第82話 聞かされる茶番劇
まだまだ暑くて大変です。
9/17 不足部分を追加しました
目隠ししていてもわかるほどの光が収まると、空気が変わったのがわかった。
風が止まり、土だった地面が石の床らしきものに変わったからだ。
その事を確認していると、不意に首を引っ張られた。
「ついてこい」
どうやら首に縄をかけられたらしい。
この人達なら『隷属の首輪』くらい平気で使いそうなものだけれど、感触からして普通の縄のようだ。
以前に10日以上身に付けていた身としては、その感触を間違えたりはしない。
それに、ここが本当にパウディル聖教の総本山だった場合、何かしら都合が悪くなるために使用していないのかもしれない。
扉が開く音がし、そのまま歩かされ続ける。
するとそこに、別の人間の声が聞こえてきた。
「なにをしているんですか?」
それは、咎めるような女性の声だった。
「これは聖女ラシャナ様。教会騎士団長のウェイアス様の命でこの淫魔を神都に連行してきたところです」
どうやら相手は相当に偉い人らしい。
「連行?彼女はいったいなにをしたのですか?」
「淫魔なのですからこれぐらいの拘束は当然です。むしろこのような下等な淫魔風情が神都に入れただけでも、身に余る光栄に自らの存在を恥じて自害するべきです」
なんとも理不尽で酷い話だが、この女騎士はそれを本気で言っている。
そして、最初は咎めるような事をいっていた聖女も、女騎士の説明を聞いてからは、その言葉に賛同する。
最初に咎めるのは、聖女の好感度のための、定番のやり取りなのだろう。
それにしても、今の聖女の声は何処かで聞き覚えがあるような気がする。
多分、人心掌握のために、そういう風に感じとれるようにする魔道具でも、使っているのだろう。
「ともかく、彼女になにも罪が無いのなら、いますぐ拘束を解きなさい!」
聖女は声を荒げ、女騎士に抗議をし始めた。
「とんでもない!そんなことをすれば、神パウディルが激怒し、罰を受けてしまいます!」
女騎士も声を荒げ、聖女に反論をする。
「罰を受けるのは貴女よ。ケルビレアーナ司祭!パウディル聖教の総本山であるパウディル神聖国で、人類至上主義なんてものを広めるなんて、神パウディルの教えに反しています!」
「お言葉ですがラシャナ様。人間こそが神パウディルの恩恵をうける唯一の存在なのです!それ以外の人の形をした生物は、人間の奴隷や家畜として存在するべきです!」
ずいぶんと白熱しているようだけれど、聞いている僕からすれば茶番なことこの上ない。
前世で兄の立場にいた人物は、人前とそうでない時で、これぐらいの発言の落差は当たり前だった。
この人達はいつまで茶番をやるつもりなのだろう?
するとそこに、
「なにを騒いでいる!」
男性の声と、ガチャガチャという音が響いてきた。
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