ!神々のおさと」
そして、とぷんという乾いたような音とともに、この世から消え去っていった。
「あれが死の神モルテス…」
「なぜ最後に私を見つめたのだ?!」
「俺はウェイアスに命令されただけなんだ!」
「私はなぜウェイアスに懸想してしまったんだ…!」
モルテス様が居なくなった後、僕とラシャナさんとテウゴク枢機卿以外の人達は、全員が、放心状態だったり、恐慌状態に陥っていた。
でもこれでようやく、ラシャナさんのおじいさんのお葬式が行えるようになった。
主人公が背景化…
次はなんとか脱却を…
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