第45話 竜人王女編 『お店を復興しよう』
「うわあ、すごいです。フレアお姉ちゃんありがとうございます」
それは親善試合後のこと。セシルが商店の事務所で感嘆の声を上げた。
「いえ、私はお店の業務の効率化を教えただけですよ。セシルさんはとても理解が早いのです」
「それだけじゃないの。聞いたことのない商売のやり方。グローランス商会が急速に勢力を伸ばしたのもこれなら納得です」
きらきらした瞳で尊敬のまなざしを向けられるとフレアも悪い気はしないかった。少し照れたように頬を朱に染めてしまう。
「それに一般の方にも買いやすいよう価格を表示しての小口販売ですか。これまでは商人と買い手がその場で値段交渉するのが常識でした。これは画期的な案ですよ」
「マーキュリア家の主な収入は王族や貴族、商人などを相手取った大口の取引でした。しかし――」
「はい従来の方法では公明正大な商売を目指す私の方針とはあわないんだね」
ブリアント王国では大口の取引をする貴族を主体とした取引の方がはるかに儲かる。庶民相手の商売は儲からない。それが常識である。
だが貴族との取引は信用と積み重ねた実績や人脈が必要となる。上の兄と対立し南の貴族とパイプがないセシルは苦労していた。
そこでフレアはそれでも生き残るためのアドバイスを行い、幾つかもうけるための秘策を授けた。
「ぐぬぬ、わたしよりフレアさんに懐いています。納得いきません」
セリーヌは時々抱きつかれたりするフレアに嫉妬の視線を向けながら歯がみした。
「だってセリーヌお姉様はすぐ私を甘やかすもん。参考にならないよ」
シスコンがいきすぎてセシルのすることを何でも肯定するセリーヌ。フレアのように鋭く厳しい意見をかけることがない。
結果、的確な意見とあっと驚く知恵を教えてくれるフレアを師と慕うのは自然の流れであった。
「ああ、フレアさんを嫉妬で呪い殺してしまいそうですよお」
「お姉様うるさいです。邪魔するならあっちいってて」
「うわあああああん」
マジ泣きしながらセリーヌがその場を走り去っていく。そんなセリーヌをだまって見送ったフレアはセシルに言った。
「いいのですか?」
「はい、後でちゃんとフォローしますから」
返ってくる笑顔はやはりセリーヌに対する親愛にあふれていてフレアもいつものじゃれ合いなのかもしれないと納得する。
「安心しました。セリーヌさんが嫌いな訳ではないのですね」
「当然です。いつも守ってくれる大事なお姉様ですから」
だがそれもセシルの溜め息に塗りつぶされる。
「どうかしましたか」
「でもセリーヌお姉様はいつも私のためにやり過ぎる傾向がありますから」
「そ、そうですか」
セシルの目が半目になってフレアを見つめている。
(あ、何か嫌な予感がします)
話から悪い流れを感じ取ったフレアが立ち去ろうとするとガシッと腕を捕まれた。
「特に今回はフレアお姉ちゃんも力を貸したせいでびっくり仰天大惨事です。あれはやり過ぎです。私怒ってます」
それは親善試合のことなのだろうとフレアは容易に予想できた。
セシルからはどこかで感じたような威圧に既視感を覚え、額から汗が幾つもこぼれ落ちる。頬を膨らませて怒っている姿は本来ならば微笑ましいと思える光景なのに芯から沸き上がるような恐怖を振り払うことができない。
(どうしたことでしょう。セシルさんは年下なのに震えが?)
「私は既にティアナや生徒たちからも怒られて割と凹んでるんですが」
「それはそれ。――お説教だよ」
(ひいぃーー、そうだ。この子ティアナにそっくりなのですよ)
底冷えするような冷笑をみてフレアは後に語る。
――笑顔が怖かった、と。
親善試合が無事(?)終わり、ブリアント王国とファーブル翼竜共和国との間で新たな同盟体制が築かれることとなった。
現在は王国側の重鎮とエクリス王女側が引き連れた高官らによって詰めの協議がグローランス商会ベルカ支部にて行われている。
既に竜人の支配から解放され、徐々に元の賑わいを取り戻そうと住民たちが動き始めている。
雌伏の時を耐えて、たくましい住民たちによって急ピッチで復興が進む。
当然魔法少女たちもこれをただ黙ってみているはずもない。試合後、パティが率先してクラスのみんなに呼びかけた。
「みんなーー、セシルちゃんを助けてあげようよ」
魔法少女が否と言うはずもなく喜んで手伝いを始めた。
セシルのお店を起点にフレアが資材を集め、適切に各所に振り分ける。いつの間にか支援は都市全体に広がっていく。
その一方でフレアが屋外テントを貼り、生徒たちとともに直々に炊き出しを行った。無料で住民に振るまうとボランティアに加わる人も少なくない。
現在夕飯時。セシルはテントの席に着きフレアの手料理を待っていた。
「こんなに美味しいお料理をたくさん振る舞ったら大赤字になるよ」
炊き出しも資材の費用もすべてグローランス商会が出している。セシルはフレアに当たり前に思える質問を投げかけた。
「たしかにそうですね。ですがもっと大きな視点で見ればそうでもないのですよ」
「大きい視点?」
「はい、そもそもグローランス商会は独自の防衛手段を持ち、ベルカで唯一損害がなかった商会です。それを知って周囲の人々はどう思いますか」
「あ、竜人と裏取引してたとか悪いうわさがたつかも」
フレアはそのとおりと頷く。
「悪意や嫉妬を回避する、これがまず一点。あとは先行投資のようなものです」
「どういうことですか」
「都市が大変なときに無料で御飯を配ると多くの人々にグローランス商会を知ってもらうことができます。人々の印象を高めることで後々の集客力向上につながるというわけです」
「わあーー、そういう考え方もあるんだね。あ、評判をお金で買うようなものなのかな」
セシルは真剣にフレアの話を聞いては紙に目をしていく。その勉強熱心な姿勢にはフレアも感心する。
(若い内はメモをとってしっかり憶える。基本だけどこれができる人は意外と少ないですからね)
そして、フレアはセシルのために特別な料理を振る舞う。火の上でフライパンを振るっては中のお米が色づき輝きを増していく。
香ばしい香りがセシルの鼻孔をくすぐり徐々にフライパンから目が離せなくなっているようだった。
「うわああ、きれいな御飯だねえ」
「ふふん、それだけじゃありませんよ」
フレアは赤いチキンライスを山になるように平皿に盛り付けた。しっかり水分を飛ばしたケチャップと御飯を混ぜることでべちゃっとした食感にしないことがこだわりだ。更にフレアはチキンライスの上に焼いた卵をのせる。
「うわ、うわああ。贅沢だよぅ」
「まだまだですよ」
子供向けのトマトソースをかけるとセシルの前に持って行く。
そして、ライスの上の卵にナイフで切り込みを入れるとホワイトクリームを混ぜ込んだ甘めの半熟卵があふれ落ち、一緒に隠れていた星形のチーズが姿を現した。
「す、すごいです」
「落ち込んでいたみたいだから私からのエールですよ」
卵の中の星は光を表す。切り開けば希望の光がありますように。その意図が伝わったかは疑問だがセシルは至福の笑顔を浮かべてオムライスをあっという間に完食した。
「ごちそうさまでした。うわさには聞いていましたがフレアお姉ちゃんのお料理は魔法みたいです」
「そうですか」
独特だが嬉しくなる褒め言葉。フレアの頬がほころぶ。
「でもどうして私が落ち込んでいるって分かったの」
「今後も商売をやっていけるのか先行きが不安なのでしょう」
図星を言い当てられ1度俯くと顔をあげて尋ねる。
「はい、私の商売は一般向けに力を入れていますけれど……」
「貴族相手と違って売っても利益がほとんど無いのですね」
「はい。マーキュリア家は親族の派閥争いで分裂状態。力をつけないといずれ兄に潰されてしまいます」
「身内に潰される、ですか。穏やかではありませんね」
一応商売仇になるのだが不穏な言葉にフレアは師事することを決める。
「先にいろいろ商売のコツを教えましたね。おさらいもかねてアドバイスしましょうか」
「あ、お願いします」
助言してもらえると知りセシルは喜び頭を下げる。
「商売で一番かかる経費は何か分かりますか?」
「人件費です」
「ならば単純に人を削れば良いのかと言われればそれも違います。なぜなら人材は宝だからです」
セシルは何度も頷く。
「前に教えたように価格交渉を省くことでより少ない人で店頭を回せるとします。そうすると余った人員は他の仕事に回せるということです。例えば経理や在庫管理などですね。セシルさんのお店はその辺りがうまく回っていなかったようですね」
「お恥ずかしいです」
「突き詰めると商売は無駄をなくし利益を確保する。これが基本ではないかと思います」
そこでセシルは挙手をして質問する。セシルが悩んでいたことはその先にある。
「ですがフレアお姉様から学んだことだけではグローランス商会の踏襲となります。それだけでは足りない気がします」
「その通り。それだけで商売ができるのかと言えば違います。お客様あっての商売です。魅力的な商品を揃える、人に求められる商売をするなど工夫が必要でしょう。独自の商売で他の商人を出し抜く方法が必要です。これを差別化といいます」
「差別化、ですか?」
「他ではまねできない商売。出し抜ける商品や付加価値。一般を相手にするということはたくさん売って利益を出す必要もあるでしょう。セシルさんはそういった物をみつけると良いのではありませんか」
フレアの言葉に光明を得たのかセシルは深くお辞儀する。
「ありがとうございます。考えてみます」
そう言ってセシルはお店の復興に戻っていく。2人のやりとりを影でこっそり聞いていたセリーヌは遅れてフレアの前に姿を現す。
「盗み聞きですか?」
フレアの痛い台詞にも厚顔な様子でセリーヌは返す。
「そちらこそよその商売に深入りしすぎではないですかあ?」
「自覚はありますよ」
「だったらほどほどでいいと思いますけどねえ」
「妹のことが心配でたまらないといった生徒がいれば手を貸すのが教師ですよ」
「わたしより年下のくせに」
「あれ、このオムライスいらないのですか」
セシルと同じ物を用意してたフレアは目の前で下げるので慌てて止める。
「ちょっと待ってください。あなたの料理は王族でもめったに食べられないとほんとレアで評判なんです。あやまりますからお預けは勘弁してください」
「レアって魔法少女にお願いされれば普通につくりますけどね」
「それ生徒に言わない方が良いですよ。戦争になりますから」
「ほむ。そうでしょうか」
「相変わらず魔法少女に甘いですね。あ、おいしい」
オムライスを口に運び、思わず漏れたといった言葉にフレアは満足げに微笑む。
「で、本当にわたしのためにセシルの相談にのったのですかあ」
「ええ、魔法少女を悲しませる全てから私は全力で守りますよ」
「ぶほっ、けほけほ……」
突然のせりふにセリーヌはむせたあと、フレアから照れくさそうに顔を背ける。
「あ、あなた、何てこというのですか。びっくりしましたよ」
「何を驚いているのですか。いつものことですよ」
それにはセリーヌが額に手を当てて呆れた。
「魔法少女には誰にでも言っているのですか?」
「まあ、似たようなことはそれなりに」
「ああ、どおりで」
「ん?」
まるで分かっていない様子のフレアにセリーヌは忠告する。
「さっき言ったような殺し文句は今後他の人に言ったら駄目ですよお」
「はあ」
そんなとき、よく声が通るセシルの明るい声が響いてくる。
「うわああ、すごいです。魔法で建物が修復されていきますぅ。がんばってーー」
目を向けるとサリィの土魔法によって壊れた建物を次々に修復させていく。可愛いセシルの声援に気をよくしたのか調子に乗り始めるサリィ。
「ふふふ、任せて~~。セシルちゃんのお店はもっと立派な建物にしちゃうんだから~~」
「ひゃわあっ、やりすぎですよお」
「……あら~~?」
気がつけばセシルのお店が見上げるような石作りの構造物に変わり果てる。それにはアリアが眉間に青筋を立てて叱った。
「サリィ、あなたお城を作ってどうしますの!?」
「立派な建物の方がたくさんお客様を呼べるかと思って~~」
「むしろ近寄りがたいでしょ」
あ、あははーー、と呆れればいいのか、サリィの規格外の魔法を突っ込むべきなのか分からずセシルは途方に暮れた。
巨大な建造物は確かに立派なものだった。人を引きつけるが城は敷居が高いイメージがある。フレアはそれを見て前世の記憶が頭に浮かぶ。
(まあ、前世の日本ではどこかに和風のお城のような公共私設もあったような……)
そこでフレアはピンときた。
(あれ、むしろこれはいけるかもしれません)
そう思ったフレアは火を止めてセシルに近づくと声をかける。
「セシルさん。少し中を見てみませんか」
そう言ってフレアは強引にセシルの手を引いて建物の中に入っていく。
「ええ? フレアお姉ちゃん、ちょっと待って」
困惑する言葉も最上階から見える景色を見ると吹き飛んだ。地平線に沈む夕日に輝くベルカの町並みは心を奪うからだ。
「セシルさん、あなたは一般の人に変わらぬ商売を心がけているそうですね。ですがここは一般の人がまず体験できない場所。この景色もまた価値があると思いませんか」
「あっ」
フレアの意味深のせりふにセシルははっとした。そして、景色はちょうど夜の闇へと切り替わる。するとベルカの街に光がともり宝石のような色とりどりの絶景が広がる。
「ベルカは深夜まで眠らない都市といわれる活気ある場所です。これを見ているといつまでも、そしていつでも来たくなりますね」
「あ、ああ……。そういうことなんですね」
ほとんどフレアに答えを教えてもらったようなものだ。それでもセシルは自分なりに考えた末に答え出す。
「フレアお姉ちゃん、提案があります」
「何でしょう?」
「お姉ちゃんのオムライスをここで商売にしても良いですか?」
セシルの提案はのちに展望レストランと呼ばれる形式の先駆けとなるものだった。
方針が決まると急ピッチで準備を始めた。多くの人の協力もあって3日後。セシルはついにお店を新装開店させた。
お城のインパクトと物珍しさ。一般の人が買いやすいお店と品揃え。
そして、目玉の展望レストランでは絶景と、フレアから購入したオムライスなどのレシピをメニューに載せて大盛況。
既に料理人として有名になりつつあるフレアの監修。それだけでもレストランとして評判は広がった。あまりの行列にフレアや多くの魔法少女たちが応援に入り対応する。
多くの人に支えられる様子を見てセシルは思うところがあった。
「私きっと1人だと立ち直れなかったと思うの」
お店をカロンに潰され、幼いセシルにとっては押しつぶされそうな絶望感と葛藤していた。けれども賑やかな周囲を見ていると不思議と頑張ろうという気持ちがわき上がってくる。それがセシルにとっては何よりの救いだった。
「セシルは1人じゃありませんよ」
「えっ?」
いつの間にか隣にいたセリーヌにセシルは聞き返す。
「セシルについてきたマーキュリア家の人たちもいますし、わたしもいますよ。もちろん、あの騒がしい役に立つのか分からないわたしの仲間たちもですが」
最後はそっぽを向きながら話す様子にセシルはクスリと笑う。
「えっ、何か面白いことでもありましたか」
「いえ、セリーヌお姉様も変わられましたね」
「そうですかあ」
「ええ。お姉様にも仲間と言える人たちができて嬉しいです。かつてお姉様の周囲は信頼できる人がいませんでしたから」
「仲間……あっ、いや言葉の綾ですよお」
必死で否定しているが非常に厄介な人物に聞かれてしまっていた。それはパティだ。
「うわあ、ミラクルハッピィなこと聞いちゃったあ」
「うわあ、チョー絶最悪な人に聞かれちゃったあ」
セリーヌの振りまく毒を無効化しパティはガシッと手を取った。
「照れなくていいよ。私たち友達でしょ」
「頭の中がお花畑の人は幸せですねえ。わたしはいま不幸ですが」
続く毒もまるで動じないパティはセシルの前に飛びつくと言った。
「そして、友達の友達は友達。ってなわけでセシルちゃんともお友達だね」
「何ですか、そのトンでも理論は」
2人を見ながらセシルは思わず声が出る。
「あの、どうしてパティさんは私を助けてくれたのですか」
最初にセシルに手を差し伸べたのがパティだったからセシルは聞いてみたくなった。
「え、だって困っている人がいたら助けるでしょ普通」
「困っている人がいたら助ける……」
「ましてや友達なら当たり前」
そんなとき、フレアが思わぬ人たちを連れてやってくる。
「セシルさん、ちょっといいですか」
「はい」
目を向けると数人の部下を連れたレジーナがいた。
「レジーナさんが特にベルカの略奪被害に遭ったセシルさんのお店を手伝いたいとおっしゃています。どうしますか」
「え、手伝っていただけるのですか」
セシルの問いにレジーナは快く頷く。
「この度は私どもの監督が行き届かず本当に申し訳ありませんでした」
セシルは呆然とする。誇り高い竜人が人に頭を下げるなど信じられなかった。
「あ、頭を上げてください。えっと、」
どうしたらいいのか分からずセリーヌとフレアに視線を言ったり来たりさせるセシル。セリーヌはどういうことですかあ、とフレアに疑念の視線を向けた。フレアはといえば視線をスルー、にっこり微笑んでセシルに合図を送る。
「あ……、はい。ではよろしくお願いいたします」
レジーナを説得して竜人をも巻き込んだのは今後の友好を考え、フレアの思わくが働いた結果だ。
「それにしてもレジーナさん、予定ではもっと人を連れてくると言ってませんでしたか」
それにはレジーナが申し訳なさそうに答える。
「それが半数近くも寝込んでしまいまして」
「病気ですか?」
「それは……」
(まさか、人間とはなれ合えないという意見が多かったのということでしょうか)
残念に思っている様子が伝わりレジーナは慌てた。だが大きな声では言えないのでフレアに耳打ちして伝える。
「誤解しないでください。本当に体調を崩しているのです。二日前からベルカにいる竜人が次々と原因不明の、――その病気にかかり始めまして」
「病気? こちらで医者を派遣しますか」
「ご厚意には感謝しますが遠慮させてください。今は同盟締結前の大事なとき、良くないうわさが広がっても困ります」
「そうですか」
少し気になる話ではあった。しかしウェイトレスをしていたアリアが慌ててフレアを呼びに来て思考は中断する。
「フローレア教官、何を油を売っていますの。今レストランはてんてこ舞いの忙しさですわ」
「はわ、ちょっと休ませてください。オムライスって結構手が疲れるんですよ」
「問答無用ですわ」
フレアは悲しげな顔でアリアに首根っこをつかまれ引きずられていく。
今ではセシルのお店は従業員や魔法少女に竜人、近所の常連も集まってみんなの力で立ち直った。
お店の1階部分では多様な商品が並びそれぞれに価格が表示されている。これで住民は安心してお財布と相談し買い物をすることができる。評判は上々。
そして、セシルのお店の常連たちがセシルに声をかけていく。
『よく頑張ったね』
そんな温かい言葉をかけてくれたのだ。
頑張って良かった。そう思うと自然と涙がこぼれ落ちそうになる。
魔法少女から始まった支援。セシルはパティの言葉が忘れられない。だからーー。
(私も困っている人がいたら助けてあげよう。だって心だけは憧れの魔法少女のようにありたいから)
いま感じた感動を心に刻みセシルは魔法少女に誓ったのだ。




