第91話 告白
少し短めです
テウコグ枢機卿達と別れた後、僕とラシャナさんは真っ直ぐ大聖堂に戻った。
ラシャナさんの自室へもどる間、僕もラシャナさんも一言も会話をすることがなかった。
ラシャナさんにとっては、あのテウゴク枢機卿に言われた事がショックだったのかもしれない。
そして、ラシャナさんの部屋に戻ったところで、ようやくラシャナさんが声をかけてきた。
「申し訳ありません。せっかく楽しんでいただこうと思ったのに…」
「あれはラシャナさんの責任じゃありませんよ」
そう会話を交わすと、ラシャナさんは神妙な面持ちで僕の手を掴み、
「パウディル様は『祝福は人間のみに与えられる。それ以外の種族は下等である』などとは絶対におっしゃっていません!信じて下さい!」
と、訴えかけてきた。
その様子はとても真剣で、嘘をついたり、なにかをごまかしているようにも見えなかった。
なので僕も、自分の気持ちを正直に話すことにした。
「正直…、この国にいるパウディル聖教の人達は、誰も信用できません。あの女騎士はもちろん。騎士団長さんも、法王猊下も、あの枢機卿も」
そして貴女も。と、続けようとしたけれど、それは何となく飲み込んでしまった。
その僕の言葉を聞き、ラシャナさんは暗い顔をする。
自分の信じていたもの・人達を否定されたのだから当然だ。
「仕方ありませんよね…。人質を取られた上に拘束され、教会の関係者が人間至上主義をとなえていたりしたんですから…。でも!神パウディルは信用してください!あの方は本当にそんなことはおっしゃっていません!」
たぶんラシャナさんは信用できると思う。
でも、警戒しないわけにはいかない。
しかし、今の彼女の言葉が気になった。
「なんだか神様をしっているような感じですね」
僕がそう質問すると、ラシャナさんは驚愕の表情を浮かべた。
そしてなにやら考えこんだ後、
「…わかりました。ではお話しします」
なにやら決意をした顔を向けてきた。
「実は私は、別の世界で一度死亡し、この世界に再び生を受けた転生者というものなんです!」
その告白を聞き、僕は言葉を失った。
過去にこちらの世界にやってきた勇者の話は聞いていたが、まさか僕と同じ立場の人がいるとは思わなかった。
「私の前世の名前は大地恵。栄閃高校に通う女子高生でした」
僕は、栄閃高校という名前を聞いた瞬間、嫌な記憶が蘇った。
ラシャナはそれなりに信用していますが、同じ組織内の人間なので、一線は引いている感じです。
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