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第25話 魔法少女特訓編 『ガリュードの猛攻』

「がーーはっははは、面白い。面白いぞ。人間ども」


 ガリュードは豪快に笑った。何がおかしいと言えばフレアが持ち出した《移動魔工房》によって状況がひっくり返ったことだ。

 もはや風前の(ともし)()であったはずの取り残された住民。

 しかし、今はガリュードたちの手から逃れようとしている。ガリュードからすれば次々と意図をくじいてくる歯ごたえのある敵は久しい。

 戦好きのガリュードにとってはこの上ない(ぎょう)(こう)だったのである。


「ぜっんぜん面白くないし。ふざけんなし。なんなの、なんなのなんなの。あの馬鹿げた乗り物。私聞いてないし。どうなってるのよ」


 一方でシンリーからすれば不愉快極まりない。これほど思い通りに行かないことがかつてあっただろうか。そう思うとなおさらに苛立つ。

 それは思わず地面を踏みつけなければならないほどシンリーのプライドは傷ついた。

 

「ああーー気が変わった。あそこにいる奴ら、ころそ。私も出るし」

「ふはは、まずは小手調べ程度のつもりだったのだが参ったな。思わず興が乗って皆殺しにするかもしれぬ」


 2人の会話は死を軽く見過ぎている。それは魔法少女が憎むべきものであり、決してわかり合えない考えだ。

 両者の激突は必然であった。




「総員、民の盾となれ。誰1人死なせるんじゃないよ」


 乱暴な言葉ではあるがミレイユの激励は騎士としての誇りを窺わせる。騎士とは何なのか。そのことを理解している者の発言だ。


「騎士様、がんばってーー」


 車内に誘導される子供たちはその勇姿に心打たれて、目を輝かせて応援する。その声に赤虎騎士団の騎士たちは勇気づけられた。


「うおおおっ、民には指一本触れさせん」


 奮起した騎士がますます力を得て無魔を圧倒していく。さらにはミレイユの指揮下に吸収された西門警備兵たちも見違えるように無魔と戦えていた。

 

「ほむ、赤虎騎士団もなかなかやりますね」


 フレアは車上から騎士たちの奮戦を見て感心していた。予想以上の活躍に魔法少女が介入を抑えるほどである。連携のとれない魔法少女の介入は陣形を乱す。それは無魔の突破を誘発し民を危険にさらしかねない。


「ですが手を(こまね)くわけにもいきません」


 ユーナは既に負傷者の手当のため車内にて治癒魔法に忙しい。

 フレアはサリィを見ると指示を出す。


「サリィさんの土の魔法で周囲に簡易的な城壁を設営します。また敵を細長い一本道で正面に誘導する形にしてください」

「わかりましたの~~」


 ここには無数の精霊が存在する。常人には見えないが開眼した今のサリィたちなら光で認識することができる。サリィは地面に降り立ち土の精霊を見つけると福音魔法によってつながった。


(お願い、強固な石の壁で周囲を守ってほしいんですの~~)


 サリィは心に確かなイメージを描き精霊たちに伝える。すると土の精霊たちは無邪気ともいえる光の点滅を繰り返して意図を受け取った。

 それはすぐに形となり人を守る防壁として周囲に姿を現す。

 本来ならばこれだけで上級魔法に匹敵する芸当をサリィは初級程度の魔力と手軽さで完了してしまう。それは魔法少女たちの魔法威力が格段に上がっていることを意味していた。

 見ていたミレイユはサリィに(きょう)(がく)する。


「なっ、無詠唱!? これが魔法少女とはいえ学生の力だっていうのかい」


 ミレイユからすれば上級魔法少女にも思えるサリィの力。だが特訓を経たG組の魔法少女たちはこの程度では計りきれない。次々に騎士たちを驚かせることになる。


「前方、死人級多数接近」

「っ!?」


 部下の騎士の報告でミレイユは正面を見据える。500近い圧倒的な戦力が石の壁で狭くなった通路に押し寄せ、味方も踏みつけながら殺到する。


「なんて数だ。この戦力で抑えられるのかい?」

 

 ミレイユの連れてきた騎士団員は25人。死人級は指揮官級にも匹敵する。どう考えても勝ち目はない。


 その頭上では新たな上級種と一目で分かる無魔シンリーが姿を見せる。


「あははは、この数で攻め込まれたらあんたたち終わりだし。死んじゃえばいいじゃん」


 圧倒的な戦力に気圧される兵士たち。だがフレアが声を張り上げる。


「恐れるな。戦争は心が折れた方から負けるのです。そして、こちらには魔法少女がいます。砲撃戦用意」

 

 フレアの指示で魔法少女たちは遠距離魔法を準備する。それぞれ発生させた魔法は属性が違う。共通しているのは非常に魔力弾が小さいということだ。


「あはははは、何よそれ。そんな豆粒みたいな砲撃で死人級がやられると思ってるの。ガランの魔法少女。どれだけのものかと思ったら期待外れだし」


 味方も声には出さずとも落胆の色を隠せない。大丈夫なのか。不安が顔にありありと見て取れた。

 だが、フレアの後ろにいる生徒たちは自信にあふれた表情を崩していない。

 生徒たちの放つ魔法はかつてルージュの放った初級魔法の再現である。


「放て!!」


 フレアの銃撃を皮切りに魔法少女の魔法は直線上に集められた一本道に殺到する。その砲撃速度は凄まじく、音が遅れて聞こえるほど。音速を超えているのだ。

 死人級は速度、貫通力、衝撃力ともに常軌を逸した砲撃を浴びて一度に何十と貫かれていく。そして、最後に地面に着弾すると大音量の爆発が起こり死人級をはるか上空にきりもみさせて吹き飛ばす。

 さらには新装備が威力を発揮する。砲撃は浄化の力が付与されており一撃で無魔の感染を取り払う。


「な、なんだしこれ」


 目の前の光景が信じられないとシンリーは空中で(ぼう)(ぜん)とする。

 たった1度の一斉射で500の死人級は(かい)(めつ)してしまった。本当に冗談としか思えない。


「なんで、なんで、――あんな火種みたいな砲撃、なんでこんな攻撃力があるのよ。あり得ないし」

 

 そして、ここに至りどうして相手がこのような細い一本道を用意したのかようやく理解する。今の魔法砲撃で一遍に貫き一掃するためだ。

 シンリーは油断し、まんまと敵の用意した狩り場に不用意なほどの()(かつ)さで貴重な戦力を投入してしまった。

 正面には魔法少女に指示したとフレアの凜々しい立ち姿をみとめる。


「あいつか。……私が手玉にとられるなんて。許せないし」


 ぎりっと歯を食いしばるシンリー。

 だが驚いているのは無魔陣営だけではない。ミレイユをはじめとする騎士たちももはや異次元とも思える戦いに息を飲んだ。


「あ、あり得ない。あんなのもう学生じゃない。今の学園は一体どうなってるんだい」


 ようやく声を絞り出したミレイユは思わずその場に立ち尽くす。


「そもそも今、全員無詠唱だったじゃないか。上級魔法を今の学生は無詠唱で出来るってことかい……。末恐ろしいねえ」


 それを聞いていたサリィはうっかり口を滑らせた。


「いえ、今のは初級魔法ですよ~~。上級魔法はまだできませんわ~~」

「はっ!?」


 ミレイユは耳を疑う。初級魔法と言えばマッチの火程度にしかならない魔法のはずだった。それは一般人向けの日常に用いるような、決して戦闘用にはなり得ないはずの魔法だ。


「聞き違いかねえ」

 

 ミレイユは幻聴を疑いたくなる。

 だがふと思い出す。つい先日王都に使いに出ていたときのことだ。彼女は知り合いに近衛騎士がいる。彼に飲みに誘われたとき愚痴のように聞かされたことがあった。

 

『今のウラノス学園の魔法少女科は魔窟だ。近衛部隊を追い詰めた敵を1人でたたきのめした学生がいる。俺は3日は立ち直れなかったね』

『グラード、あんたも腕の立つ騎士のはずだろ。幾ら何でも学生にへこまされるとは情けない』

『笑いたければ笑え。あの黒の魔法少女は化け物だ。だが味方であればこれほど心強いことはない。良かったな。おまえガラン駐在の騎士だろ。あれならどんな無魔が来ても大丈夫だ』


 そこでミレイユははっとする。車上に異色の黒の法衣を纏う魔法少女がいることに。


「まさか、ねえ」

 

 今の魔法砲撃を見たあとではグラードの話を()()(はなし)と馬鹿にすることもためらわれる。

 そして、戦場はシンリーの叫びで震え上がった。


「ふざけんなし。死ねえええ」


 悪鬼のごとく怒り、空を飛んでフレアに向かってくるシンリー。ミレイユは魔法使いに指示を出す。


「グローランス嬢を守れ。迎撃」


 騎士団の魔法使いがシンリーめがけて魔法を放つが長い詠唱では間に合わず結果、中級魔法による対空砲撃となる。


「あははは、中級魔法程度、(かわ)す必要もないし」


 事実、シンリーの纏う強大な反魔の防御は中級魔法を浴びてもビクともしない。


「させるかっ」


 騎士2人が強化した身体能力で飛び上がり剣で斬りかかるがシンリーは素手で受け止める。


「剣の魔力付与が足りてないじゃん。そんなんじゃ髪1本だって切れないよ」


 シンリーの回し蹴りで突風を受けたかのように騎士2人は勢いよく吹き飛んでいく。

 吹き飛んだ騎士の鎧は粉々に砕け地面に叩きつけられると爆発にも似た衝撃をまき散らす。


「ちいぃ。あの無魔、なんて強さだい」


 赤虎騎士団を突破したシンリーはまっすぐフレアに手の爪を伸ばして貫こうと手を伸ばす。シンリーはフレアの表情をみる。

 いま、正に殺されようとする瞬間。そのときの人間の絶望に染まった顔を眺めることを愉悦するシンリーはフレアの表情に不快感を持った。なぜならフレアの顔は絶対に大丈夫だという自信にあふれてたのだ。


「フレアさんに攻撃するということは……殺されても文句はいえないわよ」


 シンリーは全身に悪寒が走った。反射的に飛び退くと黒い魔法少女の剣閃が目の前を(かす)めていった。

 次の瞬間にはシンリーの前髪が綺麗に切断されハラハラと空を舞った。


「あぶなっ……」


 危ないと言おうとしてシンリーは危機がまだ去っていないことに気がついた。

 ルージュがすぐに追撃の魔法砲撃を無詠唱で放っている。しかも先ほどの赤虎騎士団の魔法使いとは比較にならない猛烈な熱線がシンリーを覆い尽くさんばかりに襲いかかってくる。


「このおおおお」


 反魔の盾を正面に形成し辛うじてはじく。

 たまらないとばかりにシンリーは更に上空に退避して安全圏まで離れた。

 シンリーは斬られた前髪を見て気がついた。ルージュの剣は一撃で反魔の防御ごと髪を易々と切り裂いていた。あの魔法少女の剣に反魔の防御は意味をなさないと。

 上空に逃れたシンリーをフレアは冷静に眺めていた。


「あれも空を飛べるのですね。グラハムと同じ純粋種なのでしょうか」

「どうするの。わたくしが倒しましょうか?」


 簡単に言ってのけるルージュに周囲の生徒たちは驚きの視線を向ける。


「そんな簡単に……。あの無魔はとても強いわよ」


 そう言ったのは大剣を大事そうに抱えている小柄な魔法少女である。彼女の名前はシャルロッテ。きらめくような金髪とサイドポニーテールが似合う快活そうな美少女だ。元々騎士の家系に生まれ、近接戦闘術はクラスでもパティやカズハと並びトップクラスである。雷の魔法を得意とし、(せん)(こう)のような(しゅん)(びん)さと雷撃で力を増した大剣による剣術を得意とする。

 

「そうね。けれでもわたくしはもっと強いわ」


 その言葉に嫌みはない。純然たる事実をただ淡々と語っている。

 ルージュが言うと魔法少女たちはそれもそうか、とおもわず納得してしまう。


「申し訳ありませんがルージュさんは適当に空の無魔を刺激しないように抑えてください」

「どういうことかしら?」

「今の最優先目標は住民の避難です。住民の安全が確保されるまで相手に主導権があると思ってください」

「なるほど、確かにそうね」

「恐らく一連の陰湿な策は上空の無魔によるものでしょう。見たところ狡猾ではあるものの頭に血が昇りやすい。下手に追い詰めれば何をしでかすか分かりません」

「まるで経験したことがあるかのような発言ね」

 

 それにはフレアがぎくりとわずかに反応したのをルージュは見逃さない。前世の記憶と経験があることを見透かしているかのようだ。

 だがあえて追求せず頷いた。


「了解よ。そのうちもう一体巨大な無魔が仕掛けてくるでしょう。皆さんフレアさんを頼みますね」


 滑らかな黒髪を優雅に掻き上げるとルージュは《マギカ・コンパクト》を取り出した。そして、蓋を開くと2つの宝玉を指で結び変身する。


変身(トランス)上位魔装法衣(ハイマギカコート)法衣選択(コートセレクト)《フリューゲル》」


 直後、純白の天使のごとき翼を生やしたルージュの幻影が現れ、黒の法衣のルージュと1つに重なる。

 それは重力のくさびから解き放つかのような軽やかな羽衣の法衣で身を包む。虹色の光の化粧がルージュの周囲を駆け巡る。そして清純さと柔らさを印象づけるルージュに変貌させていく。

 頭には月桂樹の冠が収まり、ひらひらとした装飾が胸元手足に現れ手には銀に輝く聖なる剣が収まった。

 そして、最後純白の魔力の翼を背に生やすとルージュの変身は完了する。

 化粧は女の子を別人に変える。その変貌ぶりに周囲の生徒たちはあ然とする。


「ず、ずるい。ルージュさん特別扱いじゃない」


 シャルロッテことシャルは思わずフレアに抗議の声を上げる。他の生徒たちもしきりに頷く。それほどにルージュは変身によって美しさに磨きをかけ、羨むほどの上質な魔装法衣に身を包んでいた。


「え、でも、ルージュさんは私の()()()をかわいい、素敵だといつも褒めてくれます。合宿のときだって皆さんにもチャンスはありましたが?」

 

 それを言われると生徒たちは視線が泳ぐ。フレアのいう《自信作》とはあのメルヘンチックかつ少女趣味まるだしの新装備。それを選ぶというのは抵抗がある。


「ではいくわ」


 微笑を残しルージュは空で威圧してくるシンリーに向かって飛び上がる。

 変身によってまるで性格まで変わったふんわりとした態度。そして、より強力に、空まで飛べるように進化した魔装法衣。生徒たちは実にうらやましそうに見送った。


「やっぱりずるい」


 シャルは次こそは外見よりも実をとろうか本気で悩んだ。こう見えて闘争心が強く、負けず嫌いである。



 厄介な無魔、空を飛ぶシンリーはルージュが空で相手をして完全に抑え込んでいた。必要以上に追い詰めず、手加減を悟らせないよう絶妙なバランスで戦っていた。

 その様子をガリュードは実に惜しいと言いたげに眺める。


「むうう、一番強そうな獲物を捕られてしまった。なんとうらやましいことか」


 それはガリュードの価値観でありシンリーから言わせたらそんなのこっちから願い下げだし、と喜んで放り投げそうなものだ。

 大木のような太い首を傾け鳴らすとガリュードは人の2倍以上あるその巨体で動き出す。


「さて、ワシも参戦しようかの」


 ガリュードは大きく口を開けると前方に強大な反魔の力が集まり渦を巻く。それが膨らみ直径8メートルを超えるほどになるとサリィのつくった壁の向こう、フレアたち魔法少女に向けて放たれる。


「《反魔剛烈砲》」

 

 石の壁はガリュードの砲撃に触れるといとも簡単に崩壊し大きく崩れ去る。そのまま勢いは衰えることなく《移動魔工房》に直進した。


「まずいのです。あの砲撃は上にそらして対処してください」


 いち早くガリュードの砲撃の危険性を察知したフレアが魔法少女たちに指示を出す。配置についたサリィが土の防御結界を上にそらすように傾けて展開する。続いて5人の魔法少女たちが支えるように補強ししていく。


「くうう、これはものすごく重い砲撃ですの~~」


 結界ごと魔法少女たちは圧力に押されて後方に引きずられていく。


「サリィ、このままじゃ後ろの移動工房に直撃しちゃうわよ」

「っ!? そうでしたわ。フレアちゃんがけがしちゃいますの」


 シャルに指摘されると、火事場の馬鹿力的に力を増したサリィがガリュードの砲撃を上方に跳ね上げてそらすことに成功する。


「ちょっと、サリィ。何でフローレアさんのことになると力が増すのよ」

「ふふふ、なんででしょうね」

「おい、学生ども、敵がくるよ」


 ミレイユの注意喚起の後、ガリュードは更に壁を壊しつつ大聖堂の敷地内に侵入する。

 その巨大な人型に騎士たちは驚く。


「何だ、あれは巨人か?」

 

 ガリュードは手に持つ巨大な(こん)(ぼう)を軽く振るだけで周囲にある壁を吹き飛ばしていく。そこからは兵卒級2000近くが大挙してなだれ込んでくる。


「くっ、あのデカ物。報告にあった白狼騎士団をやった奴だね」


 ミレイユは怒りで強く剣の柄を強く握りしめる。同じガランを守護する騎士団同士交友もあったためその怒りは抑え切れそうもないい。


「さあ、さあ、戦を楽しもう。まずはこの無魔の群れから民を守れるか?」


 今にもガリュードに切り込みたいミレイユだったが兵卒級の数が多すぎる。味方の騎士たち、西門の兵を入れても300にも満たない。2000の兵卒級を抑えるだけでも至難に思えた。

 そこにフレアの声が戦場に響く。


「《移動魔工房》砲撃システム起動。目標、無魔兵卒級及び死人級――放て!!」

 

 移動魔工房の車輌に取り付けられた無数の魔装銃。一車輌ごとに片面だけでも8門ずつ取り付けられたそれは全車両側面80門。それが一斉に魔法砲撃を開始し次々に兵卒級を撃ち抜く。

 中にまれに混じる死人級すら浄化の込められた弾丸を受けてあっけなく倒れていく。無魔の大挙して押し寄せる圧力は魔装銃の弾幕によって大半をえぐり取った。


「おおおーー、やりおる。次々とこちらの猛攻をしのぎよるわ」


 味方の劣勢にガリュードは顎をしゃくりようやく前に出る。


「ならばワシの猛攻を防げるか。人間ども」

 

 巨体は大地を揺らしガリュードは大きな体に見合わない速さ突進してくる。ミレイユはその危険性を察知し騎士を集中し迎え撃つ。


「そのデカ物を突破させるんじゃないよ」


 ガリュードは途中、魔法使いの上級魔法にさらされるもいとも簡単にはじいていく。


「馬鹿な、上級魔法すら奴ははじくのかい?」


 それは魔法少女の砲撃も一緒でこちらは当たると微動はするが表面の肌を軽く傷つけるだけでたいしたダメージに至らない。


「ワシに砲撃は無駄よ。倒したければ接近戦でこい」

 

 振り上げるガリュードの棍棒にミレイユはとっさに指示を出す。


「全員散開、大きくよけなっ」


 ミレイユの判断は適切でガリュードの振り下ろした一撃は上級爆裂系魔法のごとく辺りを吹き飛ばす。えぐられた大地がつぶてとなって襲いかかる。騎士たちはそれを身を低くして躱し対応する。


「ほう、ここの騎士たちはいい動きをするな」

「余裕ぶってんじゃないよ」


 巻き上がる砂塵に紛れてミレイユはガリュードに渾身の剣の一撃を見舞う。だが。


「なにっ?」


 魔力付与された剣は確かに通ったがあまりの強固な体に表面を傷をつけるだけにとどまる。


「いい攻撃だ。だが少々パワーが足りなかったな」

「冗談じゃないよ、渾身の一撃だったはずだよ」


 ミレイユは舌打ちしつつすぐに距離をとる。その間も騎士が続くか徐々にガリュードの攻撃に倒れ数を減らしていく。


「がははは、どうした。もう打つ手なしか。――むっ」


 ガリュードは気がつくと下半身を石で固められていることに気がつく。サリィの土の魔法である。そのせいで一瞬動きが止まった隙に魔法少女たちが一斉に魔力を込めた全力パンチをたたき込む。そして、最後にシャルが全身を雷で強化し発光させつつ大剣でもってしたたかに打ち払いガリュードを吹き飛ばした。

 それには味方から歓声が上がる。


(すご)い、我々ではビクともしなかった無魔を吹き飛ばしたぞ」

「……とんでもないねえ。学生なのになんて力だい」

 

 弛緩しそうになった空気をガリュードの笑い声が吹き飛ばした。


「ふははは、楽しいぞおおお」


 起き上がるガリュードの体にはたいした傷は見られない。魔法少女の攻撃すらほとんど効いていないのである。


「ワシを砕けるのは純粋にして圧倒的なパワーのみよ」


 ガリュードは全速力で駆け出し移動魔工房に突進する。


「何をする気だい?」

「貴様らが心気なく戦えるようにその足手まといども掃除してやろう」


 ガリュードの目的を知った魔法少女たちは慌ててガリュードを止めに向かう。しかし、圧倒的なパワーを前に次々と吹き飛ばされていく。


「きゃあああ」


 ガリュードはそして、ついに移動魔工房に迫ると叫んだ。


「さあ、けしとべええええ」

「だめええええ」


 魔法少女たちが叫びを上げる中で1人ガリュードに立ちはだかる者がいた。

 

「ふんっ」

 

 それはマルクスだ。巨体によるタックルを正面から受け止めたのである。頭から受け止め額から血がしたたり落ちる。それでもマルクスはしっかりとガリュードを止めきった。そのまま手頃な位置にあったガリュードの金的に頭突きをお見舞いする。


「どおおりゃああああ」

「ほおおおおおおーーーーーーー」


 マルクスは気合いのこもった声をあげた。ガリュードは初めて痛そうな声を上げて内股のまま後ずさっていく。見ていた男の兵たちはなぜか揃って内股になり顔が青ざめた。


「あはっ、マルクスっ!!」


 フレアは思わぬ友人の活躍に嬉々とした声を上げる。


「男が弱い者いじめしてんじゃねえよ。一般人を狙うようなクソヤローは俺が叩き潰してやる」


 拳を手のひらにバシンッとぶつけつつマルクスは言った。

 

「がははは、この中で一番歯ごたえのありそうな騎士に出会えたな」


 ようやく立ち直ったガリュードはにやりと笑みを浮かべた。マルクスを最高の標的として捕捉したのである。



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