第89話 魔技研編 『レイって何者なの?』
疑問はあるがフレアはまずテロの対処を優先した。犯人はまだ捕まっていない。次の手がないとも言い切れない。まずは犯人確保が最優先だった。
学園祭2日目は入場制限をしているとはいえ人が大勢いる。一般人に犠牲者を出すわけにはいかなかった。
通信用魔導具を起動するとフレアは連絡を取った。
「警備管制室、こちらフレア。今の爆発はそちらでも把握していますか」
応じたのは管制室で現在指揮をとっている赤虎騎士団副団長のミレイユだった。
『ああ、把握しているさね。グローランス嬢の姿も見えているよ』
フレアは問題の袋が放置されていた付近に立つと指示を出す。その地点は魔導式監視カメラの範囲内でありフレアがその場で手を振った。
「問題の魔導具はこの私がいる場所で袋に入れられてありました。カメラの映像記録をさかのぼり犯人の特定をお願います」
『分かった。すぐに手配するよ』
ミレイユの指示で管制室にいる職員が作業にかかる。映像記録を掘り起こしてすぐに犯人の割り出しが完了する。正面のモニターに問題の映像がアップされると人相が判明した。
『この男、見たことがあるね。魔技研の職員さね。身長はおよそ170前後の男。白衣を着込み年齢は40代と思われる』
「では学園中の記録した映像から検索機能をかけて犯人の行動履歴を把握。他にも危険物を持ち込んでいないか確認し処理班を手配してください」
『管制室了解。やっておくよ』
管制室の魔導演算機がここに来て一気に稼働率を上げていく。操作盤が激しく光り輝き膨大な映像の情報を瞬時に処理。該当の男の記録映像が抽出されていく。
正面のモニターには次々と男の足取りが映し出され行動が丸裸にされていった。
このとんでもない機能を見たミレイユからは呆れと感心が入り交じった声が漏れる。
『とんでもないね。これが王国に普及したら犯罪がなくなるんじゃないかい』
それどころか戦場や防衛拠点に配置すれば警備巡回の負担軽減は容易に想像できる。これならばいち早く迎撃態勢を整えることも可能になるだろう。
『これを見ちまうとグローランス嬢がもう少し早く生まれてきてくれればと思わずにはいられないねえ』
もしかしたら人類と無魔との勢力範囲ももっと違った形になっていたかもしれない。考えても意味のない仮定の話とはいえミレイユはそう思わずにはいられなかった。
そして、現在の犯人の位置も判明する。ミレイユは通信機を手に持ち、フレアに報告する。
『犯人も見つけたよ。学園の旧校舎屋上にいるさね。映像履歴から仲間もいないと思われる。単独犯さね』
「魔法少女に連絡。奇襲で一気に犯人を制圧してください。犯人に次の爆破を行わせないよう完全拘束を徹底してください。遠隔操作による起爆の場合があります」
その話を通信機越しに聞いていたカズハから連絡が入る。
『話は聞いていたでござる。拙者とアリア殿が向かっている。2人で同時に奇襲をしかけるでござるよ』
「分かりました。制圧は2人にお願いします」
『任されよ。教官殿にもらった妖刀はまさにうってつけでござる』
「では奇襲まで連絡は控えます。通信音で気取られる危険がありますから」
『了解した』
『くそっ、失敗か』
男は爆破テロがフレアと一緒にいるレイに防がれたことで悪態をつく。
防がれはしたが今度こそ。
そう思い新たな計画を立てているところで屋上にやってくる魔法少女が目に入った。学園祭の実行委員長アリアである。
対テロ特殊制圧用魔装法衣に変身しているアリアの姿は狼をモチーフとした勇ましくも可愛らしい衣装である。男はこれを戦闘用の魔装法衣だとは考えもしない。男の動きはわずかに止まったのである。
まさか、仮装パーティーに着るような衣装が魔法少女の強力な魔装法衣だとは思いもしなかった。この衣装だけでもある意味精神的な奇襲となっている。恐らくアリア本人にとっては非常に不本意な評価ではあろうが……。
だからこそ突然常人を逸脱した素早い動きで駆け出すアリアに慌て出す。
『しまっ……』
慌てて武器となる魔導具を取り出そうとするがもう遅い。アリアが姿を見せたのは陽動。校舎の壁を駆け上り背後からカズハが物理的な奇襲を成功させる。
「お主をテロ未遂の容疑で拘束するでござるよ」
警告と同時にカズハの刃が一瞬煌めく。光を妖しく反射する紫の刀身は男を斬るも負傷させた形跡はない。ただ男が力なくその場で崩れ落ちると取り出そうとした魔導具が床をコロコロと転がった。
アリアはそれを慎重に取り上げ、そのほかの魔導具も押収する。男は全身から冷や汗が吹き出て自らの体に異変について恐れた。四肢が全くうごかないのである。
『体が、うごか、ない。何をした』
「お主の体の動きを選別して切ったでござる。魔力斬撃ゆえにそのうち治るでござるよ」
『お、おのれえええ。俺は間違いを正そうとしたのだ。魔技研がグローランスごときに負けるなどあり得ない。魔技研の衰退は王国の損失である。それを止めるのか、魔法少女』
なんとも自分勝手な言い分にカズハが男の顔すれすれに刃を通して床に突きつけた。
『――ひぃっ』
「どんな正義があるかは知らぬ。だが罪もない人々を巻き込もうとしたお主の行いは間違っているでござる。お主の凶行はどんな大義すらおとしめると自覚するが良い!!」
下手をすると刃よりも鋭いカズハのひとにらみ。男は黙って頷き大人しくなる。カズハは魔法で男を拘束する。魔法の光で満ちた拘束具が両手首と両足に巻き付き、口もふさいだ。その後、魔法通信機を起動した。
「こちらカズハ。犯人は無事確保したでござるよ」
『了解。すぐに部下の騎士を送る。他に仕掛けられた危険物も間もなく処理が完了するさね。ご苦労様だよ』
「了解。それまでここで待機する」
通信を終えてカズハは一息つく。
「教官殿の発明はすごいでござるな。これほど短時間で事件を解決に導くとは」
「そうですわね。そして、魔法少女がこれほど増えているのもフレアさんのおかげですわ」
「後5年もすれば反撃の態勢も整おう。劣勢だった人類の形勢も変わるかもしれないでござる」
「それまで無魔の大侵攻が起こらなければ、ですけれど」
「不吉なことをいうでござるなあ」
「ここ数ヶ月で見たこともない上位の無魔が次々に姿を見せているわ。何か良くないことの前触れのような気がしてならないのですわ」
それはカズハも感じていたこと。それでもあえて口には出さない。話せば現実になってしまいそうで怖いのだ。
「拙者の前でならいい。しかし、他の年下の若い魔法少女に話しては駄目でござるよ。お主はG組魔法少女の長ゆえに」
「分かっているわよ。いざというときは私たち年長の魔法少女が前に立ちますわよ」
「で、ござるな」
口にすると胸騒ぎがしこりのように心に残る。そんな気持ちをごまかすように2人は空を見上げる。今見える澄んだ青空のように未来が明るいことを願った。
「状況終了。後は赤虎騎士団に任せて良いでしょう」
犯人を制圧した報告を聞きフレアは一息つくとレイが目を輝かせて拍手する。
「うわーー、もう解決するとはすごいですね。さすがフローレア様です」
普段の落ち着いた雰囲気が崩れ、今の発言はちょっと子供っぽく感じる。これがまたフレアに違和感を与えた。
だがそれも一瞬のこと。
すぐにレイが魔法少女かもしれないという疑惑を思い出す。すると、フレアは自分のアイデンティティすら揺るがす大失態をやらかしている可能性に顔が青ざめる。
(そうだった。レイが魔法少女かもしれないとかあり得ないでしょう。そもそもレイは男のはず。ああ、でも本当に魔法少女だとしたらなんてことでしょう)
記憶を掘り起こしてみると、レイへの塩対応の数々に滝のような汗が流れ出る。
(出会ったときも、
『ああっ!? なんだあ、イケメン。去れ、じゃなきゃつぶす!!』
なんていっちゃてますよーー。ひいーーっ、最悪の出会いじゃないですか!?)
むしろこれでフレアを慕っているレイの神経もどうだろうという感じもするが……。
とにかくフレアは過去の自分を殴り倒してしまいたい気持ちで一杯になり、両ほほを手で押し当てて声にならない悲鳴を上げていた。
「私はフローレア様の視界に入らないように隠れて護衛しますから安心してください」
顔面蒼白のフレアをみてレイはイケメン嫌いが顔に出ているのだろうと勘違いした。だから気を遣った提案する。しかし、この場合は逆効果だ。より一層フレアは自分の過去の行いを責めることになる。フレアは前のめりになるとレイの手を取り力強く首を振った。
「いいえ、構いません。そばで護衛してください。というか、話し相手になってください」
「えっ!?」
フレアの信じられない発言にレイの表情は固まった。そして、深刻な様子でフレアを観察し、問い詰める。
「あなたは何者ですか!!」
「いきなりなんですか?」
「フローレア様がイケメンに優しいなんて天地がひっくり返ってもありえません」
「何気に自分がイケメンだと言っているようでむかっときますね。というか、そこまでいいますか」
「ええ、フローレア様はイケメンであれば噛みつき、少しでも怪しいと見れば問答無用で銃をぶっ放す苛烈な御方です」
「それだけ聞くと私はどれだけ危険人物なんですかっ!!」
しかしついこの間、魔技研が魔法少女にイケメンを差し向けて陥れようとしているとの情報を掴み徹底排除して回った記憶がある。あながち間違いとも言えない。
(あれ、レイの言うこと間違ってませんね。もしかして私って結構危険人物なんじゃ……)
いまさら?
という感じもするがフレアはようやく自覚が芽生えたようである。
「と、とにかく、今日の私は体調が万全ではありません。そばで守りなさい。これは命令です」
どうにもツンデレ風味の発言になってしまった。それが少し照れくさいフレアは今度は顔が赤くなってしまう。
思わず取っているレイの手を強く握めた。なのにレイときたら嬉しそうに返事する。
「はい、全力で守ります。安心してください」
その目はフレアへの愛しさで満ちており、深い愛情がうかがえる。それが伝わってくるだけにフレアはここまで慕う理由が分からず混乱を深めていくのだった。
昨日は大盛況だったこともあり、満足に見て回る余裕がなかった学園祭。レイと回ってみると生徒独自に考えたユニークな催しが目を引いた。
まるで生きているかのように空を泳ぐ金魚の風船。気流操作の魔法で泳いでいるように見せているのだが中々によくできている。風船1つ1つに魔法が付与され、金魚の動きを再現して高度を維持していた。
「ほむ。『マジカル金魚つかみ』ですか」
空を泳ぐ風船を捕まえたらそれをゲットできる催し。訪れる子供たちが気に入った柄の金魚風船を手に入れようとぴょんぴょん跳び上がり、捕まえようと躍起になっている。
特に優美な鱗が目を引く大きな金魚風船は人気がある。だが高い高度にいることが多い。高度を下げる頻度が少なくて大変なようだ。
「フローレア様、あれが欲しいのですか? 取ってきましょうか?」
「私は子供ではありません」
「いや、11才はまだ子供のうちではないでしょうか」
「どうせお子様体型ですよ」
拗ねているフレアにレイはニコニコしながら首を振る。
「フローレア様は立派な方です。あなたがいるから王国は立て直しつつある。本当に感謝しています」
「ここはお子様体型を否定してくれる流れではありませんか」
「すみません、ウソは苦手です」
「何気にいい度胸ですね」
レイは悪い流れを断ち切るように別の催しについて話題を振る。
「ああ、あれなんて面白そうではありませんか」
レイが指差した先には色とりどりの金平糖がカップの上に浮き上がり風の魔法でポンポン飛び跳ねる。そして飛び上がった金平糖はカップに自動で戻っていくものだ。催しは魔法使いクラスの企画でこれほどの魔法付与をカップにつけて販売するのだからたいしたものだ。
「そうですね。実に魔法使いらしいアイデアです。特にキラキラで見た目にも可愛いところが素晴らしい」
「フローレア様の評価基準は可愛さへの配点が突き抜けますよね」
「可愛いは最強ですから」
「私の”姉”もああみえて可愛い物が好きですから気が合いそうです」
「レイには姉がいるのですか?」
「はい、といっても従姉妹ですが」
ちょうどそんなとき、フレアはティアナクランが近づいているのをみて慌てた。
「はわわ、ティアナがこっちに来ます。レイ、逃げますよ」
脱兎の勢いで走り出すフレアにレイは苦笑して見送るとティアナクランを待ち受ける。
ティアナクランは怒りを隠しきれないといった様子であった。
「あら、レイじゃない」
「お久しぶりです、姉さん」
ちょっとだけ嬉しそうな顔をのぞかせた王女にレイが気安く接する。
挨拶を受けながらもティアナクランはせわしなく周囲を見回した。
「どうかしましたか?」
「フローレアを見ませんでしたか」
「さあ、どうでしたでしょうか。何かありましたか?」
「あの破天荒娘がまたとんでもない発明をやらかしたのです」
「いつものことでは?」
「……それもそうね」
と思わず納得しそうになりながらもティアナクランはいけない、と首を振る。今回ばかりは事情が違うのだと怒りは簡単に収まる気配を見せない。
「いけませんわね。思わず納得しそうになりましたわ」
「あまり怒らないであげてくださいね。フローレア様の発明は王国の、いえ人類の未来につながるのです。王族の都合で押さえつけるのもどうかと思いますよ」
「それはそうかもしれませんが、過ぎたる発明は混乱を招きます。それによってフローレアが傷つく姿は見たくありません」
「ならばそう真意を話してあげてはどうですか。その方が自重を促すにはよろしいかと」
「そ、そんなの恥ずかしくて言えませんわよ」
照れる王女にレイはニコニコと優しげな微笑みで見守った。
「ところで姉さん、あそこで『キラキラ☆ポップ金平糖』という物があります。少し休憩してはどうでしょうか」
「まあ、かわいいーーーーっ、なにこれなにこれ。ちょーー可愛いじゃない」
ティアナクランは宙を舞う鮮やかな砂糖菓子たちの踊りに魅入っている。レイは頷くと王女にそれをプレゼントしフレアを追うのだった。
「ティアナが追ってくる気配はありませんね」
「ええ、足止め工作をしてきました。すぐに来ませんよ」
「どうやったのですか?」
「先ほどの可愛い金平糖を紹介しただけですが」
「なるほど、それは効果的ですね」
ティアナクランは王女であれど同じ可愛い物好きの同志である。それがいかに的確な対処だったかは明白だ。
しかし、そこでフレアに引っかかるものがある。
「んっ、レイはティアナのあしらい方をよく知ってましたね」
それにはあからさまにレイが話題をそらした。
「そ、それよりあちらでキラキラ☆フラワーマギカカフェをやっているようですよ。フローレア様のクラスの催しですよね」
「……ほむ、様子見もかねて寄っていきますか」
カフェは相変わらずの大盛況で行列ができている。待てば結構な時間が経ちそうだがここはフレアが担任の権限でレイの手を引き中に招く。
「レイ、こっちですよ」
「並ばなくてもよろしいのですか」
「構いません」
フレアが列の整理をしている生徒に話しかけると顔パスで通される。
「ソルさん、視察に来ました。入りますよ」
「いらっしゃい、教官。そのまま厨房に入ってよ。あんたの料理が食べたいって要望が多くてね」
太陽のような笑顔が素敵な褐色肌の少女ソル。彼女もまた魔法少女であり、フレアの生徒である。こういう人と人とが接する接客は彼女の得意とするところだ。
肌の露出が多めなウェイトレスドレスもすらっと足の長い彼女にはよく似合っていてスタイルの良さが際立っている。まるでモデルのような堂々とした佇まいだ。
「すみません。厨房は使わせてもらいますが今日は特別なお客様にのみ提供するつもりです」
「そうか、残念だね」
そういってソルは学園一のイケメンで有名なレイをみるとフレアに耳打ちする。
「もしかして、デートかい?」
「ち、違いますよ」
「でも彼に料理を振る舞うんだろ」
「それは……そうですね」
「やっぱりね。仲良く手をつないじゃって」
指摘されようやくフレアはレイと手をつないでしまっていたことに気づく。慌てて手を離し顔を真っ赤にして恥じらう。
「違います。これは、そう。お礼です。なんだかんだでお世話になっていますから」
「ふーーん。イケメン嫌いの教官が普通に話しているだけでも怪しいんだけどなあ」
「しりません。もう行きますよ」
フレアは改めてレイを見る。
(そんなんじゃありませんよ。ただ本当にレイが魔法少女なのか確かめなくては)
だがそれを確かめたからといってどうすれば良いのかは分からない。そのためにも話をしてみなくてはと思うフレアであった。
「感動です。フローレア様の手料理を頂ける日が来るなんて」
「大げさですねえ」
カウンター席の前にあるキッチンでフレアは手際よく調理を進めていく。レイは見応えのあるフレアの調理パフォーマンスを眺めながら涙を流しそうな勢いだ。
フライパンの上で食材が躍るように跳ね回り、食材の上に調味料がかけられてはねる。そして、油のはじける音とともに一段と食欲をそそる香りが広がった。
それには周囲の見ていたお客も感嘆の声を上げた。同時にそれを食べることができるレイに羨望と嫉妬の視線が集中する。
「お冷やです」
ぶすっとした様子のシャルがレイにお水を給仕する。
「ありがとうございます」
不機嫌なシャルの様子に気がつかずレイが柔和な微笑みで受け流す。それを受けてシャルは今度はフレアを責めるような視線を向けた。
「シャルさん、どうかしましたか」
「いいえ、舞踏会の約束忘れないでよね」
「ええ、忘れていませんよ」
ならいいわ、とシャルはあっさりと引き下がっていく。レイは首をかしげてフレアに尋ねた。
「何か約束があるのですか?」
「私ではありませんよ。伝言を頼まれただけです」
「……そうですか」
これだけの会話なのにレイは少し肩を落として気落ちしているように見える。
フレアはレイにできあがった前菜を出しつつ尋ねる。
「そういえばレイは謎の魔法少女の正体について心当たりはありませんか」
「えっ……」
何の脈絡のない突然の話題にレイの動きが止まった。明らかに動揺しているのが丸わかりでフレアのまぶたが下がる。
「え、えっと……わああ、この生ハムにフルーツソースはよく合いますねえ。しかも色鮮やかなソースは一つ一つが違う素材なのですねえ。それとオリーブとトマトの相性も抜群です」
「ありがとうございます。――で、レイは正体不明の魔法少女を目撃したことはありますか」
話題のすり替えは許さない。断固した笑顔でフレアはレイに圧力をかける。
これにたいしてレイは平静を装いつつも必死に思案している。それは動きが鈍ったフォークを見れば明らかだ。
「……さあ、あいにくと会ったことはないですね」
「私もです。ですが意外と近くにいるのかもしれませんね」
「どうしてそう思うのですか?」
「うわさの魔法少女はガラン周辺ではもはや周知されるほど人々を救い、大勢に目撃されています。ですが私は出会ったことがありません。つまり、顔見知りなのでしょうね。そして、私に正体を知られたくないともとれます」
「なぜそこまでおわかりになるのですか?」
「簡単ですよ。私ならば変身して姿をごまかそうが一目見れば正体を看破します。相手は私の能力と魔法少女にかける執念を知っていて警戒しているのでしょうね」
ついには手を止めて黙り込んだレイ。
それもすぐに乾いた笑いによってごまかされる。
「あはは、見つかるといいですね」
「ええ本当に。会うことができたのならば謝らなくてはなりません」
「謝るですか?」
「そうですよ。1人で戦わせてしまってごめんなさいって。そして魔法少女は1人じゃないよって教えてあげたいのですよ」
「……そうですか」
レイは力なく俯いてから気持ちを切り替えて笑顔を見える。まるで無理をして笑っているかのようだった。




