第20話 魔法少女特訓編 『魔法に大事なのは心です』
「私は新理論を発見したとき『パンドラの箱』を開けてしまったと思いました」
神妙な様子で語るフレアの目はどこか生徒たちを哀れむようでもある。
王女は聞き覚えのない言葉の意味を質問する。
「フローレア、それは何なのですか」
前世の記憶がないティアナクランたちに分かろうはずもない。
「失礼、動揺のあまり口が滑りました」
「あなたが動揺ですか」
あなたも動揺するのですねと本気で考えていそうな表情を読み取ってフレアはちょっと傷ついた。
「私が動揺したらいけないのですか」
「いえ、少しばかり意外に思えただけですよ」
「ティアナは普段私をどう思っているのか気になるところですね」
フレアはこほんと咳払いして区切る。皆にもわかりやすいように言い直した。
「つまりは触れてはならないものに手を出したしまったということです」
「新理論とはそれほどまでに恐ろしい事実だったのですか?」
「ええ、ある意味では……」
またも哀れむような、同情するような目で周囲を眺めているフレア。
それは一体どういう意味なのか、生徒たちは不安にかられていく。
「正直これを皆さんに教えるべきどうか私自身迷っていたのです。しかし皆さんの意志を受け取り勇気を戴きました。例え新理論によって皆さんがどれだけ凹もうと遠慮なく教えますのでそのつもりで」
フレアがここまでためらう新理論。まだ始まってもいないがクラスの生徒たちは既に特訓の申し出を後悔する者もいる。
あのフレアがここまで躊躇するのだ。警戒するのも無理からぬことだった。
フレアは手を打つとアリアを指名する。
「まずは確認をしましょう、アリアさん。魔力とは何ですか」
「はい、人の清らかな善の精神から生じるとされています。魔法を発生させるために必要な源です」
「それでは魔法とは何でしょうか?」
「魔力を用いて法則に従い引き起こす超常現象を魔法と呼びます」
「よくできました。それが王国の、いえ世界の常識ですね」
当然とばかりに胸を張るアリアにフレアは残酷な言葉を告げた。
「でも従来の魔法学は間違ってますのでもう忘れちゃってください」
フレアは実に気軽に言ってくれた。
最初、アリアは理解できず固まった。そして、遅れて理解すると素っ頓狂な声を上げて叫んだ。
「ええ~~~~っ!!」
フレアは世界の常識を間違いと主張する。
それは世界中の学者にけんかを売るような暴挙だ。
「フローレア、あなたは王国の魔法学界《魔技研》に宣戦布告するつもりなのですか」
「そんな気は毛頭ありません。私は事実を言っているだけです」
同じことだとティアナクランは溜め息。
フレアが魔装宝玉の量産から空飛ぶ魔導具に至るまで、国の学者をさし置いて次々仰天の発明を成し遂げている。それにより学者たちはただでさえピリついている。
「これは国が荒れるかもしれませんね」
国が抱える学者たちが大激怒する様が容易に想像できてしまう。王女はどう根回ししたものかと既に頭を抱えた。
フレアは王女の苦悩には気がつかずに話を進める。
「そもそも国が定める魔力の定義は人から生じると限定しています。それではすぐに矛盾に突き当たるのですよ」
それにはユーナがすぐに思いついた。
「なるほどね。大都市に魔力が満ちるならともかく人が住まない自然豊かな森や海などにも魔力が満ちるのはおかしいわ」
「さすがユーナさんはすぐに気がつきましたね。何にでも疑問を持つ姿勢は素晴らしいですよ」
ユーナは1度疑問を持つと次々視点を広げていく。そして、気がついた。
「そうよ、そもそも人だけが魔力を内包するのならば、他の動物たちはもっと簡単に無魔化してしまうはず。しかし家畜も含めて王国内でそうなっていないのは――魔力は何にでも発生しうるのね」
ユーナの結論にそんなことあり得ないという意見が次々上がるもフレアはユーナを支持した。
「素晴らしい。もうほとんど正解ですよ」
フレアは黒板に人を描くと更に周囲に植物や動物なども記述する。そして、ひとくくりにしてしまう。
「そう、魔力は人だけの特権ではありません。動物も、植物も、果ては物にだって魔力は宿るのです」
それにはアリアが反発する。
「あり得ませんわ。百歩譲って動物は魔力を宿すとしましても物に魔力はありませんわよ」
「どうしてですか?」
「そ、それは……」
答えられないアリアにフレアは指摘する。
「アリアさんは常識にとらわれすぎですね。まあ、そういうまっすぐな性格はとても可愛いと思いますけれど」
フレアはふふっ、と笑うとアリアは顔を赤らめて縮こまる。
「か、かわいい」
どこか嬉しそうな反応を見せるアリアにリリアーヌがむっとしたように注意する。
「フレアっち、それ授業に関係ないと思う」
ティアナクランも頷いてぎろりとフレアを睨んだ。
(わたくしは可愛いといってもらった記憶はないのだけど)
口にはしないけれどティアナクランは内心でフレアに怒りをつのらせる。
「はわっ、ティアナ、怒っているのですか?」
「怒っていませんが?」
「そうですか、よかった~~」
「――怒っていませんが!?」
「なんでもう一度言ったのですか?」
「知りません。フローレアのばか」
フレアは理不尽だと肩を落とす。どうしてリリーばかりかティアナまで怒っているのかまるで分からない。
すっかりへそを曲げた王女にフレアが困っていると答えを知りたくて仕方ないユーナがせかす。
「それでフローレア教官は何を根拠に物にも魔力が宿ると考えているのですか?」
フレアは天の助けとばかりにユーナの質問にのった。
「ええっとですね、先入観を取り払って考えてみてください。そうすれば私たちの身近な所に既に答えがあると思いませんか」
そこでフレアが自身の胸元の装飾を指さした。
それには多くの生徒が気がついた。
――魔導具、それも魔法少女の変身に不可欠な魔装宝玉だ。
「なるほどね。魔装宝玉は確かに魔力の塊だわ。そういう物だと思い込んですっかり失念していたわね」
「ええ、魔力とは森羅万象どこにでも存在しうるものなのですよ。つまり、魔力とは自然そのものから生じる。それが正解なのです。ですがさっきユーナさんにほとんど正解と言ったのには理由があります。それは例外が存在するからです」
黒板には対立するように存在する無魔を描き出す。
それには誰もが納得する。
「それが無魔です。彼らの反魔の力はまるで魔力と対極。彼らは魔力を持たない例外であり自然全体の敵といえましょう」
「けれどフローレア教官、1つ分からないことがあるわ。どうして動物の魔力を人は認識でできないのかしら」
ユーナの疑問に実に感心した様子でフレアはしきりに頷く。
「いいですね。そこにも気がつきましたか。理由はいくつかありますが大きく2つ説明しましょう。1つは魔力が人に比べると小さいこと。もう1つは人の魔力感知能力は意外と大雑把なのですよ。植物や動物の魔力は大気中の魔力などに紛れて見分けがつきづらい。だから動物の魔力はないのだと誤解するのでしょう。植物なんかは特に自然にとけこみすぎて魔導具でも用いない限り選別できないことでしょうね」
基本である魔力という認識すら誤っていた。その事実を突きつけられ生徒たちの多くは頭を悩ませることになる。
彼女たちのそんな苦悩を知ってか知らずかフレアは容赦なく次の常識を破りにかかる。
「次は魔法について説明しましょう。魔法に関してはそもそも根本から間違っているので覚悟してください」
アリアがそれはおかしいと訴える。
「あり得ませんわ。現にいままでそれで魔法行使が可能でしたのよ。どうしてそれが間違いだとおっしゃいますの?」
フレアは実に嘆かわしいと首を振り外を見上げて嘆く。
「不幸なことに間違った方法でも魔法を使えてしまった。それが誤解を生んだのですよ」
「では魔法とは何だとおっしゃいますの」
「おおよそ魔法とは精霊が起こす奇跡のことですよ」
ピンとこない。それは教室の生徒たちの様子からありありと見て取れた。
フレアは黒板に図を描きながら説明する。
「皆さんがいま思い浮かべた精霊は恐らく大精霊のことでしょう。人型で高い知能を持ち、魔法基本5属性の火、水、風、雷、土をそれぞれ司る存在が有名です。国によっては神として信仰されていますね」
「ですが、皆さんが認識できないだけでこの世界は多くの精霊であふれています。例えばこの教室にだってたくさんいますよ」
そこでパティのすぐそばを指さした。
生徒たちは注目するがやはり見えるはずがないと諦める。
「パティさんは風の精霊に好かれているようですね。この場では特に強い力を持つ精霊さんのようです」
フレアはルージュに目配せする。2人はいたずらを企む子供のような顔でうなずき合った。
「仕方ないわね。私が特別に対話できるようにしてあげるわ」
ルージュが席を立ってパティの元に向かうと何もない空間に手を差し伸べる。
手のひらには膨大な魔力が集中し高密度の魔力球体が発生する。
「『仮契約』発動」
ルージュが何をしてるのかティアナクランだけが理解した。
驚きに腰がうきそうになる。
(精霊の仮の器を作る気だわ。一体どれだけの魔力と技術が必要だと……)
そして、ティアナクランはじとっとした目でフレアにそっと詰め寄る。
「フローレア、彼女について後ほど説明してもらいますよ」
「え、何で怒っているのですか」
「彼女の力はもはや学生の枠を超えています。以前、近衛部隊を救った魔法少女がいると報告も受けています。いろいろ聞かせてくださいね」
「あ、はい。ごめんなさい」
「あら、どうして謝るの?」
ぷるぷるとフレアが恐怖におびえていると教室が驚きに包まれる。ルージュが作り上げた魔力の塊は人型をとり羽を生やした体長40センチほどの精霊を作り出した。
風の精霊はあどけない少女の姿をしており風の法衣に身を包むとぱあっと花が咲いた様な表情になり実体を手に入れたことを喜ぶ。
「わああ、体がある。この姿をとれるのはもっと先だとおもってたよ。夢みたい」
風の魔力光を振りまいて教室中を飛び回る風の精霊。
生徒たちは驚きの連続で言葉がでてこない。
風の精霊はルージュに向き直ると元気よく挨拶する。
「初めまして、あたしは風の精霊ジルっていうの。あなたがあたしの契約者?」
「そうよ。ルージュというわ。落胆させるようで申し訳ないけれど仮契約だから数日すれば肉体を失うわ。ごめんなさいね」
「そっかーー。でも数日だけでもいいや。これで皆に自慢できるよ」
「私のお願いは1つ。精霊について皆の疑問に答えてあげることよ」
「うん、ちゃんと見ていたから分かってるよ。まっかせて」
そこで恐る恐るパティが風の精霊に問いかける。
「本当に精霊さんなの?」
「うん、そうだよ」
見るからに人とは違う容姿。パティは徐々に実感すると前のめりではしゃぐ。
「うわああ、ドッキドキの出会いだよ。私はパティ、友達になろう」
「うわああ、始めての人間のお友達。ときめきはっぴぃ。もちろんおーけーだよ」
ぴょんぴょん跳び上がり喜ぶ似たもの同士の2人にアリアは顔が引きつった。
「1人でも騒がしいパティさんが2人に増えましたわ」
規律を重んじるアリアにとっては頭の痛い案件が増えたようである。
「ではパティさん、そよ風程度でいいのでジルさんに願いしてみてください」
フレアの提案にパティはジルにお願いする。
「というわけなんだ。お願いしてもいい」
「いいよー、じゃあ、ちょっとだけ魔力もらうね」
ジルは魔力の一部を自分に、残りを魔法の行使のためにパティからもらい受けて教室中に春を感じさせるような爽やかな風を対流させた。
その風を感じ取りフレアは髪をなびかせ、かき分けながら言った。
「うーーん、いい風ですね。というわけでこれが本来の魔法なのですよ」
「「「えっ」」」
フレアの突然の結論に生徒たちは理解に時間を要した。
「つまり、精霊にお願いして魔法という奇跡を起こしてもらう。それだけのことですが、そんなに難しいことですか?」
「「「ええ~~っ!!」」」
生徒たちの驚きが広がり隣の教室にいたフロレリアがこっそり廊下から様子を窺いにくるほどどよめいた。
「従来の魔法学では魔法術式と詠唱を基本として発動させると教えてきました。ですがそんなこと必要ありません。魔法は精霊の力を借りて行うものなのですから。精霊に伝わりさえすればいいのです」
生徒たちどころかリリアーヌも、王女すら衝撃の事実に固まったままだ。
「ですので今までの魔法理論と詠唱というシステムは実に回りくどいといわざるを得ません。むしろこの魔法方式が人類の魔法を弱体化させていると言っても過言ではないでしょうね」
フレアの言葉を飲み込み考え込んでいたティアナクランは疑問を抱く。
「しかしフローレア、それでも詠唱がなければ精霊に魔法の意志を伝えるの困難なのではありませんか?」
「そうでもありませんよ。そもそも上級魔法少女は無意識に行ってきたことです。それが《無詠唱》です。そこにヒントが隠されています」
王女はフレアの言うヒントに心当たりがない。更に踏み込んで尋ねる。
「無詠唱は研鑽によって行程の省力を極限に行った際に会得する奥義にも似たスキルです。それも威力と難易度が上がるとやはり詠唱は必要です。どこにヒントがあるというのですか」
「つまり魔法を通じて精霊たちとコミュニケーションを重ねた末に以心伝心が可能となった、それ昨今の無詠唱魔法です」
フレアは心臓のある左胸に手を当てる。
「私は以前最初の授業で魔法少女に大切なのは《心》だと説きました。精霊と以心伝心する。それが私の教える新しい魔法の形なのです」
「以心伝心、それが可能になるまでどれほどの時間がかかるか」
それを考えると従来の魔法学がやはり有効なのではとティアナクランは考えた。
だがフレアは王女の懸念を否定する。
「大丈夫ですよ。実はルージュさんにはとある方法で先に実践してもらいました。すると1日でマスターしましたよ」
当然とばかりにルージュは頷く。
「そうね、以外と簡単だったわ。今では上級魔法も無詠唱で可能よ」
それにはティアナクランが安どする。
「なるほど、それならばどうにかなりそうですね」
そこをリリアーヌが慌ててとめる。
「駄目よ、王女様。ルージュの1日は全然参考にならないから」
それには周囲の生徒たちも同意する。
ルージュさんで1日なら私たちで頑張れば3ヶ月かな。
うーーん、もっとかかるんじゃない。
なにやら後ろ向きともとれる生徒たちの話が耳に入る。ティアナクランはフレアに確認する。
「実際はどのくらいかかる見込みかしら」
「早くて2ヶ月、半年には全員マスターして欲しいですね」
それを1日で成し遂げたルージュという生徒は何者なのか。王女は警戒にも視線をルージュに向ける。
ルージュは視線に対して涼しげに言った。
「私、天才だから」
暗に王女よりも自分は上だと言われた気がしてティアナクランは内心穏やかではない。
そのあとにルージュが気になることを言った。
「それよりも皆さんは気を確かに持つことね。フレアさんが本当に恐れていたことにはまだ触れていないのだから」
「えっ?」
冒頭でフレアが言っていた触れてはならないもの、それは世界の常識をひっくり返すことだと思っていたティアナクランはいぶかしむ。
同時にまだ懸念があるのかと聞き返すことにためらいをおぼえた。
フレア自身どのように話すべきか迷っているように見える。
(フローレアがこれほど躊躇を見せるなんて一体どれほど恐ろしい事実なのでしょうか)
そんな空気をぶち壊すように陽気な精霊が爆弾を放り込む。
「ねえ、それって人間社会に蔓延している病のことを言ってるの?」
「病? それはどういうことですか」
ティアナクランの質問にジルは言った。
――言っちゃたのである。
「みんな魔法を使うとき詠唱っていうの? 変な言葉使うよね。精霊の間では人間さんの心が病んでるんだなってわら……じゃなくて心配してるんだよ」
ジルは周囲を哀れんで笑われていることを心配に言い換えた。しかし、ここにいる全員が言い換えた意図を正確に読み取ってしまった。
思い返してみれば詠唱とは人に聞かれると恥ずかしい台詞が多い。
よりよい詠唱の言葉を探して1人練習するときはとても人様には聞かせられない台詞もある。
そして、皆が気づくのだ。
誰も聞いていないと思っていた恥ずかしい詠唱の試行錯誤を精霊たちに聞かれていたのだという事実に。
「例えば、よく使われる火の中級魔法に『我が魂に宿る情熱の炎よ、愚かなる者どもを焼き尽くせっ』とかあるでしょ。火の精霊たちそれを聞くたびに吹き出して応じてるんだよね。あれ、変えたがいいよ」
「「「ああ~~~~っ!!」」」
もう教室は大パニックだ。もはや新校舎を震撼させるほどの大絶叫が鳴り響く。
アリアは顔を真っ赤にして頭を両手で抱え、机に突っ伏してうなり声を上げる。
パティはからからと笑っているようだが目尻に涙が溜まると座り込んで両手で顔を覆う。
「ひゃあぁーー、恥ずかしい」
カズハは屈辱のあまりその場で腹を切ろうとするので隣の生徒が慌てて止めに入る。
他にも隅っこで落ち込む子や、あたふたうごき回ったりと教室の混迷のほどは壮絶を極め収拾の見通しすらたたない。
こういうときに収拾するはずのリリアーヌすら過去の恥ずかしい詠唱を思い出し悶えている。
(やはり私はとんでもないものに手を出してしまったようです)
魔法を使えないフレアはこのことに関しては他人事であり、達観してその様子を眺めている。
そこで意外と落ち着いている一握りの生徒に気がつく。
ユーナの落ち着きは予想していたがミュリがむしろ誇らしげに胸を張っているので気になった。
「ミュリさんは平気なのですか?」
「はい、わたしの詠唱はフレアお姉様を称える言葉ばかりです。そこに恥じ入るものなんてありません」
ミュリは鼻息を荒くして力強く言い切った。
「……ああ、そうですか」
これにはフレアの方が赤面してしまう。ミュリの詠唱は『フレアお姉様のぷんおこ~~』などと変わった詠唱ばかりだ。
ミュリの詠唱は聞いているフレアがダメージを受ける。追求すると藪蛇になるので視線を移した。
移した視線の先ではティアナクランがジルに詰め寄っていた。
「ジルさん、まさか、わたくしの昔の詠唱も精霊に聞かれていたのでしょうか」
「ああ~~、ティアナクラン様の詠唱はあの落ち着いて清廉なことで有名な光の大精霊様を大爆笑させたことで語り草だよ。光の女神とも言われるあの御方に気に入られたその詠唱は世界中の精霊に知られていると思う」
「せ、世界中……」
もはや口止めどころの話ではない。ティアナクランの恥ずかしい詠唱が世界中に拡散してしまった事実を知り、絶望のあまり崩れ落ちた。
だがティアナクランはすぐに立ち直り涙目で机を叩く。そこには悲壮な決意が垣間見える。
「皆さん、傾聴なさい!!」
王女の言葉にようやく落ち着きを見せる1年G組の生徒たち。
ティアナクランは宣言する。
「我が国はこのおぞましい病から脱却しなくてはなりません。この恥の連鎖をわたくしたちで断ち切るのです。一刻も早く無詠唱の極意を会得しますわよ」
「「「はいっ!!」」」
王女の号令に魔法少女たちはかつてないまとまりを見せる。
全ては人類に蔓延する中二病撲滅のため彼女らの心は1つになったのだ。




