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第90話 魔技研編 『伝説の魔法少女ピュアマギカのティア登場』

「もう舞踏会は終わる頃かな」


 その人物はガランの外から学園の方を眺める。闇が包み込む夜空にも負けない光が地上を照らしている。きっとその中では人々が今も祭りに浮かれ賑わっているのだろう。そのことを想像しその人物は寂しそうだった。


「フローレア様も誰かと踊っているのかなあ」


 大切な人が幸せならそれでいい。

 そう思っているのに表情がぎこちない。

 そこにウサギのマスコットキャラにも似た人形がカバンから顔を出す。ふわふわした桃色の毛並みが気持ちよさそうだ。


「元気出して」


 ウサギの人形はその人物を気遣いポンポンと手を出してその人物を慰めようとする。人物はその心遣いをうれしく思い優しくその人形をなでる。

 

「ありがとう。キラリ」

「うきゅ~~、くすぐったいふわぁ」


 その人物は真面目な顔つきに戻り月明かりに向かって歩き出す。徐々にその姿があらわになっていく。

 滑らかな紺色の髪が後ろで束ねられ腰まで伸びている。美しい顔立ちとあいまって、まるで天より舞い降りた天女のようである。月明かりを受けてなお趣深い印象だ。

 これから起こる戦いに表情は引き締まり涼しげな夜の静寂が一層張り詰めていく。


「これから起こる悲劇を止めて”救世主経験値”を一気に稼ぐよ。そして、間もなく訪れる最初の悲劇の予言を超える。それにはフローレア様の真の魔法少女の覚醒が不可欠。悲劇は私がうち払う。たとえこの命がつきようとも」

「ティア~~」


 キラリと呼ばれたウサギは悲しそうに長い耳をたらす。

 その人物が向かう先には反魔五惨騎の内3体が揃っていた。シンリー、カノン、キリングである。

 人とは違う肌を持つ異形の存在。そして、人類の天敵として今も世界を脅かす。彼らはガランを遠くから眺めてそれぞれに邪悪な会話を繰り広げる。


「あはははは、ガランの人間たちのんきに浮かれちゃって。幸せそうにしていると腹がたつし」

「全くじゃん。だがだからこそ人間どもが絶望に染まったとき、極上の絶望が生まれる」

「俺はただひたすら人間を斬る切るキルゥーー」


 3体の反魔の力を合わせカノンに集中させた。するとカノンの腕が巨大な巨砲へと姿を変えていく。


「奴らも感知できない超長距離からの反魔砲撃で絶望のどん底に落としてやるじゃん。お前らの幸せ、俺が撃ち抜いてやんよ」

 

 砲身には長距離の減衰にも耐える超高密度の力が集まっていた。魔法とは違う禍々しい力が甲高い音を立てる。耳を塞ぎたくなるような不快な音はまるで人の街を破壊し尽くすことに対する狂喜の叫びのよう。


「さあさあ、さあさあさあ。楽しい虐殺の始まりじゃん!!」


 ついに奇襲の砲撃が放たれようというとき、鋭い雷の閃光が悪意の塊を貫き集まった反魔の力はその場で暴走。破壊の力は無秩序に解き放たれ大きな爆発となって広まった。

 大地を深く深くえぐり、闇より深い黒の輝きが周囲に余韻を残していく。


「ぐっ、誰だ。邪魔しやがったのは!?」


 カノンが怒り共に発した言葉は立ち上がる土煙をかき分けた先に向けられた。

 その先からゆっくりと1人の人物が姿を現す。

 見るからに()(れん)な少女のいでたち。桃色のウサギを抱きかかえながら少女の右手は雷の魔法で黄金色に発光していた。


「ガランに手を出さないで。あそこには戦争に明け暮れて塞ぎ込む人々がやっと手に入れた心からの笑顔がある。どうしてこんなひどいことをするのです」


 現れたのがたった1人の少女と知り、無魔の幹部たちは侮りが顔に表れた。


「なんだびっくりさせんなよ。てっきり魔法少女が現れたかと思ったじゃん。それにたった1人でのこのこやってくるとはな。随分舐められたもんじゃんよ」


 カノンが邪魔な巨大砲身となった腕を元に戻して邪悪な笑みを浮かべる。その顔にはどうやっていたぶってやろうか、と意志が見え隠れしていた。

 対してその人物は強大な力を持った無魔を相手にしても恐れた様子が見られない。むしろ、強い意志を抱いて対峙する。


「あなたたち無魔によって多くの命が奪われた。幸せが奪われた。笑顔が消えた。それがいま、変わろうとしている。この学園祭はそのために大切な日。それを壊そうとしないで」


 少女の言葉にシンリーがあざ笑う。

 

「あはははは、人間どもの幸せなんて(むし)()が走るし。なおさらぶち壊さないとだし」


 少女はうつむきがちだった顔を上げてシンリーたちをはっきりと睨む。その表情には怒りと悲しみと、人々を守るという強い決意が表れていた。


「そんなこと絶対にさせない!! いくよ、キラリ」

「うきゅ、わかったふわ」


 その後シンリーたちを(きょう)(がく)と戸惑いが襲う。その少女は彼らの予想をはるかに超える現象を引き起こすことになるのだ。




 フレアは気がつくと夢を見ていた。それも強制的に見せられる夢。レイと回っていた学園祭の最中、突然フレアの網膜に情報が入り込んできたことから始まる。


【神龍眼LV6になりました。

 神龍眼LV(レベル)6 警告の夢(解放条件:救世主経験値60万)、

 以上の能力に目覚めました】

 

『はあっ?』

 突然のことに(あっ)()にとられたフレアはこの後の続けざまの内容にますます混乱する。


【極めて(きっ)(きん)の悲劇が迫っています。緊急措置として強制催眠を執行します】


 それからフレアは対応する暇もなく突然その場で倒れることになる。目を閉じる前、泣きそうな顔で心配し抱き留めたレイの顔が脳裏に焼き付いた。

 そして、今に至る。


 

「許可もなく眠らせるとか困ったスキルに目覚めたようですね」


 それでも本気で怒っていないのは喫緊の悲劇という見過ごせない情報があるからだ。これから何を見せられるのかと思えば目にした映像にフレアは更なる困惑を浮かべる。


『レイスティアちゃん、お見舞いに来ましたよ』


 9歳のときのフレアがアルフォンス公爵家にいる親友を見舞いに来たときの記憶だった。もうずっと合っていないが手紙でのやりとりは続いている。(ひん)(ぱん)に手紙をやりとりし、誰にも明かせない秘密すら伝えるほどの間柄になっている。前世の記憶があることだってフレアは伝えてしまっていた。(こう)(とう)()(けい)な話であるのにレイスティアは決して馬鹿にせず信じて相談に乗ってくれている。

 これはそのレイスティアが不治の病に苦しんでいた頃の記憶だ。

 

『フローレア様、あまり頻繁にきては駄目ですよ。私は不治の病。人にうつるとも聞きます。……けほっ、ゴホッ……』


 苦しそうに()()むレイスティアを映像の中のフレアは警告を気にすることなく寄り添って背中をさすってあげる。


『大丈夫、今薬の開発を急がせています。私が必ずレイスティアちゃんの病を治してあげます。だから病がうつっても大丈夫』

『そんな、どんな名医も(さじ)を投げたのですよ。私もそう長くは生きられません。病の薬が間に合うとはとても……』

『間に合わせます。絶対に。だから希望を捨てないで。一番駄目なのは心にある希望の光を捨てないこと。諦めなければきっと良いことがありますよ』

『……ありがとうございます。フローレア様』


 その後フレアがレイスティアの口を人差し指で押さえると怒ったようにほほを膨らませた。その様子にレイスティアの顔色が沈み出す。


『あの、私、何か怒らせるようなことを?』

『いつまでもフローレア様は固いですね。フレアで良いですよ。あなたは公爵令嬢なのですよ。敬語もいりません』

『公爵……令嬢?』


 不思議そうに首をひねるレイスティアにフレアが尋ねる。


『どうかしましたか?』

『いえ、……何でもありません』


 そして、照れくさそうにレイスティアがフレアに声をかける。


『あ、あの、……フレア、ちゃん』

『なんですかティアちゃん』


 名前で呼び合う。それだけのことなのにどこかくすぐったくて2人は笑顔で笑い合う。

 そんな様子を見せられた今のフレアはなぜか胸が締め付けられる思いだった。少しずつ嫌な予感がフレアの胸に沸き上がってくるのだから落ち着かない。


「……何で警告の夢にティアちゃんが?」


 それも当然の疑問であり、公爵領にいるはずのレイスティアに何かあったのかと心配で仕方なくなる。

 場面が変わり徐々に症状が悪化するレイスティア。ある日、レイスティアはフレアと顔を合わせることが辛くなりこんなことを言ってしまう。


『フレアちゃん、もうお見舞いに来ないで』


 もう助からない。

 そう思ったレイスティアはこれ以上自分に感情移入して悲しまないようにフレアを遠ざけようとした。

 最初はフレアも驚いて引き下がった。それでも諦めたわけではない。

 新薬の研究を続ける合間にフレアは慣れない手芸を始めた。人にうつるからと部屋に1人閉じこもるレイスティアの寂しさを何とかしようと作り始めたのだ。

 抱きしめればふわふわの毛並みで可愛らしいウサギの人形である。だが気がつけば指に針を刺しすぎたせいで真っ白なはずのウサギが完成した頃には血であちらこちら汚れてしまっている。洗ってもとれないのだ。


『ふみゅー、これでは渡せませんね。ホラーです』


 そこで一計を案じて毛をピンクに染め上げることにした。ピンクであれば血の名残を隠し人を落ち着かせる効果もあるので一石二鳥だとの判断だ。

 フレアの手は傷だらけだがだからこその達成感。


『ほむ、こうしてみると悪くありませんね』

 

 頭には可愛らしいリボンと首元にはキラキラのブローチ。宇宙に輝く星々のように引き込まれるようなつぶらな瞳。フレアの会心の作であると自画自賛する。

 それを持ってレイスティアの部屋を訪れる。フレアはあえて眠っている内に枕元へ手紙と人形を置いて立ち去ろうとする。


『ティアちゃんは絶対に助けます。だから……ごほっ、けほっ』


 ほとんど睡眠を取らず新薬の開発とお見舞いの繰り返し。疲労から抵抗力が落ちていたフレアはレスティアの病がうつってしまったことに気がついた。


『しまった。これではティアちゃんに心配をかけて……』

 

 フレアはどうにか部屋を出て気づかれないうち出て行こうとしたがすぐに膝を突く。そのままめまいがして意識を失った。


 目を覚ませばフレアはレイスティアの隣にベッドが用意され眠らされていた。泣きはらしたように目元が荒れている様子を見ればとても心配をかけたのだと胸が痛んだ。


『ごめんなさい。私の病気をうつしてしまいました。私は両親だけでなくフレアちゃんにまで迷惑をかけて……』


 フレアの力ない手を握りレイスティアが後悔に俯く。更にこぼれ落ちていく涙を見る。フレアはずしんと重く痛む頭を我慢しその悲しみの滴をすくい取る。

 どうすれば悲しみを止めることができるのか。思いついたのはどうしようもない下手な慰め方だ。


『泣かないで。これでティアちゃんは1人じゃないよね』

『えっ!?』

『これで本当の意味で2人一緒に病気と戦えるよ。だから心細くないでしょ』


 精一杯の強がりで笑いかけ慰めようとしたフレアだがレイスティアは一層涙をあふれさせてフレアに泣きついた。


『ばかっ、ばかだよ。フレアちゃん。そんなの笑えないよ~~』

『すみません』


 フレアの言葉は逆効果だったようである。慰めるというのは難しいのだと実感したフレアであった。レイスティアはごめんなさいと()(えつ)混じりの言葉を繰り返し泣き止む気配がない。

 困り果てたフレアが他に何かないものかと考えを巡らせている内にレイスティアの隣に置かれているウサギの人形が目に入った。


『人形を作ったのですがどうですか?』

『……』

『プレゼント、もしかして迷惑でしたか?』


 レイスティアは言葉にならずフレアの胸を顔を埋めたまま首だけを振る。その後、ゆっくりと顔を上げるとボロボロと大粒の涙をこぼしたまま叫ぶ。


『迷惑なはずない。嬉しいに決まってるよ。でも……だからこそ、辛いよ。迷惑かけてちゃった。フレアちゃんが私のせいで死んだら耐えられないよおーー』


 少しして落ち着いてきたレイスティアはフレアに尋ねた。

 

『フレアちゃんはどうしてここまでして私を助けようとしてくれるのですか?』

『友達だから』

『え、たったそれだけの理由で?』

『それだけ、ではありません。十分な理由です』


 信じられない、と首を振るレイスティアにフレアは本音もぼそっとこぼした。


『……あと、ティアちゃんが将来魔法少女になってくれたらなお最高です』


 レイスティアは後半の理由が大きかったのだろうと予想する。このときには魔法少女バカの片りんは感じていた。


『フレアちゃんは魔法少女が好きなの?』

『好き? 冗談ではありませんよ』

『あ、ごめんなさい。好きじゃないんだね』

『いいえ、超ーー大好きです。むしろ私にとって命をかける命題ですね』


 それはもうこれ以上ないキラキラした瞳で語る。フレアが魔法少女狂いなのだと理解するのに時間はかからなかった。

 闘病中は一緒の部屋で励まし合い、お互いの趣味やたわいない話をした。レイスティアにとってその時間はかけがえのない宝物で幸せな時間でもあった。

 呼吸が苦しくて(くじ)けそうなときもフレアとキラリと名付けたウサギの人形の存在が力になった。だからだろうか、レイスティアは医者の予想を超える生命力で耐え抜き薬が間に合った。

 日に日に回復していく体を実感すると涙がこぼれた。


『希望を捨てないで良かった。フレアちゃん、ありがとう』

『そうですよ。どんな絶望だって心の中の光をたやさなければきっと希望はあるのです』

『心の中の、希望』


 実体験を伴ったフレアの言葉はレイスティアの心の奥に深く刻まれていく。そして、新薬を完成させたフレアに感謝を抱くと同時に、レイスティアはこの若さではっきりと恋心を自覚する。

 まさしく命がけで救ってくれた人を好きにならないはずがない。

 しかし、レイスティアには気がかりなことがあった。それはフレアがイケメンを特に毛嫌いしていることにある。フレアはレイスティアを女の子だと誤解していると理解していた。


『男だって知られたらフレアちゃんとの関係は終わってしまう。どうしたら……』


 レイスティアはそのことで思い悩むことになる。そんなある日、レイスティアに女神が接触してきた。

 知の女神ミルである。

 知の図書館と呼ばれる世界に招かれたレイスティアは契約を持ちかけられる。


『君の悩みをどうにかできるかもしれないよ』


 レイスティアにとってはまるで悪魔の誘惑のように甘い言葉。


『君を少女に変身させることができるよ。そしてボクと契約して魔法少女になって欲しい。それもとびっきりの魔法少女だ』


 それはレイスティアにとって何よりの解決策のように思えた。魔法少女であればせめて友達でいられるかもしれない。フレアは魔法少女が好きなのだから。少なくとも嫌われるよりはいいと思えたのだ。


『君が想っている子は将来とてつもない困難が待ち受けている』

『……どういうことですか』

『君は人類に伝わる預言書を知っているかい?』


 レイスティアは頷く。無魔の災厄の予言やそれ以前の凶事が書かれており、その的中率の高さから本物の預言書として神聖視され、人々に伝えられている。預言書は人類の迎える結末だけ何種か存在すると言われていた。


『預言書は複数人類に伝わっている。ブリアント王国に伝わっているのは《落日の預言書》だったかな』

『それが何だというのですか』


 レイスティアはどうにも胸騒ぎがしてミルの話をせかした。


『焦らないでくれ。預言書は複数あれどその結末はある一点において共通してることを知っているかい?』


 レイスティアは公爵家だ。王国が所有する預言書の写本を持っている。当然その全てに目を通していた。そして、人々に伝わっている幾つかの話。それらの中で共通すること。そして、フレアが関係しそうなこと。

 それらの糸が結びついたとき、レイスティアは恐怖に体が震え出す。


『まさか……フレアちゃんの運命は必ず……』

『そう、死ぬ運命にある』

 

 女神に聞かされた恐ろしい話にレイスティアは心臓が痛いくらいに(どう)()した。


『彼女こそが予言で主役級に語られる人類の救世主。そして、人類のために死ぬ運命にある』


 人類の救世主。華々しい名称なれど必ず救世主が犠牲となって人類を守る最後でしめくくられる。預言書は人類に複数伝わっているが、預言書の結末にハッピーエンドはない。

 血の気が引いて今にも倒れそうなレイスティアにミルが改めて契約を持ちかける。


『君は彼女を救いたくはないのかい。ただし、代償も大きいけれどね』


 それからレイスティアが聞いた内容はまさに悪魔と契約するかのように過酷だ。

 それを見ていた今のフレアはブルブルと体が震える。両手で体を抱きしめながらその内容を聞いていることしかできない。

 止められなかった。これは過去の出来事なのだから。

 ある意味裏切りにも近い知の女神ミルの行動に憎しみが渦巻く。

 が、それよりもフレアは自分自身が許せなくなっている。


「私がティアちゃんを追い詰めてしまった。私はなんてことを」


 フレアはここにいたってようやく気がついたのだ。

 ――レイが、……レイスティアが自分の婚約者なのだと。


「わた、しは、ティアちゃんにひどいことを、いっぱい、いっぱい言っちゃった……。ああぁぁ、うわあああああーーーーーーっ」


 滝のように涙がこぼれて止まらない。後悔がフレアの身も心もうちのめしていく。

 胸が張り裂けるとはまさにこのことだろうか。

 フレアは深い絶望と悲しみ、後悔に心を支配されたまま意識が覚醒していった。





 無魔の中でも上位種のシンリーたち。彼らの前でも臆することなく立ち向かっていくのは”レイスティア”だった。

 戦闘の意思を受け取ったレスティアのパートナーにして神なる精霊が宿る人形キラリ。

 キラリは魔法によってその姿を1つの宝玉に変じる。

 魔装宝玉の更に上をいく究極の母なる魔装宝玉《マスターマギカジュエル》である。

 レイスティアの周囲の世界は魔法の輝きで包まれ魔法少女へと至る。


「輝く光。それは希望なる光。夜空に輝く星々のごとく人々の道標となれ」


 まるで歌い、踊っているような詠唱の中で青に煌めく魔法の法衣が美しい模様を描き出す。まるで星々に照らされる宇宙のように青と白が混ざり合い自然な和の着物のような彩りを表現している。そこに星の輝きが幾つも浮かび上がり、宇宙の一部を切り取ったかのような優美なドレスが顕現する。


「それは偉大なる愛、包み込む守護の誓い」


 幾つもの光の輪がレイスティアの手足に沿って走ると守護の力にあふれたフリルカフスとハイソックスが出現する。

 そして、レイスティアは手を挙げて振り下ろすと周囲の星形の光がキラキラと舞い降りてレイスティアの装飾へと変わっていく。

 束ねていた髪がほどけ、ヘッドドレスに髪飾り、精霊結晶の腕輪、ドレスブーツが次々と体を包み込んでいく。


「清らかな願いよ、届け明日へ」


 祈りの仕草で光が首元に集まるとマスターマギカジュエルとそれを包み込む装飾が収まりリボンとともに固定された。

 変身が終わっても周囲に聖なる魔法の光はとどまり続けている。

 

「人々の笑顔を守護する希望の魔法少女……」


 ゆっくりと目を開き、静かに構えると高らかに宣言する。


「――ピュアマギカのティア。参ります」


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