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第96話 つよいひと

寒くて手にあかぎれができました。

痛い痛い

テウゴク枢機卿に、手持ちの薬やポーションを販売することを約束してから、ラシャナさんの部屋にむかったところ、そこにラシャナさんは居なかった。

たまたま通り掛かった修道女(シスター)さんに尋ねたところ、中庭で見かけたとの事なので、いってみる事にした。


中庭には、木々やベンチや噴水があり、法王猊下が亡くなったとは思えない、静かな空気が流れていた。

その噴水近くのベンチにラシャナさんはいた。

「ここにいたんですか」

声をかけた僕の姿に気がつくと、立ち上がって頭を下げてきた。

「申し訳ありません。こんなことにまきこんでしまって…」

「ラシャナさんこそ、おじいさんが、亡くなったばかりなのに大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫ですよ。葬儀の準備や遺品の整理。次期法王猊下への贈り渡ししなければならない事もありますから」

ラシャナさんは気丈そうに答えたが、とてもそうは見えない。

それに、そう言うことは法王猊下の子供、つまりはラシャナさんのご両親がすることだと思い、

「そういえばご両親は?」

と、尋ねた。

しかしよく考えれば、もしかしたらご両親が亡くなっている場合だってあるのに、デリカシーのない質問だった。

「父と母は、私の所属している団とは違う巡教団を率いています。戻ってくるのは、大きな都市に行って連絡が着いてからになりますね」

幸い亡くなったりはしていなかったが、離ればなれ状態というのは、電話も高速な移動手段もないこの世界(ルタース)では、なかなか辛いはずだ。

「お祖父様の魂は冥界神モルテス様のお導きで、無事に冥界に向かうとおもいます。大丈夫。お祖父様も異世界転生して楽しく過ごしますよ。これって、一度死んで実際に異世界転生した私達が言うと信憑性高いですよね♪」

ラシャナさんはおどけたように明るくそう話すが、指先が震えている。

僕と違って、前世でもこっちでも、家族に愛された彼女にとって、大好きなおじいさんが亡くなったのはショックなはず。

それでもすぐに、後の事を考えて気丈に、迅速に振る舞わないといけない。

僕なんかと違って本当に強い人だ。

少なくともこの人は、信用してもいいのだろう。

前世(ちきゅう)の人で初めて、信用できる人なのかもしれない。

ここで、気の利いた人なら抱き締めたりするのだろうけれど、僕にはそんな勇気はない。

なので僕は、法王猊下の葬儀が終わるまではここにいることに決めた。

こんな僕でも、居ないよりはマシかもしれないから。

主人公が地球・日本の人間で、初めて信頼した人になります



ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


このSFの短編の連載のために準備中

よろしければどうぞ

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