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第83話 哀れな恋する女

ちょっと多めです。

ガチャガチャという、おそらく鎧の音は複数聞こえてくるので、女騎士の同僚か上司かが人数を引き連れているのだろうと推測できた。

「これはラシャナ様。いったいどうしたのですか?」

「実は…」

声をかけてきた男性、おそらく責任者であろう人が、聖女に話を聞こうと声をかけ、聖女が説明をしようとした矢先に、

「ウェイアス様!マリア・テレジア・フォン・ケルビレアーナ。使命を果たし、帰還いたしました♪」

女騎士が聖女の発言を遮り、いままでの不機嫌そうな口調ではなく、おそらく満面の笑みを浮かべ、うきうきした声で、自分が命令を全うした事を報告した。

明らかに、この女騎士は上司に対して好意をもっているようだ。

その女騎士=マリアの行為に上司=ウェイアス様は声を荒げることなく、

「そうか、ご苦労だったな。しかし、なぜこんなところで聖女ラシャナ様と口論などしていたのだ?」

聖女と口論をしていた理由をたずねた。

するとこんどは、少しだけなよなよしげになりつつもしっかりと、

「ラシャナ様が間違ったことをおっしゃっているからです!」

と、主張した。

「というと?」

上司は変わらず、冷静に説明をもとめた。

「神パウディルの恩恵は人間だけに与えられたもの!それなのに、この連行してきた下等な淫魔の拘束を解けと言うんです!この者は下等な淫魔なのですよ?それを神都に入れるならばそれ相応の処置をするのが当たり前です!」

「では、いまその拘束されているのが、リーフェン王国地方都市メセに在住する、薬師ヤムということか?」

上司は、女騎士の説明から、目隠し・猿ぐつわ・手枷・首に縄をかけられている僕が何者なのかを推測したらしい。

すると女騎士は、嬉しそうに、そして興奮した様子で、僕を捕まえてきた経緯を説明し始めた。

今さらなのだけれど、聖女というのは教会でもかなり偉い人になるはずだ。

その人の発言を遮ったり、ほったらかしで話し込んだりしていて良いものなのだろうか?

「はい!この下等な淫魔に逃げられぬように、現地の子供を盾にし、街ごと背教者と認定するといったら大人しくなりました。あのように、岩小人や耳長や動物や魔族を容認するような国など、すでに背教国認定されているというのに…愚かなことです。1日でも早くリーフェン王国に対して『聖伐』を実行していただくべく法王猊下に御進言を」パァァァン!

女騎士が気持ちよく話していた最中、不意に肉を打つ音が響いた。

「ウ…ウェイアス様!なんで…っ!?」

女騎士は酷く狼狽した声で、上司に問いかけていた。

「確かに私は、彼女をなんとしても神都に連れてきてくれといった。が、私はきちんと説得して来てもらえるようにと命令を下したはずだ。なのになぜ!彼女をそのように拘束している!」

どうやら僕を捕まえてくるよう、女騎士に直接命令したのはこの上司らしい。

そしてその上司は、相当に激怒した口調で、女騎士を怒鳴り付け始める。

「しかも!子供や街の人間を人質にして脅しただと?神パウディルは、人間・エルフ・ドワーフ・獣人・魔族・それ以外の平和に生きようとする全ての者に祝福を与えて下さっている!それを傲慢にも、人間こそが神パウディルの恩恵をうける唯一の存在だなどとうそぶく、人間至上主義を堂々と掲げてくるとはな。最近、修道士・修道女見習いである子供達のなかにも、人間至上主義を(のたま)い始めている者がいるのは、お前が広めていた者の一味だったということか!」

上司は本気で怒っているらしいことが、声の様子でなんとなく分かる。

「そんな!ウェイアス様ならご理解いただけるはずです!神パウディルは人間にだけ祝福を与えているんです!」

女騎士は、その上司の剣幕に怯えつつも、必死で自分の主張が正しいのだと訴える。

上司の様子からは、当然受け入れてもらえる筈はなく、

「悪いが、そんな子供の戯れ言以下の妄言など聞く耳をもたん。マリア・テレジア・フォン・ケルビレアーナとその部下は背教者の疑いがある。矯正室につれていけ!」

「「「「はっ!」」」」

「そんな!ウェイアス様!ウェイアス様っ!私の話を聞いてください!ウェイアス様!」

ガチャガチャという音が響き、上司とその部下の手により、女騎士とその部下が拘束されたらしい。


ちなみにこの会話の間、僕も聖女もほったらかしにされていた。

宗教と警察は、末端はまともなのが多く、で中央にいくほど腐っているのはお約束ですかね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 人間は他の種族より弱いから加護を与えられやすいと予想。女神の優しさが原因で付け上がる輩がいる。 過度の差別を行うのなら加護の剥奪とかもありそうですね。
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