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鍵開けのベアトリス  作者: 瑞野
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~金の腕~Case:7




Sクラス生に協力を仰ぐ前に、まずはどうやって第7研究所の地下に行くかを考えることにした。


図書室の許可証を貰ったことで、第7研究所について、色々とわかった。

桜ちゃんの言っていたように、第7研究所には地下がない。

それどころか、地下に通っている管だとか水路がある。

無いというよりは、別のものがあって物理的にありえない。


次に、見えない部屋がある、という場合の可能性と、それを調べる方法を探す。

魔法を見たことがない以上、ただの空想でしかないが…。


「あれ?ベアトリスちゃん?」


少し長い茶髪のクラスメイト、十六夜君だ。

会釈をしつつ、第一魔法の記憶を辿る。

十六夜君は、光魔法だ。

辺りを光に包んだり、あるいは光を奪ったり。

明かりを作ったり。

そういう魔法らしい。


「Sクラス専用図書室、良いよねえ。サイバー!って感じ。」


ここはSクラス専用の図書室で、許可証が無いと警備員に阻まれる。

その上結界により鍵が閉まっているように見えるため、魔術師以外は入れない。

私も結界に阻まれてしまうため、特殊な指輪により、私だけ結界を通過できるようにしてもらっている。

けれど、非常に驚いた。

「まさか電子図書館だとは思いませんでした。」

電子と言っても魔法によるものではあるけれど。

図書室の中にあったのは、回路のような青い線。

何本もあり、線で図書室のような見た目を作っている。

線でできた棚や本はあるけれど、もちろん線の本に触れてもセンサーに触れたときのようになるだけ。

本を見るには、図書室内に空中に浮いている青い線のディスプレイをPCのように使う。

携帯端末の画面だけを空中に写しているような、そんな感じだ。


「でしょう?ロマンだよ、ロマン。…ああ、ごめん。妨害しちゃったね?」

十六夜さんは、どうやら桜ちゃんの様子を窺っていたんだろう。

つまり、協力に来てくれたのかもしれない。

「十六夜さん、ーー第7研究所の地下に、行きたいんです。」

怪訝そうな顔をされる。

Sクラス生にとっては、第7研究所の地下設備は常識なのだろう。

物理的には不可能だと、理解している。

すごいなあ。


「んー、いや。例え話なのかな?行けそうにない場所に行きたい、的な?」


私は頷く。

だいたい同じ事だ。

魔術師にとっての常套手段が知りたい。



「そうだねえ。地下というのは、地下という見た目の話なのか、座標の話なのかにもよるね。後者ならただワープすれば良い。」


確かにそうだ。

しかし、第7研究所の地下には水路や配管が通っている。

座標の話ではないような気がする。


「うん、第7研究所の地下座標に行くのは、泥まみれになるのがオチだろうね。前者のパターンになると…概念に紐付けられた縁を辿るか、あるいは全く別の可能性…例えば別の場所にあるんじゃないかを疑うかな。」

別の場所にあるんじゃないか、は確かに1番自然だと思う。

物理的に不可能な場所なのだし。

けれど…。

「情報をくれた方は大魔導師クラスの方だと…その方が第7研究所の地下、とおっしゃったのです。」

グラメスさんは確かに、第7研究所と言っていた。

彼が違う場所と気づかないとは思えないし、一条博士は彼を丁重にもてなしたわけで。

危険な研究内容を話すくらいに警戒していなかったなら、場所に嘘をつくとも思えない。

「だ、大魔導師クラス!?…なら縁を辿るしかないね。」


縁とは、一条博士かグラメスさんのことだろうか。


「けど、結構方法はあるよ。例えば、グラメスさんの記憶を閲覧して、地下へ移動した情報を奪う、とか。」


黒江さんならできそうだけど、グラメスさんが邪教徒に捕らえられても情報を吐かなかったのは、一条により黒江さんの呪いのようなものが予めされていたから、という可能性もある。



「その、他にはありますか。」


「たくさんあるよ。例えば死霊系の魔術師を呼んで一条の魂に語らせるとか。あとは地脈の声を聞いたり、地縛霊的な存在の声を聞くことのできる魔術師に調べさせるとかね。風や妖精に聞ける人も居るかな。」


なるほど。

そうなると、該当の魔術師がいるかどうか、になってくる。



「睡君や会長なら、行けると思うよ。ま、あの会長がやってくれるとは思えないけど。」


黒江さんの第一魔法の情報を見ると、生物や物に限らず干渉できるとある。

ちょっとしたチートだ。

そしてやってくれそうにないというのも、確かに…。

睡さんは、特徴はいつも寝ているとある。

第2魔法が非憑依魔法で、風や土地、もしくはその精霊の声を聞く力を持ってているらしい。


「睡さんは、手伝ってくれそうですか?」


飄々として軽い彼には珍しく、バツが悪そうな反応をする。


「…起きていれば、かな…」


反応から察するに、基本的に起きていないのかもしれない。

健康的に、大丈夫なのだろうか。


「なるほど…」


似たような能力の人を、記憶をたどってみる。

黒江さんの埋め込んだ記憶はすさまじく、まるで今聞いた単語のように、クラスメイトのどの人のこともわかる。

桜ちゃんと黒江さん、十六夜くんと睡さん以外にも、色々な人が居る。

桜ちゃんの幼馴染の金髪の白銀さん、青い髪に眼帯をしている威楯さん、黒い髪の女の子の杭都さん、熱血っぽい緑髪の星祇さん、大人しそうな黒髪の四野上さん、赤髪の女の子赤根さん、異国の少女な鈴々とそのお兄さん…と攻撃の魔法が並ぶ。

迷時さんと、鎖場さん、巴さん、総成さんは少しユニークなサポート系の魔法。

篝さんと貴乃下さんは、動物や生命と会話したりできるような魔法だ。


この中で言うと、やはり篝さんと貴乃下さんなら、可能性はあるかもしれない。


「あの、予想でよいのですが。篝さんと貴乃下さんの魔法の場合、どうでしょうか。」


十六夜さんは私が知っているのを少しだけ珍しそうにした後、考えるような動作をする。

気づけば結構長居してしまったらしく、チャイムが鳴っている。


「紫苑は動物がいたのなら可能かも。キーノは行けるかもね。アイツは陰陽師だから、口寄せとかもできるんじゃないかな。あ、口寄せなら宮川ちゃんもできないのかな?毎年巫女のバイトしてたし!」

桜ちゃん、お嬢様なのにバイトなんて、巫女に憧れとかあったり…?

それとも代々、縁があるとか。


「宮川家は四上院クラスのお金持ちだからな、そりゃ神社も土地も持ってんだろ。」


白銀さんだ。

桜ちゃんの幼馴染の不良さん。


「よく言うねー。お前だってお坊ちゃんだろ?龍」


見た目は一見怖そうではあるけれど、十六夜くんともフランクに接している。


「ま、それよりそろそろ図書館閉まるぜ。貴乃下なら軽音部にいるだろうけど…行くなら急ぐんだな。」


それだけ伝えると、足早に帰っていった。

結構良い人なのかもしれない。


もらった記憶にある貴乃下さんのお顔も、非常に心優しそうだ。

軽音部ということは、バンドとかも組んでいるんだろうか。

ロック好きな陰陽師…?













































































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