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鍵開けのベアトリス  作者: 瑞野
11/16

~金の腕~Case:11



理事長とロートルさんに部屋を任せ、他のSクラスで向かうこととなった。

理事長は11区までのワープのゲートを作って、状況が分かり次第連絡するように、と真面目に送り出した。



けれども、辿り着く頃には、それは終わっていた。




「人が居ない…。」


民家の人影もなく、声をあげてみても誰も現れない。

試しに鍵開けをしてみても、室内にも誰一人として見つからない。


黒江さんと桜ちゃんが、少し離れたところで会話している。

けれど様子を見るに、近くにも気配がないということだろう。


「社が危ない。ごめん、先に行くね」


猫の姿の篝くんが、駆け出す。

遠目に見える、大きな神社。

社神社、と書かれている。


「篝!」

貴乃下さんが大きな声で止める。

しかし、既に篝くんの姿は見えない。


「ここは何かが変だ。土地のざわつきが1つもない。霊的な気配が無さすぎる。」


言葉ともに、貴乃下さんも陰陽師としての姿に変化する。

警戒しているのだろう。

木々のざわめきもない、耳鳴りがしそうなほど静かな町。

ようやく社神社の石の鳥居の前に来ても、不穏さが拭えない。


「他のクロキアの眷属の方達が…、いらっしゃらないのですか?」


桜ちゃんが、驚いた表情で固まる。

ーー消えた?


「いない。どこにもいないよ。」


篝くんが、俯きながら痛々しい声で告げる。

一体、どういうことなのか。

彼の様子を見て、その場の誰もが気づいてしまった。


「ここに住んでいた眷属たちも、生贄にされた。おしまいだ。金の男は、もう不完全な形では、いつ起動してもおかしくない。」


ぽつり。

ぽつり。

ぽつりぽつり。


雨が降り始める。

いつの間にかザーザーと大きな音になっていく。

誰も声をかけることができず、沈黙が雨の音を強調する。


やがて、暗い空から白い布切れが降ってくる。

まるで雪のように、空からたくさん降ってくる。

ローブの切れ端か何かだ。

それぞれが思い当たるものかどうか、見る。

やがて、桜ちゃんが声を上げる。


「これは、条グループの傘下団体のマークですわ…!」


もしかして、7区を占領している方だろうか。

それとも、邪教の方だろうか。


「全員伏せろ!!」

黒江さんの焦った声が響く。

直後、グオオオオ…と上から嫌な音が鳴り始める。


咄嗟に反応できなかった私と篝くんは、黒江さんが魔法で地面に伏せさせる。

何が起きているのか。

尋ねようとして、音の方を見た直後、私は言葉を失った。



空が、闇に侵されていく。


上には黒しかない。

街を黒く塗りつぶしたような、異様な光景。


始まってしまった。

金の男が、不完全ながら目を覚ましてしまったのだ。








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