第84話 聖女様の正体
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「大丈夫ですか?!」
聖女様の声とともに、猿ぐつわ・目隠し・首の縄・手枷がはずされる。
すると目の前にいたのは、以前メセの町にきていた、巡教団の一員だったラーナさんだった。
「あ、ラーナさん!?ありがとうございます!」
僕は思わずラーナさんの手をとってしまった。
一瞬どうしてここに居るのかと思ってしまったが、パウディル聖教の人なのだから、居てもおかしくはない。
多分、聖女様の付き添いをしていたのだろう。
そして、どうやら茶番ではなかったらしい聖女様にも、お礼を言わないといけない。
まあ、見返りが欲しいだけなのかも知れないけど。
しかしそこにいたのはラーナさん1人。
聖女様の姿はなかった。
「あの、ラーナさん。聖女様は何処に言ったんですか?」
僕がそう質問すると、ラーナさんは申し訳なさそうに横を向いてしまった。
「その方が、聖女ラシャナ・バリュヌス様です」
僕の質問に、横にいたイケメンな人が答えた。
この人が騎士団長だろう。
え?今この人なんていった?
すると、ラーナさんが僕から少し離れて両手を組んだ。
「私はラシャナ・バリュヌス。現法王、ラグウス・バリュヌスの孫であり、パウディル聖教の権限において、聖女の称号を授かったものです」
ラーナさんが嘘を言ってるようには見えない
だとすると、メセの街に来ていたのは、正体を隠して親切にするという、人気取りのためだったのだろうか?
そんなことを考えて口ごもっていると、騎士団長さんが事情を話してきた。
「ラシャナ様が参加していた巡教団は、布教・救済を目的にしていますが、同時に各地の教会や聖堂の監査も兼ねています。そのため、ラシャナ様のお立場では警戒されてしまいます。そのため、偽名を使い、修道女のお立場に扮していたのです。貴女のことは、その報告を受けた時にうかがいました。
あっ!申し遅れました。私は、パウディル聖教大司教兼教会騎士団団長を勤めます、ウェイアス・カルタス・フォン・イルガルクと申します」
「そういうことでしたか」
なるほど。査察というならわからなくはない。
おそらくその街の教会の人間が階級を持ち出してきたら、彼女が正体を明かして懲らしめるということをしていたのだろう。
それは解った。
では次は、
「何故、私をこのパウディル神聖国に呼び寄せたんでしょうか?」
それも、ああいう行動をとる部下をチョイスして。
「まず、知らなかったとはいえ、あのような背教者を向かわせてしまったことを深くお詫びします」
騎士団長さんは深々と頭をさげる。
「実は、貴女の製薬と治癒魔法の実力に目をつけた拝金主義者の枢機卿や大司教が、貴女を囲って金儲けの道具として、失礼。いわゆる情婦として、こちらへ連れてこようとしていたらしく、それを阻止するためにお連れしようとしたのです。法王猊下や聖女様の庇護下であるなら安全は約束されると考えまして」
たしかにそうかも知れないが、余計に危ない気がする。
たしかに法王猊下や聖女様がいるとしても、手近にいることは間違いないのだから。
つまりは水戸黄門的なことをしていたわけです
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