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第81話 魔技研編 『人を幸せにする技術を』

『エクリス王女の勢力拡大を阻むのだ。名代シルヴィア王女を妨害せよ』

 

 学園祭開催当日の早朝。

 飛竜便で送られてきた手紙には共和国保守派の当主からそのような指示が書き記されている。ルドルフは届いた手紙を読み終わると燃やして処分する。


「事前協議の件は共和国に益があるので協力もした。食糧も(きっ)(きん)ゆえに仕方なし。されど他は譲る気はない」


 ルドルフはグローランス商会、そして、グローランス嬢の底知れなさを短い間だが十分に理解した。


「グローランス嬢はとても11歳とは思えぬ。あれは尋常の者ではない。エクリス王女の(きさき)となって共和国でその才を振るえば共和国改革派は勢いを増すことだろう」


 エクリスは共和国の伝統を軽んじて性急に変えようと画策している。それは若い世代の支持は高いが古い竜人たちにとっては煩わしい。ルドルフもそう考える1人である。王国との交易に魔技研を巻き込んでその力をそごうと送られた保守派の刺客でもあった。


「エスメルダ……」


 ルドルフは亡き妻のペンダントを身につけ手に取って額に当てる。ルドルフの妻は名のある武人であった。だがいかに強いものであっても高高度の空中戦で翼を負傷して墜落すればあっけなく死んでしまう。

 そして、それは竜人の武人にとっては名誉な死に様だとしているのが”伝統”だ。

 エクリスはそういう伝統を馬鹿らしいと変えようとする。それはルドルフにとって許せることではないのだ。


「戦場での墜落は竜人にとっては名誉である。その伝統を汚させまいぞ。改革派のエクリス王女を私は認めん」


 強い決意を持ってルドルフは学園祭会場へと向かうのだった。




 学園祭が始まる前の早朝。先んじて共和国への商品展示会が行われる予定である。屋外魔法演習場に設営した展示スペースには魔技研の商品がずらりと並んでいる。

 対してグローランス商会の商品は割り当てられたスペースの半分も埋まっていない状況だ。

 その商品展示場には続々と関係者が集まってくる。

 共和国の交渉で(かぎ)を握るであろうシルヴィア王女と通商産業大臣のルドルフも姿を見せる。シルヴィアは誰もがふり返るような高貴な振る舞いと麗しい容姿で見る者を魅了していく。

 

「御機嫌よう、ルドルフ大臣。本日はあいにくの曇り空ですわ。交渉は晴れ渡る大空のように実りあるよう願いますわね」

「(シルヴィア様のせいでそれも危ぶまれているのだがな)」

「あら、何かおっしゃいましたか」

「いいえ」


 たおやかに口元に手を当てて穏やかに応じるこのシルヴィアの姿を見ては、誰もこれが猫かぶりだとは信じてはくれまい。そう確信したルドルフは諦めたような重苦しい吐息を吐く。

 王国側からはティアナクラン王女とフレア、ルージュ、そして、グローランスの商会側の技術者としてダグラスが既に揃っている。ティアナクランが到着したシルヴィアたちを出迎える。


「本日は朝早くからお呼びだてして申し訳ありません。スケジュールや警備、機密などの観点からこの時間が最良と判断した次第です」



 ティアナクランの言葉にシルヴィアが『構いません』と応じると視界に入ったフレアを見て眉がピクリと動く。彼女の中ではなぜここに『駄メイドが?』と思ったことだろう。

 ティアナクラン王女とルドルフが話し込んでいるうちにシルヴィアはさりげなくフレアの腕を引いて小声で話しかける。


「ちょっと、なんであんたごときがこんな所に来てるのよ。ここにいちゃまずいでしょ」

「いえ、そんなことはありませんよ?」


 そこでヒソヒソと会話する2人にルドルフが声をかける。


「シルヴィア様、その方と何かありましたかな」

「え? え~~と」


 言葉に詰まるシルヴィアはどう話したものか戸惑った。しかしフレアからおもいもよらない挨拶が飛び出す。


「”初めまして”。私はグローランス商会の最高責任者、フローレア・グローランスと申します。どうかおみしりおきください」

「…………はあ?」


 シルヴィアは意味が分からないと周囲の反応を伺う。

 ティアナクランは戸惑うシルヴィアの様子にフレアが何かやらかしたのではと疑惑の目を向け、ルドルフはルドルフでシルヴィアに諦めにも似た気持ちで諦めの視線を向ける。


「あなたがフローレア……様でしたの」

「はい」

「そして、エクリス王女の婚約者ですわよね」

「私は認めていませんが」


 シルヴィアはどうしたものかと額に手を当てて考え込んだ後、フレアの腕を取るとルドルフたちから距離を取りフレアに耳打ちする。


「(あんた、私の裏の顔バラしたら承知しないわよ)」

「(そうでしょうねえ)」


 とても王女とは思えない(しゅう)(たい)をフレアは嫌というほど見せつけられてしまった。普段は可憐なお姫様を演じているだけに周りに知られたくないのだろう。むしろこの期に及んでその強気な(きょう)(はく)が行える図太さにびっくりだ。


「(私たち友達よね。だったら交易交渉で足元見るんじゃないわよ)」

「(友達って脅迫するものなのですか)」

「(バカね、私がこんなにお願いしてるのに無下にするわけ?)」

「(え、さっきのお願いだったのですか。あなたは誠意という言葉を知っていますか)」

「(知ってるわよ。今の私の態度が正にそうでしょ)」

「(ハイ、ソウデスネ)」


 こうも話が通じないとフレアはいろいろと(てい)(かん)のこもった返事で返すしかない。

 話し合いが終わった2人はルドルフたちの元に戻るとシルヴィアが何重にもかぶった猫かぶりで話し出す。


「申し訳ありませんでした。私たち、知らず知り合いだったようでして。旅館ではお世話になりましたとお礼を申し上げていましたのですわ」

「ええ、旅館では大変なお世話をしました」


 そこでシルヴィアが常人には見えない神速でフレアのわきばらをつついた。突然の痛みにフレアは思わず変な声が上がる。


「かふっ」

 

 そこに非常に魔技研の副所長ゴーマンと部下のジョージが輪の中に入ってきた。フレアへの(けん)(せい)と嫌みを言うためにわざわざやってきたのである。


「ゲーッショッショ、グローランス商会の展示スペースをみたでゲスよ。これは不戦勝でゲスかね」


 グローランス商会の商品が少ないことで準備が間に合わなかったのだとゴーマンはおもったのだ。

 賄賂によって共和国と魔技研の独占交渉の約束を取り付けたゴーマンはどのみち負けるはずがないと自信に満ちた顔をする。


「まあ、魔技研に技術力で勝てるなんて思う方が馬鹿でゲス。今回のことで身の程を知るといいでゲスよ」

 

 その一方で魔技研の現場指揮をとったジョージはダグラスに問う。


「ダグラス、お前は以前俺に引導を渡すといっていたな。この体たらくは何だ。お前は何があろうと期日までに仕事を仕上げるプロだと思っていたのだがな」


 ジョージの言葉にダグラスは無言を貫いた。これを弁解すらできないのだと理解したジョージは興味を失う。魔技研に勝てないまでもそれなりのものを出してくると警戒していた自分が馬鹿らしく思えたのだ。

 話を聞いていたルドルフは元々技術品は魔技研びいきをする予定であったのでここぞとばかりに話を進める。


「ちょうど良いですな。まずは魔技研の商品から見せて頂けませんかな。王国が誇る技術者集団が何を見せてくれるのか期待させてもらいましょうぞ」

「ゲッショッショ、いいでゲスよ。我々魔技研のレベルの高さを共和国の方々にもお見せするでゲス」


 こうして、魔技研の魔導具からおひろめされることとなった。



「これが魔技研が自信を持ってお勧めする商品の1つ。《ライトニングバーンランス》でゲス」


 魔技研が用意した騎士が魔技研の最新鋭の槍を手に取ると刀身が燃えさかる炎を宿す。そして縦横無尽に振り回すと辺りは熱気に包まれる。地面に刃を滑らせると大地が赤く焼けただれる。

 更には槍全体に雷の魔法を帯びると騎士が大きく跳躍し、離れた先の地面に投擲する。槍は雷の力で速度を増し、地面に着弾すると雷の貫通力と爆炎で周囲一帯に大きな穴を開け衝撃の凄まじさをものがたる。


『『『おおーーっ』』』


 その想像を絶する威力に共和国の商人たちから驚きの声が上がったものだ。

 だがルドルフは冷静に魔技研の武器の評価を下す。


(確かに1つの槍にしては威力は凄まじいものがある。だが竜人の戦場は主に空だ。敵に投げて終わりではそのあと丸腰であろうな。かといってこれほどの威力の武器を翼なしの兵に与えるのはまずい。この魔導具は取引を許可できぬ)


 共和国の商人たちの声に気をよくしたゴーマンは更なる商品を見せる。


「次なる商品は《ブースターアーマー》でゲス。これは内蔵された魔導装置によって魔法の威力を格段に高める他に、鎧は常に強力な魔法障壁に守られるという優れものでゲス」


 ブースターアーマーを着た魔法使いが実演を始めた。魔技研が用意した魔法使いたちが周囲を囲み、次々と魔法をたたき込まれるがビクともしない。その間、余裕を持って中級の魔法の詠唱を終えた魔法使いが上級魔法に匹敵する風撃の魔法を放って見せる。

 これにも共和国の商人たちが拍手をもって称賛した。


(ブースターアーマーか。確かに性能は目を見張るがその分機構を積んだ装甲がかさばり重量があろう。これでは空を風のごとくかける竜人たちの中にあっては格好の的となろうな。やはり竜人向きではない)


 魔技研の商品は使う側の視点に立っていない。性能や技術が優れていれば向こうからお願いにくる。そんな傲慢(ごうまん)な姿勢も透けて見える。ルドルフはこれではいかにひいき目に見ても交易するほど魅力的な商品ではないなかろうと失意を覚えた。

 それからも数多くの商品を見せられるもののルドルフに心から欲しいと思わせるものはついぞ現れなかった。



「ゲーッショッショ、どうでしょうか。満足頂けたでゲスか。これが魔技研の実力でゲス。グローランス商会の商品など見るだけ時間の無駄でゲスよ」


 勝利を確信しているゴーマンは実に嫌みったらしい顔で共和国の一団に声をかけていく。

 そんな中、突然凄まじい銃声が響き渡った。フレアから目を覆いたくなるほどの凄まじい光量の魔法砲撃が空高く打ち上がる。空を覆っているどんよりした雲模様は驚くべきことに澄んだ晴れ模様に変わった。あまりの砲撃の凄まじさに空の雲が消しとんでしまったのである。

 それをなしたのがフレアの持つ大きな銃身と魔装宝玉を贅沢に3つ内蔵した魔装銃であった。


「天候を塗り替える威力の魔法砲撃だと!?」


 空を見上げて呆けているのはルドルフだけではない。共和国の大商人たちだけでなく、これを見た魔技研の職員たちすらも腰を抜かして見上げていた。

 これほどの魔法砲撃を人が所持できる大きさの魔導兵器でやってのけたのだ。魔技研の職員たちはようやく思い知る。グローランス商会の技術は自分たちをはるかに凌駕するのでは、と。

 更にシルヴィアは重大なことに気がついた。


「あの、たしかフローレア様は魔法がお使いになれないことで有名だったのではありませんか。つまりはその魔導兵器は誰が使ってもあれほどの威力を出せるのはありませんの?」

「その通りです」


 あまりにもあっさりと肯定するのでフレアをよく知る者以外はぎょっとして耳を疑った。

 しかも、フレアはさらりととんでもない事実を明かす。


「実はここに出すはずのグローランスの商品なのですが、魔技研と違ってほとんどが王族によって差し止められてしまったのです。あまりにもオーバースペックらしく共和国にいらぬ警戒を与えかねないと」

「フローレア!!」


 ティアナクランが慌ててフレアの口を塞ぐがもう遅い。シルヴィアは目を丸くしてフレアに尋ねる。


「ということはその銃も?」

「ええ、差し止められた商品の1つ、魔装銃です。残念ですがお売りできません」


 それには共和国の商人たちが非常に落胆した様子だ。

 ティアナクランもどうしてくれようと肩を落とす。過ぎたる力は同盟国に脅威を感じさせるだけだというのにグローランスの力の一端が共和国に知られてしまったのだ。

 これにはルドルフも対応の変更を検討せざるを得ない状況に追い込まれている。


(先ほどの話が事実ならばとんでもない。なんとしてもグローランス嬢を共和国に引き込こまねばなるまい。だがエクリス王女の妃になれば改革派の勢いは手がつけられなくなろうぞ)

 

 場の空気が変わったのを見計らってフレアはにこりと笑うと先導する。


「では少ないながらグローランス商会の商品をお見せしましょう。まずは……」


 そう言って案内された先にあったのは魔技研が最初に紹介した槍に対抗するように用意された魔導具である。

 その槍の形状は奇妙で平べったい形状をしており、一見すると斬馬刀のように巨大な剣にも見える。


「これは《フライトランス》といいます。槍そのものが遠隔で自律飛行可能でありその上に乗って飛ぶことも可能です」


 ルージュが前に出てその槍の刀身の腹に乗るとまるで空の波に乗るかのように上昇していく。この商品は元々ユーナがマギカイージスユニットを飛行に用いたことから着想を得て槍として開発した商品だ。


「ランスのように手に持ち隊列を組んで敵陣を突き破るもよし、敵に投げ入れるもよし」


 ルージュが槍に炎をエンチャントして雷を(まと)わせる。地面に投げ入れこむと魔技研のライトニングバーンランスと同じ攻撃を繰り出してみせる。更に投げた槍は意志を持つように独りでに空に帰るとルージュの足元におさまった。

 これにはゴーマンが悔しさのあまりに顔を真っ赤にして(ふん)(がい)している。


「これは我が軍に欲しい」


 ルドルフは思わず出た言葉にはっとする。

 ジョージも信じられないと思わず拳を強く握りしめた。圧倒的な技術力を見せつけられたのは魔技研の方ではないかと屈辱と同時に技術者として羨望を隠さずにはいられない。ジョージは信じられないと疑問を口にする。


「どうすればあのような魔導具を作れるのか。異常だ。どうして国の支援も無しに一商会がこれほどの技術を生み出せるというのだ」


 次に紹介するのはフレアのおすすめ商品だ。


「続いて紹介しますのは空を飛ぶ竜人にお勧めする安価な飛行補助魔導具《セーフティウイング》です」


 これもルージュが背中に装着すると一度空高く飛び上がり、空から真っ逆さまに地上に墜落していく。


「フローレア様、危ないですよ。止めてください」


 シルヴィアは竜人ゆえに墜落の恐ろしさはよく知っている。だからこその忠告なのだがそれは杞憂に終わる。ルージュは地面に近づくと突然落下が止まりゆっくりと地面に着地してみせた。風の動きもなく静かに降り立った様に竜人たちは一体何が起こったのかとザワついた。


「これは運動エネルギーを書き換える特殊な魔法機能を搭載しており、突風、乱気流の影響も受けにくく空の飛行を補助するものです。また墜落時には安全装置も搭載されており竜人の命を守ります」


 この説明に竜人たちからは魔技研の時とは比較にならない興奮を含んだ感嘆が聞こえる。のだがルドルフが怒りを滲ませてフレアに詰め寄った。


「ふざけるでないわ」

「どうかしましたか?」

「こんな魔導具などいらぬ。不愉快である。竜人にとって戦闘中の墜落死は昔より名誉とされておるのだ。これは我々竜人の伝統と誇りを汚すものである」


 それにはシルヴィアが待ったをかける。


「そうでしょうか。未熟な竜人が訓練中に命を落とすことも多々あります。それを防ぐ意味でもこの道具は大変意義のある発明だと思いますわ」

「それは改革派ゆえのものの見方だな。そもそも翼がもがれ飛べなくなった竜人は惨めである。ならば華々しく戦場で散ることの方が……」

「――そう自分に言い聞かせているのですわよね」

「どういうことですか?」


 フレアがシルヴィアに尋ねるとルドルフの事情を話す。


「ルドルフ大臣の奥様は戦場で翼を負傷し墜落によって命を落とされたのです」

「なるほど」


 フレアは頷くとルドルフから目をそらさず言葉をぶつける。


「本当は生きていて欲しかったのではありませんか。だから感情的になっている」

「……違う」

「私たち技術者は人々の幸せを願い物作りをします。私がこの魔導具を作ったきっかけは竜人で多くの命が墜落によって失われていると知ったからです。力になりたいと思ったからです」


 ルドルフはフレアの真摯な思いを感じ取りわずかに怒りがそがれていく。その願いは素晴らしいものだがだからといって理屈ですぐに変われるほど感情とは単純ではない。ルドルフは形見のペンダントを握りしめると唇をかみしめる。


「私は誇りを汚すつもりはありません。むしろ、その犠牲があったからこそこの技術にたどり着いたのだと考えられませんか。失った命はもどりません。ですがその尊い犠牲があったからこそ未来の竜人の命を救えるのです。過去に意味がないなどとは言わせません」


 シルヴィアがルドルフに語りかける。


「確かあなたのお嬢さんも王族直属の武人として活躍していますわよね。自分の胸に、そして亡くなった奥様に語りかけてみてはどうですか。伝統のために救えるはずの若い命を死なせることが正しいのかどうか。胸をはって言えるのかどうかを」

「くうぅぅ……」


 悩み(かっ)(とう)するルドルフにフレアは彼の手を両手で包み込み説得する。


「私は医療を発展させ、傷ついた翼を再生する方法も進めるつもりです。翼がなくとも空とともにある方法だって探します。伝統も時代に取り残されれば廃れてしまう。そうしないために伝統も変化させねばなりません。それが未来に向けて伝統を守ることだと私は思います」


 フレアの言葉を受けてルドルフははっとする。今の話からルドルフはフレアが古いものを安易に不要と切り捨てるエクリスとは違うのだと感じた。


(そうか、グローランス嬢はむしろ改革派と保守派の対立の架け橋になりうる人物であったか)


 フレアならばエクリスを御しバランスを取れるのではないか。そう思うとルドルフはフローレア嬢と関係を密にすることこそが共和国の未来につながるのではないかと思い直す。

 だからこそルドルフはフレアに手を差し出した。


「あなたの技術者の信念に敬意を表する。今後ともよろしくお願いする」

「こちらこそ」


 フレアとルドルフはそこでようやく心からわかり合い固い握手を結んだのだった。

 そのとき、まるで2人を祝福するような大きな音が鳴り響く。空に大きな花火が打ち上げられガランに学園祭の始まりを告げる音が広がる。


「ほむ、もう学園祭が始まる時間になりましたか」


 するとフレアは共和国の一行に呼びかける。


「皆さん、グローランス商会がお勧めしたい商品は実のところ学園祭の至る所にあります。きっと興味を引くもののはずですからついてきてください」


 よくは分からないがグローランスの技術力の高さは痛感したばかりだ。商人たちは金儲けの匂いを感じ取りフレアの後に続いた。

 魔技研の職員たちも興味を引かれ皆後をついて行く。

 それを離れたところから眺めていたジョージは戸惑っていた。


「人々の幸せのためにだと。そんなもの幻想だ。現実は甘くないんだよ」


 ジョージは一層(てき)(がい)(しん)をつのらせ、フレアを睨み付けるのだった。



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