第89話 直視した事実と意外な人物
誤字報告が多いのに自分であきれぎみ…
ラシャナさんと一緒に音のする方に向かったところ、犬獣人の露店商が、修道士の青年を怒鳴りつけていた。
「なにするんだいきなり!」
「汚ならしい獣人風情が店を出すなんて生意気なんだよ!」
「なんだと?ここで商売をすることは、きちんと許可をもらってるんだぞ!」
「うるさい!獣人風情が!」
怒鳴りあいの一部を聞いただけでも、露店商の方が正しいのは間違いないだろう。
それは修道士の青年も理解しているのか、ばつの悪そうな顔をしながら、手を前に差し出した。
魔法を使うつもりなのだろうと思った瞬間、
「何事ですか?!」
ラシャナさんが2人の間に入り、声をかけた。
「「聖女様!」」
2人は動きを止め、すぐに片膝をついた。
するとすぐに、修道士の青年がラシャナさんに声をかけてきた。
「おお!聖女ラシャナ様!私は汚らわしい獣人をこの神都から排除すべく、正しい行いをしていたのです!」
そう言いきった青年は、ラシャナさんの眼が冷たくなっているのに気が付いていなかった。
「何故獣人を排除しなければならないのですか?」
そうラシャナさんが尋ねると青年は、
「神パウディルは人間にのみ祝福をお与え下さったのです!それはひとえに、人間以外のものは全て下等だと言う証明なのです!」
と、自信に満ち溢れた表情でそう答えた。
これだけが唯一無二の正解ですよと言わんばかりに。
その彼に、ラシャナさんは静かな口調で質問した。
「では貴方は、神パウディルにそれを直接尋ねることができたのですか?」
「は?」
その質問に、青年はあんぐりと口を開け、固まってしまった。
ラシャナさんはさらに言葉を続ける。
「神パウディルと直接話をして、そうやって質問し、神パウディルが『その通りだと』おっしゃったのかと聞いているんです」
「いえ…それは…」
青年は、ようやくラシャナさんの雰囲気に気が付いたのか、焦りの表情を見せた。
「つまり。それは貴方の勝手な発言と言うことですね?神パウディルの教えである『平和に生きようとする全ての者達に祝福を与える』と言うのは、開祖であるアーノントゥが神パウディルから直接頂いたお言葉です。貴方のその『人間にのみ祝福をお与え下さった』というのは、神パウディルからのお言葉ではないということですよね?となると、貴方は神の言葉を騙ったということになりますね?」
ラシャナさんは、表情を全く変えることなく、青年の主張がまったくのデタラメだといいはなった。
すると、青年は身体を震えさせ、
「うっ…うるさいうるさいうるさいっ!俺は選ばれた存在なんだ!耳長や岩チビや動物や魔族なんかよりも優れた存在なんだ!」
あろうことか、懐からナイフを取り出し、ラシャナさんに襲いかかった。
僕が『麻痺』を掛けようとした直前に、横からでてきた杖が、青年の腕を叩き、ナイフを手放させた。
「なんとも不信心な。神の言葉を捏造するとは」
その杖の持ち主は、さっきあったばかりのテウコグ枢機卿だった。
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どうしても変えたくない部分はともかく、極力改善していくつもりです。
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