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第70話 魔技研編 『邪道騎士圧倒!! マコトの実力発揮』

「シャルちゃんは俺が守る。下がっていて」


 マコトの言葉を頼もしく感じていると、シャルはふと疑問が浮かぶ。


「どうして私の名を?」


 初めて会ったはずなのに……。

 そう思うもシャルは不思議とマコトに不信感を抱かない。なぜなら。


(マコトさんからフローレアさんと同じ匂いがしたから?)


 シャルは周囲を見回してもフローレアの姿を見つけることができない。安全なところに逃がしたというが短い時間で一体どうやって動けないフレアを逃がしたのだろうか。

 いや、シャルは薄々予感があった。それでも確信に近づいたのはある物を見てからだ。服は男性用に変わっているが1つ変わっていない物がある。


(そうよ。マコトさんの首に提げてある魔装宝玉ってフレアさんがいつも大切に持っている後期型の魔装宝玉じゃない)


 フレアがいつも肌身離さず持ち歩く魔装宝玉は遺跡で手に入れたという一点物。それをマコトが持っていることでシャルは気がつく。


(もしかしてマコトさんとフローレアさんは同一人物なの!?)


 そう思うとシャルの胸の鼓動はうるさいぐらいに暴れ回る。マコトに聞こえないで欲しいと恥ずかしさのあまり胸を手で押さえる。

 もともとシャルはフレアを友人として好ましく感じていた。

 だがフレアが異性だったかもしれないと思うとその感情が異性への好感に姿を変えていく。


(うそでしょう……。だったらこれからわたし……フローレアさんとどう接したらいいのよ)


 もう元の関係性ではいられない。シャルはマコトに熱のこもった視線で見つめていた。



 その間、マコトは神龍眼の鑑定スキルでしびれ毒の成分の情報を得ると亜空間操作で必要な薬を取り出しニャムに飲ませた。

 薬を飲み下して1分と()たずに症状は改善していく。


「あっ、体が動くの」


 体を起こしてから、ニャムは見慣れない男の子へ遠慮がちにお礼を言う。


「ありがとう、なの」

「どういたしまして、ニャムちゃん」


 ふわりと笑みで返したマコトはニャムにお願いする。


「敵は俺が引き受ける。ニャムちゃんは魔法の植物たちを使って皆を守って欲しい」


 そして、残った解毒の薬をニャムに渡す。


「あと1人分の解毒剤がある。それをロザリーさんに。ロザリーさんは希少の神聖属性が使える。清浄化の魔法で皆を解毒できるはずだ」

「わかったの」


 ニャムが頷くとすぐに魔法を周囲に展開し、植物たちを大量に発生させ魔法少女たち、それからガランの人々を絡め取って敵から引き離す。次に敵を遮るように(さわら)が壁のように立ち上がっていった。

 それを確認し改めてマコトはシャルに向きなおってお願いする。


「シャルちゃんはニャムちゃんを守ってほしい。敵が術者のニャムちゃんを狙うかもしれないから」

「…………」

「シャルちゃん、大丈夫?」


 ぼうっとしていたシャルがはっとして我に返ると勢いよく首を縦にふる。


「ま、任せて。ちゃんとやるから」

「はは、シャルちゃんはいつも元気だね」

「~~っ」


 マコトの話し方はまるで年下の子供に話す言い方だ。それがシャルには無性に腹立たしくもり、恥ずかしくもあった。


「う、うるさいわね。さっさとあいつらやっつけなさいよ。……任せたんだから」

「ああ、任せてくれ。シャルちゃんもニャムちゃんも俺が守る」


 自信満々で話す様子にシャルはますます普段のフレアの顔が重なって見えてしまう。真っ赤になっていく顔を自覚し、シャルは見られないように顔をそらす。

 だがそうすると嫌な子だと思われないかという気持ちもあり、シャルは複雑な感情に振り回され訳が分からなくなっている。

 そんなシャルの思いに気がつくことなく、マコトは迫ってくる脅威に身構えた。

 

「邪道騎士たちの増援が来たようだ」


 マコトは振り返ると1人で精強な戦闘集団と対峙する。彼らから漂う覇気と殺気を感じ取れる。シャルとニャムが思わず息を飲むほどの()()れがそろっている。

 邪道騎士たちはデザイヤに率いられマコトを警戒し取り囲んでいく。


「油断したよ。ガキだと思っていたが男で放出系魔法が使えるとはな」


 デザイヤはボロボロに破損した鎧を見ながらマコトに話しかける。

 正確には魔法ではない。神龍眼の力なのだがマコトはあえて言及しない。


「俺は驚いたよ。あっけなく飛ばされたから兵卒だと思っていたけど指揮官だったんだ?」


 軽い調子できりだすマコトの挑発にデザイヤからギリッと歯ぎしりがはっきりと聞こえた。


「なめるなよガキが。我々は邪道騎士の中でもおそれられる暗殺部隊、()(れん)(たい)だ。貴様1人で勝てると思うなよ」

 

 そこでまず1人目の騎士が前に出てマコトと立ち会う。

 いかにも柄の悪い見た目と強面のモヒカン男だ。鎧は他の騎士に比べると軽装で異質である。


「ふひひっ、デザイヤ副隊長を()(ろう)するとはてめえ楽に死ねるとは思うなよ。俺らの強さは三国中に届いている。愚連隊に狙われたと知ったらどんな貴族も豪商も泣いてオズマ様に許しを請う。俺らにけんか売ったことあの世で後悔しな」


 そのモヒカン騎士は両手に折りたたみのナイフを持つと、素早く出し入れを繰り返し、目にもとまらぬ突きやフェイントをみせつける。


「俺は切り裂きのジョニー。このナイフで暗殺した人間は数知れねえ。名のある騎士だって瞬殺したこともあるんだぜ」


 教科書に載せたくなるほどのかませ感にマコトが思わず噴き出した。


「ぷっ、面白い余興だな」

「これは芸じゃねえよ。何笑ってやがる!!」

 

 だが直後、マコトは素早く亜空間から魔装銃《MMR8》を取り出すと切り裂きのジョニー(笑)に魔弾を速射。逆に瞬殺してみせた。


「どんなに神速のナイフさばきも間合いに入らなければ怖くないな。……ふう、この程度か?」

 

 愚連隊を全く恐れぬ物言いに邪道騎士たちの殺意が膨れ上がっていく。

 挑発に乗せられ次なる敵が前にでる。この1人1人対峙する流れもマコトに誘導されていることにも気がついていない。


「次は私がお相手します。切り裂きのジョニーは愚連隊でも最弱。我々をなめないことですね」


 細身の男が粘っこい口調で語りかけてくる。全く動じずマコトは相手を馬鹿にした質問できり返す。

 

「次はどんな一発芸を見せてくれるんだ?」

「一発芸ではない!! 私は暗器使いのフランソワーズ。むしろ多彩な技を持っています。近距離から遠距離まで私に間合いは無意味。覚悟することです」

「へえ……」


 マコトはそれを聞いて神龍眼を発動。鑑定スキルを隅々まで走らせると次々出てくる隠し武器に感心してしまう。

 両手をも覆ってしまう大きな袖はフランソワーズの手元を隠すと同時に幾つも武器を隠し持つためにある。本来なら恐ろしい相手だが既に鑑定スキルで丸裸にされた暗器使いなどマコトにとってもはや脅威ではない。余裕をもって応じられる。

 

「実は俺もある意味では暗器使いなんだよ」

「減らず口をっ」


 フランソワーズは両手から10本の短刀を投げつけた。刃には毒が塗り込んでありかすっただけで相手を死に至らしめる。

 それをマコトは体を全て覆うような巨大なタワーシールドを亜空間から取り出して防いで見せた。


「なっ、あり得ない。その小さな体のどこにそのような盾を隠し持てるというのだ」

「へえ、お前にはできないのか」


 盾を一瞬で亜空間に格納してみせながらその程度かと手で(あお)られフランソワーズは一気に頭に血が上っていく。フランソワーズの暗器使いとしての(きょう)()をひどく傷つけられたのだ。


「これならどうだ」

「暗器使いがいちいち声をだすな」


 フランソワーズが口から毒針を飛ばすが鑑定スキルで既に把握していたマコトにはバレバレだ。右手に持つ魔装銃の銃身で針をはじくともう一方の左手で男にもかかわらず放出系の遠距離魔法を放った。


「複合炎風、――爆裂魔法《フレア・バースト》」


 魔導鎧の装甲も溶かし、叩きつけるような衝撃波を伴う赤熱の魔法砲撃が(ごう)(おん)とともに(さく)(れつ)しフランソワーズは一撃で倒れる。

 見ていたデザイヤは信じられないものを見たと目を見開いてつぶやく。


「男がこれほど強力な遠距離魔法だと。それも複合魔法――聞いたことがない」

 

「得体の知れない暗器使いも遠距離で倒す。基本だな」

 

 まるで敵に講義をしているかのように次々と敵を撃破してみせるマコト。

 続いて2メートル50センチはありそうな巨漢の男が襲い来る。3メートルもある巨大なバトルアックスを肩に担いで側面から忍び寄っていた。全身分厚い鎧に覆われた重装騎士には生半可な銃撃は通じない。

 マコトの魔装銃でもってしても発射される魔法砲撃がはじけて霧散する程の鉄壁具合である。


「ぐふふっ、俺様にそんな豆鉄砲はつうじねえぞーー」

「でかいのに(おん)(ぎょう)のようなこともできるのか」


 既に間合いに入られたにもかかわらずマコトは焦りもない。巨木のような腕から振り下ろされるバトルアックスを素手で受け止めた。


「無極性魔法多重展開、強化鎧装《ベルセルク》」


 無極性魔法によってマコトの身体能力は天井知らずに跳ね上がり赤と漆黒の魔力が体を覆う。まるで竜人の使う鎧竜鱗を連想させるの力だがこれはそれよりも攻撃色が強い強化魔法である。

 バトルアックスを掴むとまるで土塊のようにぽろぽろと武器が砕け散る。


「何だとーー」


 自らの武器を素手で砕かれ硬直する巨漢に念動力を込めた拳を振り抜きマコトは胴体を撃ち抜く。


「《サイキックガンナックル・パイルドライバー》」

 

 頑強な鎧すら打ち砕く鋭く研ぎ澄まされた力場が1点に30も一瞬で打ち込まれていく。分厚い装甲も破裂するような甲高い音とともに激しく砕けて巨漢の騎士が上空に打ち上げられていく。

 デザイヤは『ばかなっ』と自分の目を疑うような光景に立ち尽くした。デザイヤの部下の中でも最強の防御力と(りょ)(りょく)を誇る騎士が軽々と倒されたのだ。

 巨漢が大地に叩きつけられ、地面が揺れるとデザイヤがはっとして指示を出す。


「奴を囲め。なぶり殺しにしろ」

「良いのか? 陣形が薄くなった分、お前が手薄だぞ」


 この隙を逃すことなくマコトがデザイヤが発砲する。砲撃に対してデザイヤが行った対処はマコトに強烈な不快感を与えた。部下を盾にして自分が助かるという暴挙を行ったのである。

 盾になった部下が倒れデザイヤは当然だとばかりの態度でマコトを見返した。


「どうした? 何をそんなに怒っている?」

「部下を平気で使い捨てるのか?」

「違うな。我々は愚連隊であることを誇りに思っている。任務のためならば喜んで命を投げ捨てる。そうやって俺たちは標的を必ず仕留めてきた」

「人殺しを誇りにするな!!」

 

 邪道騎士たちを見ているとマコトは嫌悪感が内から湧き出てくるのを感じる。


(ああ、転生してもクズはいるんだな。そんな奴らが善良な人々を食い物にしてのさばる。それが世の中だ。この世界でもそれは変わらない)


 だが青臭くてもマコトはそれを仕方ないと、そういうものだと諦めるつもりなどない。この世界には善意の象徴たる魔法少女がいる。希望はあるのだ。

 ならばマコトは魔法少女のため、悪意に立ち向かうのみ。


「お前らの在り方を認めない。俺が叩き潰す」


 改めてこの世界で決意を固めたマコトはデザイヤたちを完全に敵であると認めた。本気で叩き潰すために思考を巡らせ始める。


(こいつらを倒したところで後に続く奴らが出るだけか。だったら……こいつらの誇りもろとも粉砕してやる)


 マコトは激しい敵意とともに策略を練り上げていく。周囲を見回すと邪道騎士たちの誇りを粉々に粉砕しうる物を見いだし、マコトはにやりと笑みを浮かべた。


「何がおかしい? 我々に包囲されておかしくなったか」

「いいや、違う」

「何が違うのだ。逃げ場はないぞ」

「ああ、その通りだ。お前らは完全に包囲されている」

「何をばかな!?」


 そこでデザイヤは気がつく。マコトの瞳が一層赤く輝きを増しているのだ。


「……貴様、瞳術使いか? 何を企んでいる」


 得体の知れない力を感じ取り動揺するデザイヤ。そこで部下が次々と倒れていくのを目にする。


『ぎゃああああ』

『ごふっ……』

 

 倒れた邪道騎士は3人。皆背中を刃物で突かれた後がある。


「敵だと。一体どこに敵が潜んでいる」


 デザイヤの叫びに部下たちも周囲を見渡すが首をひねる。敵と思われる存在を視認できないのだ。


『敵の姿が見当たりません』


「ふざけるな。よく探せ」


 デザイヤにどなられながら邪道騎士たちは注意深く探す。周囲はしびれ薬をまいたことによる霧がまだ残っている。視界は悪い。

 それでも厳しい訓練を乗り越えた彼らが敵を察知できないことなど考えられない。


『しかし、本当に見当たりません。あるのはぬいぐるみの人形くらいです』


 うろたえる間もまた1人、邪道騎士が倒れた。時間が過ぎるほどに被害は拡大するばかり。デザイヤのせかす声に緊張感が一段と強まる。


「一体どうなっている。誰か報告しろ」


 混乱するデザイヤにマコトは忠告する。


「だから言ってるだろ。包囲されているのはお前らの方だってな。――正し、人間だとは言ってない」

「何っ?」


 マコトの言葉もあってか邪道騎士の1人がようやく異常に気がついた。


『おい、そういえばこのクマの人形。さっきまで座ってたよな』


 隣の騎士に顔をむけ確認すると彼は血の気が一気に引いた。ウサギの擬人化した人形が隣にいた邪道騎士を倒してしまったからだ。

 しかももふもふの体による足蹴りで、である。

 それだけでも(きょう)(がく)だがそもそも着ぐるみでもない人形が動くなど考えられない。あり得ない状況に恐怖が先立ち悲鳴のような声が飛び交った。


『ひぃっ、人形が、動いてる!?』

『お化けか? それとも魔物なのか?』


 邪道騎士たちはようやく何が起こっているのか理解する。急いで認識を改め周囲を見回した。するとおびただしい数のつぶらな瞳が一斉に騎士たちを見つめ返してきたのだ。彼らの中で(せん)(りつ)と恐怖が駆け巡る。


 てくてくてく、ぴょーーん。

 

 恐慌を起こす寸前の邪道騎士に体長1メートルほどのクマの人形が駆け出すと飛び込んでいく。そしてあり得ないことにもふもふの手によるパンチで邪道騎士たちを沈めていく。


『うわああっ、なんで人形がこんなにつえんだよ』

 

 人形はマコトのサイコキネシスの力で生きているかのように操作されている。そして千里眼の能力で人形それぞれに目があるように把握できている。

 一見無害そうなこの人形の攻撃は念動力の補佐を受けて怪獣並みの威力に底上げされていた。受けるダメージは力場に保護され傷つけることはできず、良質な中の綿が衝撃を吸収してしまう。


『攻撃が効かねえよ』

『なんでふわふわな肉球パンチがつよいん、ぶろばあっ』

『泣く子も黙る愚連隊が人形に歯がたたな、ひでぶうーーっ』


 信じたくない光景にデザイヤは指揮をすることすら放棄し、おかしくなりそうな精神を必死に押さえ込む。


「夢だ。こんなのあり得ない。精強な帝国の騎士団に負けるならいざ知らず……。こんなメルヘンな奴らに負けるというのか。こんな話が広まったら愚連隊の名は地に落ちてしまう。う、うおおおおおっ」


 デザイヤは手近にいた猫の人形に斬りかかろうとするもポヨ~~ンと剣がはじかれ強烈な猫パンチの反撃にあった。そして激しく後方に吹き飛ばされていく。

 擬人化した猫の人形がまるで『ニャアアア』と()(どき)をあげるような仕草でポージングしている。


「ぐはっ、げほっ、ごほっ……。強い。こんな、こんなことがあってたまるかっ」

 

 デザイヤのプライドは可愛らしい猫パンチで粉々にされていた。

 デザイヤの部下も半数まで数を減らしている。今も聞こえてくるのは一方的な味方の悲鳴だけだ。屈強な邪道騎士があろうことか子供のおもちゃに壊滅させられるなど悪夢としか思えない。

 そこでマコトがデザイヤに近づき、実に憎らしい態度でせまる。このときのデザイヤはマコトが悪魔にしか見えなかった。


「この人形、貴様の仕業か。このような戦い方卑劣すぎる。人同士堂々と勝負しろ」

「いきなり街で毒を振りまいて()(きょう)だの正々堂々などと寝言をいうなよ。テロリストのお前が語ることじゃない」

「おのれえええ」


 頭に血が上りきっていくデザイヤだが不意に背後より聞こえるせりふを聞くと一気に戦意が折れていく。


「「「変身(トランス)魔装法衣(マギカコート)」」」

 

 魔法少女たちの変身に伴う聖なる魔力で辺りを光で満たしていく。不浄な毒の霧も一瞬でかき消えデザイヤの前に魔法少女たちの勇姿が集う。

 きらびやかで()(れん)な魔装法衣に身を包む魔法少女。

 ロザリーの神聖魔法によって解毒を終え、魔法少女が復活したことでデザイヤの勝機は完全に失ったのである。

 こうなってはデザイヤの判断は迅速だった。


「撤退するぞ」


 そして、憎憎しげマコトを見ると捨てぜりふを残す。

 

「貴様の顔、覚えたからな」


 デザイヤは残った部下を集めて速やかにこの場を離脱していく。鮮やかに去っていく手際にマコトは皮肉を込めた。


「逃げ足は超一流たな」

 

 デザイヤたちを見送ったマコトはしかしこれでは終わらなかった。

 シャルとニャム以外の魔法少女たちも離れてはいたもののマコトの奮闘ぶりを見ていたのだ。


「あなたは一体誰なのですか?」


 ロザリーがクラスを代表してマコトに尋ねる。マコトの戦いぶりは異常だった。男なのに放出系も含め見たこともない魔法を複数使っていた。なぜ男が放出系魔法を使えるのか疑問は尽きない。


「俺は君たち魔法少女の味方だ。ピンチのときは必ず助けに駆けつける」

 

 マコトは魔法少女たちに柔らかな笑みを見せると直視できないほどの光が一帯を覆ってその後、姿を消していた。


「消えた!? 一体どこに」


 ロザリーたちがしばらく周囲を探しているとマコトではないがカフェ厨房の影で隠されるように眠っているフレアが発見される。


「彼は一体何者なのでしょうか」


 疑問は残るがそれよりも周囲を見回した魔法少女たちが派手に荒らされた店内に心を痛める。

 特に一生懸命動いていたニャムは荒らされた花たちを見て悲しみに沈んでいた。


「どうしてこんなひどいことを」


 ロザリーのつぶやきに答えたのは転移魔法で急ぎ駆けつけたルージュだ。


「それはわたくしたちの評判を落とすことが目的だったのよ」


 空間を突き破り現れたルージュにロザリーが尋ねる。


「どういうことですか?」

「背後には魔技研が絡んでいるのよ」


 なぜ魔技研が陥れようとしてるのか、ルージュはその理由を説明していく。

 前線に供給する物資の取り引きをグローランス商会に奪われたこと。学園祭と同時に行われる商品の展示会で共和国との通商がからんだ金儲けの思わくなど。魔技研が裏で富をむさぼっていたことが明かされていく。その腹いせと妨害のために起こったのがこの事件だと聞かされたのだ。



 話を聞き終えたロザリーは憤りを隠せない。


「なんということでしょうか。魔技研とは裏でそのようなうらやま……」


 途中周囲の白い視線に気がつき慌てて言い直す。


「こほん。浅ましい金儲けに走っていたというのですか。許せません」

「ええ、度し難いけだものたちね。彼らの頭にあるのは国防よりも私腹を肥やすことよ。学園祭でもきっと妨害があるわ」


 それには話を聞いていたアリアが立ち上がる。


「西の貴族は膨らむ軍事費と借金に苦しんでいましたわ。ですがまさかその責任の一端に魔技研が絡んでいようとは……許せませんわ」


 特にアリアの実家は西の無魔との前線に領地が接する伯爵家。怒りもひとしおだ。


「もっと、お金があれば。もっと良質な装備が整っていれば前線の救えた命もあったはずですのに。それがとても悔しいのですわ」


 こみ上げる怒りと悔しさにアリアは涙すらこぼす。それを見たロザリーがアリアに寄り添って気遣ったあと皆に呼びかける。


「このような悪行見過ごすことは正義ではありません。彼らが学園祭を妨害するというのなら、私たちは無事成功させることで魔技研の思わくを挫いてあげましょう」

「「「おおーー」」」


 ロザリーが反撃ののろし代わりに中央広場一帯に清浄化の神聖魔法を広めていく。これにより、しびれて動けない人々が次々に元気を取り戻していく。

 ロザリーの声を聞いていた生徒たちは決意を胸に心を1つにしていったのだ。


 ここまで読んで頂きまして本当にありがとうござます。魔技研編は長くなるため学園祭は息抜きをかねてのおふざけが多くなっております。だるいという方がいましたらまことに申し訳ありません。最悪飛ばし読みしてくださいますようお願い致します。

 物語が再び大きく動くのは第90話からになります。以降マコトとヒロインの歪められた運命が徐々に明らかになっていきます。魔技研編最後の最終話ではちょっと泣ける話になるよう考えています。最後まで応援して頂けますようよろしくお願い致します。


 魔技研編で一度完結した後、改めて『魔法少女の救世主~魔法少女大戦~』を始めることを考えています。この次回作はまだ内容を詰めている段階なのでいつ始めるかは未定です。

以降ネタバレ注意!!



 主人公は正式に自分の体を手に入れたマコトとなります。ヒロインは魔法少女の女神の娘であることが判明するあの人です。

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