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第38話 竜人王女編 『王都に急行せよ』

「誰かは知らないがやってくれる(もぐもぐ)」


 レッドドラゴンの背中に乗りながらエクリスは怒りの声を上げている。現在は王都に向けて悠々と空の旅。

 といってもドラゴンの飛行速度は馬よりもはるかに速い速度で駆け抜けていく。


「ウラノス魔導騎士学園の学生。力のない子供とすりかえられていましたね」


 エクリスに目をつけられそうな有望な若者はフレアが前もって避難させてある。


「その上、そのグローランス商会の責任者とやらも不在とはな。間が悪いことだ」


(逃げられたことには気がついていないようです)


 同じくレッドドラゴンに同乗しているレジーナがほっとしている。可能な限りフレアに引き合わせたくないという思いもある。


(グローランス嬢に手を出されては私が困りますからね)


 フレアを手に入れるということは毎日お腹いっぱいに食べても余るほどの食料を得るだけではない、ほっぺたがとろけそうな美食をふるってもらえるということだ。食べることには誰よりも執着を持つレジーナにとって、これ以上ない理想の伴侶といえた。


「わらわに無駄足を踏ませるなど無礼なやつだ(ぱくぱく)。次に会ったらただではすまさない(うっぅぅ)」


 物騒な発言が聞こえるがレジーナはそれほど心配していない。

 なぜなら、


「……レジーナ、お茶を」

「はい、エクリス様」


 レジーナからお茶で満たされた水筒を渡される。エクリスは口に詰め込んだお菓子をお茶で飲み下した。抱えきれないほどのお菓子の数々はグローランス商会を訪れた際にお()びの品として渡された貢ぎ物の1部だ。金品は後ろの荷台にまとめてある。

 お腹が満たされ徐々に苛立ちが小さくなっているエクリスを見てレジーナはますますフレアの評価を上げていく。


(アフターフォローもしっかり忘れない。素敵だなあ。ますます嫁に欲しいなあ)


 レジーナはフレアへの想いを募らせていった。そんな中、エクリスの何げない一言で空気が張り詰めていく。


「聞けばこの美味なる菓子は商会責任者の手作りだというではないか。器量によっては(めかけ)ぐらいにしてもいいかもしれないな」


 エクリスの浅慮な発言にレジーナが激しく憤る。


「はあっ!? 書類の量を2倍にしますよ」

「な、何を怒っている。聞けば商会の責任者は魔法も使えぬか弱い人間だとか。(めかけ)でも過ぎたる名誉であろう」

「3倍です」

「なぜそうなる!?」


 この頃にはフレアへの怒りもすっかりかき消えてしまっていた。




 移動魔工房の旅が始まって2日。

 工房のある車輌ではフレアとユーナが意見を交わしていた。


「シールドスルーショットのことなのだけれどまだまだ改良の余地があるのと思うの」

「といいますと」

「ブレイクスルーショットで防御を抜いた穴に高威力の砲撃をたたき込めないかしら」

「それだけの精密射撃は相当な魔力と制御力が必要ではないでしょうか」

「だったら広域ロックオンシステムを応用できないかしら。現状多重詠唱ができないならばこのシステムは宝の持ち腐れとも言えるわ」


 フレアはほむ、と思案する。広域ロックオンシステムは自動誘導で標的を狙うものである。そして、自動追尾も可能にする砲撃支援システム。主にバグ級対策として想定していたのだがなるほどとフレアは手を打った。


「自動追尾システムの精度をあげて精密仕様に変更できれば可能ですかねえ」

「場合によっては人質を取られた際に正確に敵だけを討つことも可能よね」

「いいですねえ。その辺りも調整してみましょう。ユーナさんのおかげでさらなるパージョンアップが出来そうですよ」

 

 近くで聞いているリリアーヌは苦笑いを浮かべつつ黙って聞いている。

 近頃はユーナがフレアの研究を手伝うことが多くなっており日に日に物騒な言葉が飛び交っている。リリアーヌには理解できないがユーナはフレアの話にもついていけるだけの教養とひらめきがある。それが少しだけうらやましくも感じていた。


(研究面でアタシはフレアっちを手伝ってあげられないからなあ)


 もしユーナが助手として補佐してくれるのならフレアの負担も軽減されるだろう。それは喜ばしいことなのだが嫉妬心も抱いてしまう。


(最近のユーナさんの態度はただの友人の距離感ではない気がするし)


 フレアの疲労を感じ取りユーナは適度に休憩も提案する。そうなるとデザートを持ちだし、フレアにスプーンですくったプリンで食べさせようとするのだ。


「はい、あーん」


 ユーナは意地悪な目でスプーンを突き出しフレアを困らせる。


「あの、1人で食べられるのですが」

「あら、友達ならこのぐらい普通よ」

「そういうものなのですか」

「むしろ拒否されるのはとても悲しいわ」


 泣き真似だけでフレアは慌てて応じる。

 

「はわわ、ごめんなさい。たべますよ」

 

 観念して差し出されたプリンを食べる。慌てるフレアの様子にユーナは楽しそうだ。

 リリアーヌも小さな口で頬張る姿に内心悶える。


(うん、フレアっちはかわいいよね)


 庇護欲をかき立てる容姿と仕草はユーナにもツボだったようで手はなかなか止まらない。

 そんな中でフレアは突然にこにこと機嫌が良さそうにユーナを見る。


「フレアさん、嬉しそうだけどどうしたの」

「いえ、昔に戻ったようで嬉しいのです。ここ数年は少しを距離を感じていたので」


 それにはユーナの顔に陰りが見えて手を止めた。


「確かにね。距離をとっていたわ。悲しい思いをさせたと思うわ。ごめんなさい」

「ユーナさんのことですから理由があったのですよね。距離を感じ始めた頃、子爵夫人からも必要以上に親しくならないように言われましたから」

「勘違いしないでね。お母様はフレアさんのことをとても気に入っているわ。でも、だからこそ……」


 その先の言葉をユーナは飲み込む。そして、過去に想いを巡らせた。


 

 ユーナは本来活発な少女だった。興味のあることはとことん追求し確かめずにはいられない性格だった。貴族の作法よりも体を動かすことを好み、剣術や魔法学にのめり込んでいった。現在の優雅でお淑やかなユーナしか知らない知人からすれば信じられないことだろう。

 ユーナが初めてフレアと出会ったのは8年前。そのときのフレアの印象はユーナの記憶にはっきり残っている。フレアはとにかく守ってあげたくなるような優しくて可憐な女の子だった。ユーナがお姫様だと勘違いしたほどだ。


『ユーナ、彼女を手本とし子爵家に恥ずかしくない淑女を目指しなさい』

『はーい。じゃあ、フレアちゃん、外に遊びに行こう』

『はわわ、おとそは怖いの』

 

 強引に手を引いて駆け出す姿に子爵夫人は呆れかえり、フロレリアは微笑ましいといった様子で見守った。

 年下のお友達ができたことでお姉ちゃんとして振る舞うようになる。より精力的な御転婆娘になってしまったユーナ。妹分のフレアを守るためにクロノスナイツから武術を学ぶこともした。

 そしてある日。フレアを誘拐しようとした大人をうち負かす事件が起こる。それを聞いた両母親は肝を冷やしたものだが無事を知って胸をなでおろした。

 

『どこで教育を間違えたのかねえ。困った娘だよ』

『こちらは感謝していますよ。ユーナちゃんといるフレアは明るくなりましたから』

『産まれてくる性別を間違えたかのねえ』

『もし異性だったら許嫁にするのもよかったですね。フレアも懐いているようですし』


 そんな仮定の冗談をユーナの前でするほどフレアと仲が良かった。

 それでもユーナは子爵家の長女である。このままでは嫁のもらい手がないと危惧した子爵夫人が厳しく指導することになる。


『あなたは公爵家の長女として自覚を持ちなさい』

 

 それからはなかなか外出も許されず男性に見初められるような淑女像を押しつけられるようになる。

 大好きな母親のためにしばらくは文句も言わずに我慢したのだが限界がやってくる。

 ある日、屋敷を飛び出し城壁の外に出てしまった。しつけを優先し遊びに来てくれたフレアを追い返した母が許せなかったのだ。


『お母様のばかーー』


 向かった先はフレアと見つけた森の中にある思い出の場所。正し、フレアの護衛がついていたから来られた場所だ。

 幼いユーナは分かっていなかった。前線から離れ比較的安全とはいえ外は無魔と遭遇することもあるのだ。それも運の悪いことに指揮官級に遭遇してしまう。


『無魔? どうしてこんな所に、逃げなきゃ』

 

 武術を習ったとはいえ、まだ幼い子供が太刀打ちできるはずもない。ユーナは必死に逃げた。それでも反魔砲撃に追い立てられ余波だけでも動けなる爆発によって吹き飛ばされた。


『うう、お母様ごめんなさい』


 それは心配をかけたであろう母親に対する謝罪。そして、これはわがままな自分への罰なのだと思うと涙がこぼれ落ちていく。

 子供であろうと無魔には関係ない。無慈悲な無魔がユーナに砲撃を加えようというとき、少女の叫び声がした。


『ユーナちゃんをいじめるなあ』

『フレアちゃん、どうしてここに?』

 

 友達のユーナが家を飛び出したと知ったフレアはいても立ってもいられなかった。ユーナと同じくとびだして思い出の場所に探しに来ていたのだ。


『フレアちゃん、逃げてっ』

 

 心からのユーナの願いは届かず無魔の砲撃によって大きな爆発が起こる。その後のことをユーナははっきりと思い出せない。それでも誰かに助けてもらったことは憶えている。

 巻き上がる()(じん)が視界を遮るも男の子が強力な魔法砲撃で返り討ちにしたらしいとユーナは理解する。

 そして、気を失う直前声をかけられた。


『ユーナちゃんは俺が守るから』


(……俺?)


 一瞬のことだったがユーナは確かに傷だらけの男の子を見た。ユーナの心臓は跳ね上がり一瞬だけ意識がはっきりする。そのときに焼き付けた男の子の笑顔がずっと心の中で消えることがない。

 あの男の子が誰だったのか。それは分からなかった。ただ、あれがユーナの初恋であり、男性に興味を持ったきっかけでもある。

 その後、強力な魔法現象を察知して駆けつけた子爵夫人らが傷だらけのユーナとフレアを保護した。


『あなたの軽はずみな行動がお友達を殺すところだったのよ』

 

 当然ユーナは子爵夫人に怒られた。その言葉はユーナの心に深く突き刺さる。今も決して消えない後悔がユーナを責め続ける。


(私のせいでフレアちゃんが死んでいたかもしれない)

 

 ユーナはそう思うと申し訳なくて自分自身を深く責めた。

 事件をきっかけにユーナは御転婆な自分を殺した。もう、表に出すことはないと戒める。自制できる淑女になれるまでフレアとは交流を制限された。それはユーナの母親の意向である。

 そして、必要以上に親しい人を作らず寄せつけないようにも振る舞った。

 それでも殺しきれない思いもあった。


(あの男の子は一体誰だったの?)


 発見されたとき、男の子はいなかったという。ユーナはいつかあの男の子に会いたいという願望を胸にしまい続けてきた。

 それから8年が経ったある日、思いもかけない可能性が浮上した。


『時々フレアさんは男性のように頼もしい姿を見せるものね。それに戸惑う生徒も出てきているようよ』

『へ、へーー。ですがフローレアは女性ですよ』

 

 フレアが男性という例えに王女が酷く動揺したのだ。ユーナの頭の中は疑問が無数に飛び交いさらなる揺さぶりの言葉をかける。

 

『……そうですね。もしフレアさんの正体が実は男性かもしれないとなったらクラスの子たちが放ってはおかないでしょうね』

『な、なぜですか?』


 ティアナクランの動揺に確信を抱く。それはユーナが探し続けてきた王子様は近くにいたのかもしれないと。

 あの男の子の正体がフレアだったのするのならばつながるのだ。会ったこともないはずの男の子がユーナの名を呼んだことも。

 ユーナを救った男の子が見つからなかった理由も。

 それからユーナはフレアとの距離を縮めることになる。


(まだ、胸を張って変われたとはいえない。それでも抑えきれない。フレアさんがあのときの男の子なの?)


 観察して分かったことは本人には自覚がないということだ。そして体も少女で間違いない。

 それでもユーナあの男の子はフレアだったのではと疑っている。


(あのときの男の子を殿下にだってとられたくないわ)

 

 沸き上がるのは淑女にあるまじき暴力的な衝動。ユーナは首を振り嫉妬を押さえ込もうとする。


(いけないわね。昔みたいな御転婆に戻るわけにはいかないわ)


 


 ようやく意識が回想から現在に戻ると再びプリンを食べさせるユーナ。フレアは困り顔だけど魔法少女のお願いは断らない。

 フレアは改めて尋ねる。

 

「あの、ユーナさん。何か悩みがあるのなら話して……」


 フレアの言葉を遮るように警報音が鳴り響いた。

 せきたてるような激しい音にユーナは何事かと尋ねる。


「フレアさん、これは一体何の音なのかしら」

「これは現役の魔法少女たちからの救援信号を受けた警報ですよ」

 

 フレアはすぐに立ち上がり先頭車両に走り出す。


「それって、大変じゃない」

「ええ、私たちも行きましょう」

 

 リリアーヌとユーナも慌てて追いかける。

 フレアは先頭車輌の操縦席に滑り込むとすぐに魔導技術を用いたモニター画面を開く。

 上部に備え付けたモニターには王都を背景に1人の魔法少女が映し出される。追いついたユーナが見たこともない魔導具に興味津々だ。


「これって相手の映像も映し出すのね。凄い技術だわ」

「現役の魔法少女に支給している空飛ぶ箒を介してしか今のところ出来ませんけれどね」

 

 フレアが説明する間に向こうからは切迫した様子が伝えられた。


〈……こちら『魔法少女小隊アース』のカチュアですわ。聞こえますか〉


 映像から呼びかけてくるのはカチュアという魔法少女をリーダーとする小隊。拠点防衛には定評のある小隊である。


「こちら移動魔工房のフローレア・グローランスです。救援信号を確認しました。状況を教えてください」

 

〈こちらは王都ロンドゥル。現在共和国の軍から攻撃を受けていますの。防衛に徹していますが長く持ちそうにありませんわ。このままでは民に被害が……くっ〉


 映像の中ではワイバーンと呼ばれる竜種がカチュアに向かって急降下してくる。それに気がついたカチュアが空飛ぶ箒の砲身部分から強力な魔法砲撃を放射し撃ち落とす緊迫した様子が映されている。

 遅れてティアナクランとフロレリアが駆け込んできてちょうどその様子を目にした。


「攻撃を受けているのは王都なのですか。なぜ竜族が攻撃を?」


〈不明です。戦況は劣勢ですわ。魔法少女であれば竜にも対抗できますが王都全域では手が回りません。近衛軍も出撃していますが地上は竜人部隊相手に押されています。城壁が突破され民に被害が及ぶのも時間の問題です〉


「近衛将軍は戦場に出ているのですか?」


〈はい。ダールトン卿が奮戦し防衛ラインを支えていますが警備兵はもとより近衛兵でも竜人の鎧竜鱗の防御力に苦戦していますわ〉

 

「ダールトン卿がいても押し返せないのですか」


 (がく)(ぜん)とするティアナクラン。フレアは素早く切り替えカチュアに指示を出す。


「カチュアさんたちは王都上空に竜を入れないようにしてください」


〈確か戦争では制空権の確保が大事だと以前に聞いたことがあるわね〉


「その通りです。死角となる頭上を抑えられるということは戦いの主導権をとられることになります。奪われればあっという間に王都は攻め込まれてしまいますよ。空中の支配権は死守してください」


〈わかりましたわ〉


「できるだけ急いで駆けつけます。移動魔工房にはティアナやリリー、私のママもいます。それまでの辛抱ですよ」


 マイクを持ち、フレアはすぐに車輌内のスピーカーを通して放送を流す。


『これより移動魔工房は超高速推進飛行に移行します。現在王都は竜人の攻撃を受け一刻を争います。総員、急加速による衝撃に備えてください』

 

 直後、怒鳴り込むような声が通信器から響く。機関制御室にいる工房長からである。空を走る機構に未完成部分があるため調整しながら稼働するという無茶を押しつけられた哀れな技術者たちが制御室にはいた。


〈おい、姫嬢ちゃん。聞き違いか? まだ魔導回路が不十分の推進器を使うのか〉


「その通りです。ちょっと無茶をしますからフォローお願いします」


〈ばかか? ばかなのか? 暴走したらドカンだぞ。死にてえのか?〉


「本当にまずいと感じたら強制停止してください。燃料代わりの魔力と魔法制御は私がなんとかします」


〈……はあ、どうしてそこまでするかねえ。そこまでして他人を助けるのか?〉


「王都には魔法少女が助けを待っているのです。有象無象の人間(男)は知ったことではありません」

「「「ええーーーーっ!!」」」


 それには人としてどうなのよ、と周囲の視線が冷ややかだ。非難の目もフレアの鉄壁の信念ではねのけ操縦席の機器をせわしなく操作する。

 操作を受け移動魔工房の先頭車輌両側面で装甲が持ち上がり、中から巨大な推進装置が顔を出す。

 更に車輌の連結も遊びを部分をなくし強固な固定器具でかっちりつなぎ止めていく。


「推進器起動準備」


 フレアが左手の魔力封印魔導具を解除すると大量の魔力が全身からあふれだし動力に向かって供給されていく。


「魔力演算装置フル稼働」


 フレアは操縦席のキーボードを取り出すと凄まじい勢いで打ち込んでいく。

 そこに慌てた様子でシャルが駆け込んできた。


「ちょっとフローレアさん。超高速推進飛行は駄目よ。絶対にやめて」

「大丈夫ですって」

「あっ、それって」


 シャルはフレアの言葉にデジャブをおぼえた。無情にもフレアは最後の決定ボタンをためらうことなく押した。

 ――ぽちっと。


「い、いやぁぁぁーーーーーーー」


 大出力の爆発が推進器から放射されて想像を絶する加速で移動魔工房は空をかける。

 息苦しいほどの圧力が襲い、シャルは壁に張りつけられる。壁にぶつかった音は鈍く響きリリアーヌはシャルにむけて(れん)(びん)の情を隠せない。

 フレアが遅れて注意する。


「加速するから危ないですよ」

「加速する前に言いなさいよ」


 緊迫した車内の様子を知ったカチュアが申し訳なさそうにする。


〈やはり安全運転で来ていただけませんこと〉

 

「大丈夫です。私が作ったのです。壊れるギリギリを乗りこなして見せます」

「この悪魔ーーーー」


 シャルの悲痛な叫びを聞き、カチュアは心の中で事故らないことを切実に願うのだった。


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