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第65話 魔技研編 『だったら貫け、魔法少女を!!』

 フレアはリリアーヌを連れて自然公園に向かっていた。魔法少女の危機を感知したフレアは味方の集結も待たずに走り出す。

 フレアが余りにも鬼気迫る表情なのですれ違う人々はおびえるように道を空けていく。


「フレアっち、本当に無魔が都市内に?」

「間違いありません。ニャムさんが無魔シンリーとよこし魔を相手に戦っています」


 途中邪魔な障害物は魔装銃を持ち出してふき飛ばす。


「ちょ、フレアっち、やり過ぎ」

「後で弁償しますよ。今は魔法少女の安全が何よりも優先されます」

「普通民の安全なんじゃ」

「騎士が民を守るのです。だったら誰が正義の魔法少女を守るのですか?」


 そして、ぴっと自身を指差し言い張る。


「――私でしょ!!」

「……ああ、ソウデスネ」


 もはや諦めの境地に達したリリアーヌはフレアを止めたりしない。

 そして、リリアーヌはフレアの目が赤く光っていることに気がついた。

 今のフレアは遠く離れた見えない場所すら見通すことができる。

 神龍眼の能力の1つ、千里眼である。

 加えて半竜人化の影響もあり、フレアの身体能力は魔法少女にも追いすがれる脚力になっている。


「シンリーはアタシと渡り合うような強さだった。ニャムさんだと長く持たないかも。確かに急がないとね」

「近くにいるシャルさんに魔導通信で連絡しました。現在はシャルさんがシンリーと交戦中です」


 今のシャルは接近戦ならばクラスでも指折りだ。リリアーヌも認める水準にある。リリアーヌはフレアに提案する。

 

「着いたらアタシがシンリーを相手するわ。フレアっちはよこし魔をお願い」

「分かりました。シンリーはルージュさんが何度か倒しているはずです。ですがまた現れました。その不死身ぶりには何か秘密があるのでしょう。倒しても油断しないように」

「了解」


 それからフレアはティアナクランにも魔導通信で連絡を入れると万全の体制を整えるよう情報を交換する。


(襲撃者がシンリーだけとは限りません。十分警戒しなければ)


 ギリッとフレアは強く歯を食いしばり浮かない顔だったのでリリアーヌが気遣った。


「フレアっち、大丈夫だよ。2人ともちゃんと持ちこたえてくれるはず」

「それでは遅いかもしれません。ああ、魔法少女が大けがしたらどうしましょう」

「お、落ち着いてフレアっち」


 心配する余りフレアから不穏な気配が漂い始める。


(あ、嫌な予感。こういうときのフレアっちは暴走するからなあ)


 リリアーヌの懸念は的中する。フレアはいきなりリリアーヌの手を強く握った。まるで逃がさないと言わんばかりにしっかりと力を込める。


「あの、フレアっち。何考えてるか分からないけど早まらないで」

「えっ、まだ何も言ってませんが?」


 にこりとほほ笑むフレアにリリアーヌはぞくりと心の底から湧き出る恐怖を覚える。思えばリリアーヌはフレアに何度か泣かされてきた。王都では未完成の空飛ぶ箒に乗せられ死ぬ思いをした。

 あのときの悪夢が脳裏を過ぎていく。


「言ってないだけで何かする気だよね」

「鋭いですね。お願いがあるのですが」

「ぜったいに嫌」


 話も聞かずにリリアーヌは拒否する。対してフレアは聞かなかった振りをする。


「リリーは時空魔法の使い手ですよね」


 ここでリリアーヌはフレアが何を考えているのか心当たりがあった。それはもう本当に当たってほしくなかった最悪のケースである。

 まだ超高速推進飛行で自然公園に(いん)(せき)のごとく降った方がマシに思える暴挙だ。


「嫌よ、転移系魔法する気でしょ」

「何で分かったのですか?」

「アタシとフレアっちどれだけの付き合いだと思ってるの」


 それにはとても嬉しそうにフレアが頬を緩ませる。


「いやあ、以心伝心ができるほど仲がいいのですね」

「嬉しくない。失敗したら体がバラバラになるんだからね」

「大丈夫ですよ。ルージュさんは出来たのですよ」

「彼女(天才)と一緒にしないで。あんな魔法成功させるのもおかしいけど試そうとすること自体頭おかしいから」

「実は私、神龍眼で亜空間操作できるのでリリーにも手伝って欲しいのです」

「絶対にやらないわよ」


 それにはフレアが肩を落として残念そうにする。


「そうですか。2人でなら出来ると思ったのですが仕方ありません。無理を言ってすみません」

「わかればいいのよ」

「いえ、そういう意味ではなくて……」

「えっ!?」


 リリアーヌは突然目の前に広がった亜空間の入り口にフレアとともに入り込んでしまう。


「事後承諾ですみません。もう、やっちゃいました。てへっ」

「フレアっちの悪魔ーー、さいってーーーーーーー」


 またもリリアーヌはフレアに泣かされることになった。死と隣り合わせの魔法。少しでもしくじれば悲惨な死が待っている。

 瞬時に悟ったリリアーヌはもう必死で魔法制御し自然公園に出ることに成功するのだった。




 一方、自然公園ではシャルとシンリーが激しい戦いを続けていた。

 そしてニャムはよこし魔となった妹を救おうと呼びかけている。


「レア、お姉ちゃんだよ。正気に戻るの」


 よこし魔から無数に放たれる(つる)(むち)をニャムが魔法の植物で迎え撃つ。


「こんなことはやめて」

 

 攻撃を捌きながらニャムは何度も呼びかけ続ける。


「あははははは、よこし魔になった人間が私に逆らえるわけないし」

「この外道ーー」


 シャルが閃光のように駆け抜けるとシンリーと斬り結ぶ。

 シャルの剣技と速度はシンリーも舌打ちするほど厄介なものだった。突然死角にスッと入り込んでは剣を打ち込むのでシンリーもひやりとする。


「ちっ、この魔法少女、接近戦だと面倒だし」


 魔法少女のクラスでもトップクラスの速度と魔剣から繰り出される斬撃はシンリーも無視できない威力をたたき出す。シンリーはかつてガランの襲撃でシャルの戦闘力は把握していたはずである。それが今は見違えるような動きを見せる。


「前に見たときはここまで強くなかったはずだし」


 近接戦を嫌い距離を取る。

 シンリーは手のひらからシャルに向けて反魔の砲撃を次々に撃ちだした。


「このぉっ」


 直撃弾を魔剣で切り裂き、シャルは回避と迎撃で精一杯だ。上級魔法砲撃に匹敵する反魔砲撃をまるで雨のように放ってくる。それが大地に降り注ぐと大きな爆発が連続した。これでは近づくことも難しい。


「その様子だと遠距離砲撃戦は苦手みたいじゃん。このまま押しつぶされると良いし」


 シャルの窮地を知ったニャムが魔法の薔薇(ばら)の木をシャルの前に出現させると寄り集まって盾とした。

 浄化の力に守られた植物はシンリーの砲撃を受けても簡単には倒れない。

 それだけではない。植物の幹が無数にシンリーに向かって伸びていく。

 

「シャルちゃん、援護するの」


 ニャムの意図を察してシャルは雷撃を纏うと魔法の植物を隠れ蓑に接近を試みる。

 そして、シンリーの目をかいくぐり接近するとついに攻撃が直撃する。


「ちっ」


 シンリーの肩にシャルの剣閃が走る。

 反魔の防御膜が一気に削られたのを見て取ってシンリーは上空に逃げていく。攻撃を浴びて苛立ちがつのるとよこし魔をけしかける。


「よこし魔、ぼさっとするな。魔法少女を倒せ」


 そんな命令によこし魔となったレアは意志とは関係なく操られしかない。


『ニゲテーー』


 突然激しくなった攻撃にニャムは捌ききれない。風を切って襲いかかるよこし魔の腕に叩きつけられた。

 大きく弧を描いて吹き飛び地面に叩きつけられ体が転がっていく。強い衝撃で咳き込みながらも気力で立ち上がる。


「がはっ、けほっ……。できないの。レアを見捨てて逃げたりしない。だからレアも戦って」


 ニャムの絞り出すような声を聞いてもレアの返事は奮わない。


『ムリダヨ。……オネエチャントチガッテ、マホウショウジョ、ジャナイ』


 後ろ暗い気持ちに呼応するようによこし魔の力は膨れ上がる。


『ホントハ、マホウショウジョニ、ナレタ、オネエチャンガ、キライ。ナレナカッタ、ワタシハ、モットキライ。キライキライキライキライキライ……」


「レア、あなた……」


 妹の叫びにニャムはショックを受ける。

 自分の心を押し殺して姉を応援したレア。その心境を思うとニャムは自分が嫌いになりそうだった。


「なんであたちが魔法少女になれたの。なんでレアが魔法少女になれないの。レアは自分の悩みを押し殺して応援してくれていた……」

「あはははは、情けない姉だし。妹に気遣われて情けなくないの」


 シンリーの言葉にニャムの心は傷ついていく。

 本当は妹を気遣うべきは自分だったのに、と。

 情けなさで自己嫌悪に陥り、膝をつきニャムの心は折れかかる。


「あたちじゃなくてレアが魔法少女になればよかったんだよ」


 絶望しニャムは頭を抱えて戦意を失っていく。その姿にシンリーはほくそ笑むとよこし魔に指示を出す。


「とどめを刺してやれ、よこし魔」

 

 シンリーの命令で攻撃の蔓は数を増していく。ニャムの魔法植物の防御をかいくぐって襲いかかる。


「危ないニャムちゃん」

 

 かばうように前に立ったシャルが魔剣を素早く振って乱れ斬る。


「そこの無魔、レアちゃんをみくびるなあーー」


 シャルの叫びによこし魔がピクリと反応し動きが鈍った。


「自分より凄い人を見ると悔しくなるのは当たり前。誰だって思うわよ。大切なのはその気持ちを糧にどう行動するかなの。駄目なのは諦めて自分を裏切ること」


 一歩踏み込むごとに襲い来る蔓をたたき斬っていく。

 シャルだってルージュを見ると劣等意識を刺激される。それでもいつか隣に立ちたいと願う気持ちを諦めたことはない。シャルは最強と憧れる魔法少女ルージュに認めてもらいたい。憧れの存在には強くあって欲しい。だからシャルにはレアの気持ちがよく分かる。レアを本当に力づけられるのは妹が憧れた魔法少女のニャムだ。

 敵に背を向けることなくシャルは背中のニャムを(しっ)()する。


「ニャムちゃん、立ちなさいよ。妹が見ているのよ。妹に姉の凄さを見せつけてやりなさいよ。あなたがすべきは魔法少女であることを責めることじゃない」

「でもあたちは……」

「レアちゃんはそんなあなたを見たいわけじゃない。強いお姉ちゃんに言ってもらいたいのよ、頑張れって。そして、認めてもらいたいのよ」

「強い……あたちが?」

「そうよ」

「あなたはレアちゃんのヒーローなのよ。だったら貫け、魔法少女を!!」

 

 打ちひしがれていたニャムだがシャルの激励に顔を上げて立ち上がる。


「シャルちゃん、ありがとう」


 親友の言葉に勇気づけられて、ニャムは吹っ切れた。


「レアもう大丈夫だよ。お姉ちゃんが必ず助けるの」


『オネエチャン?』


 よこし魔から伸びてくる蔓をニャムは魔法の植物を呼び出して次々と受け止め浄化していく。

 そのまま前進しレアに呼びかける。


「レア、理想の自分になれてないって凄く悔しいよね。もどかしいよね、辛いよね」


 襲いかかる蔓の鞭をシャルとニャムの2人で排除しながら近づいていく。

 一変して劣勢に傾く戦いにシンリーは苛立った。


「よこし魔、何やってるのよ。しっかり攻撃するし」

 

 シンリーの声には焦り混ざる。わめき散らしてけしかけるも状況は改善しない。むしろどんどんよこし魔は追い詰められていくだけだ。


「諦めなければきっとなりたい自分になれるの。自分より他人を思いやれるレアが魔法少女になれないはずはない。だって魔法少女に一番大切な才能は心だから」

 

『ワタシハ、オネエチャンニ、カテナイ、イイトコロ、ナイ』


「あたちはレアの明るくて元気なところが好き。自分よりも他人を気遣って応援できる心の強さは凄いと思うの。行動力だってある。まだまだレアの良いところ、いーーぱい言えるの。レアの他人を思いやれる強さは誰にも負けないの」


『…………』

 

 気がつけばよこし魔の蔓も枝もシャルとニャムによって全て刈り取られて丸裸にされてしまった。

 もはやよこし魔に攻撃の意思はみられない。ニャムは臆することなくよこし魔に寄り添った。愛しさを、ぬくもりを伝えるように抱きしめる。


「やばっ、止めないとだし。――んっ?」


 シンリーがニャムに慌てて襲いかかろうとすると突然目の前の空間が口を開ける。そこから2人の少女が飛びだしてきた。そのまま怒り任せにフレアとリリアーヌはシンリーを殴り飛ばす。


「「邪魔をするなーーっ!!」」

「あだっーー」


 リリアーヌの膨大な魔力によって付与された風属性の魔法パンチ。シンリーの反魔の防御は貫かれ顔面に2人の拳がめり込んだ。直後シンリーは面白いようにきれいに吹っ飛ばされていく。

 フレアとリリアーヌによってシンリーは排除され、ニャムはよこし魔となったレアに浄化の月桂樹を呼び出すと包み込む。

 そのままニャムはレアに呼びかける。


「レアはあたちの自慢の妹だから魔法少女に絶対なれる。フレッフレッ、ガンバッ」


『アアァーー』


 心が洗われるような心地でレアは自らよこし魔の邪気を払っていく。巨大な黒い体は失われていった。

 後に残ったのは黒い結晶体に閉じ込められたレアだ。

 結晶からは出られない様子にニャムが言った。


「レア、後は任せて。シャルちゃん、力を貸して」

「当然よ、友達でしょ」


 2人は《ミラクルマギカリング》からミラクルマギカロッドを召還すると空に向かって掲げる。


「「精霊境界展開」」


 ロッドの先の精霊結晶からキラキラした虹が無数に飛び出すと彩り豊かな光り輝く空間が広がっていく。

 浄化の力を高め、力を何倍にも高める精霊の支配する異世界が周囲に広がっていく。

 ミラクルマギカロッドをよこし魔に向けると圧倒的な魔法力が集まり大きな光球が収束する。

 2人はレアを思い叫ぶ。


「「フィニッシュアタック《ミラクル・マギカ・ブレス》」」

 

 ニャムとシャルが2人で繰り出す強力な浄化の魔法砲撃は圧倒的な光量で黒の結晶体を覆い尽くし邪悪な存在だけを消し去っていく。


『お姉ちゃんはやっぱり凄い』


 レアが嬉しそうに微笑みながら元の姿に戻る。そしてゆっくりニャムの元に降りていく。ニャムはレアを大事そうに受け止めてぎゅっと抱きしめた。


「レア、よかったのーー」

「お姉ちゃん、怖かったよーー」


 泣き出すレアをなでながらニャムは優しさで包み込む。


「2人とも無事でしたか」


 駆けつけたフレアとリリアーヌにシャルは厳しい口調でどやした。


「助けに来るのが遅い」

「すみません。これでも急いで来たのですよ」


 シャルはフレアの隣を見るとげっそりしたような表情のリリアーヌが目に入る。目元は荒れていて涙の跡が見えた。


「シャルさん。これでもほんとに急いできたの。……許して」


 リリアーヌの様子がおかしいのでシャルは恐る恐るフレアに尋ねた。

 

「……フローレアさん。一体何したのよ」

「いえ、単に距離を突き破って駆けつけただけです」

「簡単に言わないでよフレアっち。何度死ぬと思ったか。もう二度とやらないから」


 教官補佐のリリアーヌがマジ泣きしている様子を見れば本当に無茶をして駆けつけたのだと分かる。


「フローレアさん、やっぱ不問にするわ。次は普通に駆けつけなさい」

「前抜きに検討します」


 目をそらしたフレアを見てはリリアーヌは確信する。


(ああ、絶対に改める気ないわ)


 何やら微妙な空気が流れる中、シンリーの怒声が自然公園に響き渡る。


「私を無視するなしっ!!」


 フレアたちは揃ってシンリーの方に視線を向けると不意に一帯影が差す。

 何事かと空に視線を向けると大きな、あまりにも大きな昆虫を思わせる無魔がいた。甲虫に似た形状だが外観がおぞましい。頭部は5つの鋭い角をもち、手足も鋭いかぎ爪のようになっている。外装も厚く固そうだ。そして体長30メートルはある巨大な無魔。

 昆虫タイプのバグクラスと呼ばれる無魔だ。

 更に周囲には無数のバグクラスが飛び回っている。

 その中で一番巨大なバグクラスが地上に降り立つとそこから2体の人型無魔が降りたった。


「リリー、気をつけてください。新手の2体も純粋種クラスのようです。強いですよ」

「……分かってる」


 フレアに言われるまでもなく敵の圧力を肌で感じ取りリリアーヌは冷や汗が止まらない。まるで巨大な山を相手にしている気分だった。


(まずいわね。1体でも厄介な純粋種が3体も。それに手強いとされるバグクラスの無魔。ピンチっぽい)


 魔法少女3人が敵の圧力に硬直している中、フレアが1人前に出て堂々と問いかけた。


「私はフレア・グローランス。あなたたちは何者ですか」


 3体の無魔の反応はそれぞれだ。


「へえ、お前が救世主かよ、あんまり強そうに見えないじゃん。ヘッドショットで瞬殺いけんじゃんよ」

「我は強い剣士と斬り合いがしたい、それだけだ」

「あんたら任務忘れんなし」


 殺気を振りまく2人にシンリーが怒鳴りつけている。

 そして、まずは鮮血を浴びたかのような禍々しい鎧を着た無魔が前に出る。一振り赤黒い大剣を横に振っただけで地面が深く割れ、500メートル先まで伸びていった。

 そのバカみたいな威力にリリアーヌもシャルも思わず息を飲む。フレアも決して侮れない敵だと警戒を強めた。


「我らは北東侵攻を任された無魔の幹部、反魔五惨騎だ」

「反魔五惨騎?」

「名を反魔刃騎キリング」

「なるほど剣使いですか」


 それには明らかに動揺しキリングが驚く。


「なぜ分かった!?」

「いや、名前で普通気づきます。しかも幹部は5体いるのですね」

「こちらの戦力まで見破るだと……貴様天才か!?」

「キリング、あんたもう黙るし」


 このやりとりでフレアは理解する。キリングの戦闘力は高そうだが基本バカだろうと。


 続いてカノンが突然気配を消す。気がつけば姿を見失っていた。声は上空に飛び上がった一番大きいバグクラスの無魔からした。

 リリアーヌが見上げてその背に確認しカノンが移動していたことに気がつく。


「いつの間に!?」

「オレは反魔砲騎カノン。おまえらオレがそのその気になら、全員死んでたかもだぜ」


 空では既に地上に向けてカノンの変質した腕の銃口が向けられている。

 そうはいうもののカノンはフレアだけが見失うことなく捕捉し続けていることに気がつく。フレアの手に持つ魔装銃はいつでも反撃できる態勢にあったのでカノンの気が変わる。

 

(へえ、オレの姿を追えてるのかよ。同じ銃使い同士楽しめそうじゃん。ここで戦うのはもったいねえ)


 そして最後にシンリーが名乗る。


「私は反魔五惨騎を統べるグラハム様一の忠臣、反魔妖騎シンリー」

「用件を聞きましょうか」


 フレアの言葉を受けてキリングが更に殺気を膨らませると戦闘の気配を感じ取りリリアーヌとシャルが剣を構える。


「まずは挨拶。威力偵察というやつだ。だが死ぬ気で応戦しないと細切れだぜえーー、ひゃっはーー、斬る切るキルゥーー」


 そして、爆発でも起こしたのかと錯覚する凄まじい踏み込みでキリングが猛然と襲いかかってくるのだった。



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