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第116話 魔技研編 『マコト参戦。戦況を覆せ!!』

 ダールトン(きょう)率いる王国側の防衛部隊は既に何時崩れてもおかしくなかった。兵も半数に落ち込み、敵を押さえ込むことも難しくなっていた。

 辛うじて支えていらえたのは近衛将軍ダールトンと近衛の精鋭騎士たちによる奮戦によるものであった。

 岩の鎧兵が薄くなった防衛ラインを突破し、後方に控える魔法少女たちに迫って既にそれなりの時間がたっている。


「ミュリさん!?」


 長い間、大勢の兵に支援魔法をかけ続けていたミュリがついに倒れる。魔力の()(かつ)(じょう)(たい)となり意識を失いかけていた。

 アリアが慌てて駆け寄り抱き留めると、支援魔法を引き継ぎ戦線を支える。攻撃には炎の付与を。防御には土の強固な守護の魔法を戦場に広げていく。

 倒れたのはミュリだけではない。Gクラスでも特に若い年少の魔法少女たちが既に倒れて後方に下げられていた。


「ごめん、アリアちゃん。もうすこし頑張りたかったけど……」

「もう良いのですわ。あなたは十分に頑張りましたもの。後は任せなさい」

「後は……おね、が……」


 アリアの言葉に安どした表情を浮かべるとミュリは意識を手放した。他の魔法少女にミュリを託してさがらせるとアリアは戦場に視線を戻す。

 聞こえるのは兵の悲壮な悲鳴と怒号。漂ってくる血の匂いが随分と濃くなってきているのが分かる。それだけの命が失われているのだ。

 その悲惨さに若い魔法少女は気分が悪そうだ。それでも必死で立ち向かっていく。


「まるで前線にある故郷を思い出しますわね」


 アリアは前線に接する伯爵領の貴族令嬢だ。こんな光景が懐かしいなど胸にむなしさがつのる。そして、平和なはずの王都にまで敵が迫ってきている現実に歯を食いしばる。


「アリアちゃんも無理しないでね」


 パティがガンマギカナックルで次々と魔法弾を岩の魔物にぶつけて吹き飛ばす。飛ぶ風の魔法拳によるすさまじい弾幕が襲いかかっていく。鎧を粉々に粉砕し、行動不能になるまで破壊する攻撃力と攻撃回数は目を見張るものがある。

 しかも離れた場所にいる敵が味方の兵を攻撃している所にも飛ばして味方の窮地を救っている。ガンマギカナックルは使い勝手の良い魔法奥義である。


「パティさんも残りの魔力には注意なさい。その魔法は消耗が激しいのではなくて」

「そうもいってられないでしょ」


 (せん)(めつ)(りょく)とカバー範囲の広いパティが戦場を支えなければ敵がここを突破してしまうかもしれない。そうなればもう阻むものはない。抵抗できない民が(じゅう)(りん)されるだけだ。

 そして敵に奥まで差し込まれた今、パティとサリィの構築する壁によってギリギリ戦線を支えている。

 セリーヌは先ほどからじっと空を見つめて警戒しているように見えたが、不意に警告を促す。

 

「――っ、総員、上からの攻撃に……うええ!?」


 赤の巨人の動向を警戒していたセリーヌは確かに動きを察知したが予想外の攻撃に頭が真っ白になった。


「どうしたのですか」

「奥の巨人からパンチが飛んできますよ。皆注意して!!」

「パンチ? パティさんのような砲撃が来るとでも……ってなんですの!?」


 アリアも驚いた。ほんとに巨人から馬鹿でかい腕が空を飛んで向かってくるのだ。

 まるでロケットパンチのようである。


「「「まんまパンチじゃん」」」

「あんな質量体、魔法障壁でなんて防げません。みんな全力回避っ」


 セリーヌの声を聞いて魔法少女たちは飛来する巨大な拳から慌てて逃げ惑う。

 そんな中で1人の魔法少女が逃げ遅れていた。サリィである。


「あら~~、皆さんどうしましたの~~」

「サリィさん、上見て、っていうかさっさと逃げなさい」


 おっとりとほほに片手を当ててのんびりと彼女は首をかしげる。ようやく視界にとらえても、まるで危機感が感じられない。叩きつけるような轟音が響いても動じない彼女のマイペースさが今は徒となり逃げ遅れた。


「あらあらまあまあ。これは大変ね。どうしましょう」

「危ない!!」


 悲鳴のようなアリアの叫びが戦場に響く。飛んでくる腕は10メートル近くあり、岩と金属で覆われた物体がものすごい速度で飛んでくるのである。幾ら身体強化されている魔法少女でも耐えられる衝撃ではない。

 誰もが駄目だと目を背けそうになったとき、サリィの前に降り立った人物がいた。

 空から勢いよく着地し力強く立ち上がるとパティのように拳をかまえて魔法砲撃の体勢を作る。


「あれってまさか……パティさんのガンマギカナックル?」


 疑問形なのはサリィの前に立った人物がパティではなかったことだ。それも男である。人間の男性は遠距離魔法砲撃を苦手としている。それゆえに不可解だった。

 あらわれた少年の拳は(うな)るような超高音を鳴らし、魔法力の塊が寄り集まり凝縮させていく。

 そこに込められた魔力は見ている魔法少女たちが身震いするほどに大きく圧倒的だ。


「ガンマギウスナックルゥーーーー」


 しっかりと力を溜めた魔法砲撃は少年の力強い拳の振り抜きによって解放されていく。


「ギガ・ストライク!!」


 少年の拳より飛び出す魔法砲撃は向かってくるパンチに負けず劣らずの巨大な魔法の拳を形作り勢いよく射出されていく。荒れ狂うエネルギーの塊が赤の巨人の拳と衝突しぶつかり合うと、衝突による突風で周囲の家屋の屋根が吹き飛んでいった。

 しばらく力は(きっ)(こう)しているかのように見えた。だが巨人の拳に亀裂が入りそれがみるみるうちにそれは広がって、少年の魔法砲撃がまっすぐに巨人の腕を貫くと、空高く駆け抜けていく。


「す、すごすぎますわ、なんて威力の魔法砲撃ですの」


 ほうけているのはアリアだけではない。Gクラスの魔法少女たちを始め、王国兵や岩の魔物たちすら足を止めて戦場に降り立った少年に注目していた。

 少年は振り返り座り込んでしまったサリィに手を差し伸べる。


「大丈夫ですか。俺が来たからにはもう敵の好きにはさせません」


 にこりと優しく微笑む少年にサリィは少しだけ顔が赤い。それは尻餅をついたことによる羞恥か、それとも別の要因か。手を借りて助け起こされながら名をたずねる。


「あなた様はどなたでしょうか」

「ああ、そうか。初対面だったか。俺はホージョー・マコト。魔法少女の味方だ」

「……ホージョー、様。そうでしたの~~、あなたがあのうわさのフレアちゃんのお兄様ですのね~~」


 マコトは頷くとセリーヌに目を向けた。

 

「セリーヌさん、全軍に一時後退の魔法信号を」

「ん? 私は自己紹介した記憶がないのですが。それよりどうするつもりですか」

「俺がこの兵団を無力化します」

「はあ? たった1人でどうするつもりなんですか」

「1人ではありませんよ」


 マコトが空を指差すとティアナクランたちが空にある。赤の巨人との間に割って入り、魔法少女たちを率いて戦闘状態に入った。それを見た王国兵たちがその姿に勇気づけられ力を取り戻したように立ち上がり剣を握りしめる。


「姫様だ、姫様が来て下さったぞ」


 王国最強の魔法少女の存在は王国兵にとって何よりも力になる。息を吹き返したように王国軍は意気を取り戻し戦いを再開しだした。

 ダールトンもまた疲れているであろう近衛部隊に対して激励を飛ばす。


「姫様が戦っていらっしゃるぞ。近衛部隊、今一度奮起せよ!!」

『『『応』』』


 更に戦場にはレイスティアが援護に入る。雷撃の槍を無数に周囲に展開すると空から岩の鎧兵を貫き動きを封じていく。

 そして、マコトに寄り添うように降り立った。


「セリーヌさん、私からもお願いします。すぐに信号魔法を」


 レイスティアにまでお願いされるとセリーヌもようやく納得した。


「分かりました。いきますよお」


 3色の光の魔法球を空に打ち上げると轟音と共に弾けていく。強い輝きが日中の空を照らした。それが後退の合図と知るや王国兵は動き出す。


「ティア、王国兵の撤退を援護する。負傷して動けない兵を頼む」

「任されました」


 レイスティアは広域に魔法を展開すると風の魔法で次々に倒れて動けない王国兵だけを空に巻き上げて後方に回収していく。

 まるでティアナクランのような(せん)(さい)で大規模な魔法を行使するレイスティアに周囲で見ていた魔法少女たちが(かん)(たん)の声を上げた。


「すごい。まるで殿下のような高度な魔法をつかえるのですわね」


 そんなアリアにマコトから鋭い指示が入る。

 

「アリアさんは魔法少女を指揮して逃げる兵の援護を」

「了解ですわ」

 

 ついうっかり返事をしてしまったアリアは言ってからはっとする。まるでフレアから指示されたかのように違和感なく受け入れてしまった。


「あら、わたくしったらどうして2つ返事で受け入れましたの?」

 

 困惑した様子でアリアはマコトを視線で追う。

 一方でマコトは神龍眼を起動。赤い魔力で輝く瞳術により、亜空間から無数の魔装剣を出現させる。その数は10。高密度な魔法によって形成されていく刀身はそれぞれの属性色に輝き、『サイコキネシス』のスキルで自在に戦場の各地へと差し向けた。


「スキル『千里眼』発動」

 

 続いて戦場空間を千里眼で把握。戦場各所に死角なく目があるような感覚。頭の中に入る情報を元にして、離れていても手足のように魔装剣を自在にあやつっていく。

 逃げる王国兵を援護し次々に鋭い魔法剣が岩の魔物の手足を切り落とした。


『なっ、魔法の剣が勝手に!?』

『我々の撤退を援護してくれるのか』


 王国兵は使い手もなく、しかし的確に攻撃する現象に一時我を忘れて見てしまう。

 水の魔装剣は超水圧で刀身が形成され、レーザーカッターのように綺麗に切断していく。王国兵たちがあれほど苦労した防御力をいとも簡単に突き破る攻撃力には言葉もないようだ。

 他にも、赤い刀身の魔装剣が戦場を切り裂いていく。刀身の中心部は常軌を逸した温度に達して白く変わっていく。その刀身が鎧ごと岩の体を切る。切り口は赤く溶け落ち、焼き切るというよりは溶かして切り進んでいく。


「立ち止まるな。速やかに後退せよ!!」


 ダールトン卿が最後尾で兵を援護しつつ撤退を促す。この声に王国兵たちはようやく我に返り走り出していく。

 アリアはマコトの後ろ姿をじっとみつめながら、彼の能力に驚き手に力が入る。視線も縫い付けられたように彼から目を離せないでいる。


「なんて魔法制御力。彼は本当に人間ですの」

 

 ほどなくしてマコト自身も単身飛びだして兵の流れに逆らって駆け抜けた。マコト自身は魔装銃剣を二刀流装備。敵に鋭く切り込んだ。敵集団の前に躍り出ると凄まじい斬撃音が矢継ぎ早に鳴り響く。岩の鎧兵の手足が吹き飛んでいく。


「誰かは知らぬが助太刀感謝するぞ」

 

 そこにダールトン卿も合流し、マコトとともに襲い来る岩の鎧兵たちを相手に斬り結ぶ。岩の魔物といえば鈍重な想像をしがちだがここにいる敵は決してそれには当てはまらない。

 大きな脚部に取り付けた装置によりホバークラフト機能に似た現象を引き起こす。体がわずかに浮き上がり、地上を滑るように駆け抜けるのだ。


「油断するでないぞ少年。敵は存外機敏ぞ」

「そのようですね」


 背中を預け合いながら次々と2人で30もの敵を斬り捨てていく。

 ダールトン卿の雷の魔剣もなかなかに凶悪だ。雷撃によって増した貫通力は岩の鎧兵の装甲をも易々と貫く。2人が立つと敵を寄せ付けない圧倒的な空間ができあがる。意思があるのかないのか、それは分からないが、岩の鎧兵団も2人の武力に追撃の手を止める。


「今だ、少年。撤退するぞ」

「いいえ、この撤退は俺が要請しました。全てはここにいる敵を封じるためです」

「何?」

「ダールトン卿はかまわず退いて下さい。卿がいては策が実行できませんから」

「――わかった。何をするかは分からぬが任せよう」

 

 ダールトンは戦場でわずかに背中を預けて戦っただけだ。だが真の騎士ならばそれで十分、マコトを認めていた。だから簡単に応じてくれた。

 ダールトンが急いで後退するのを感じ、マコトは大地に両手をついた。ダールトンがいなくなり、脅威度が減ったからなのか岩の鎧兵団は再び動き出すがもう遅いとマコトは意味深に笑みを作る。


「見せてやろう。亜空間操作の(しん)(ずい)。その威力のほどをな」


 マコトの神龍眼が一層赤く輝きを増していく。大量の魔力を消費し、大地にスキルの力を流し込んでいく。発動にはとてつもない集中力が必要になったが今のマコトは怒りに燃えていた。多少脳が痛むも苦でもない。

 確かに岩の鎧兵には同情すべき点が多い。だがしかし、マコトの愛すべき魔法少女たちが、――Gクラスの生徒が何人も倒れる事態になって許せないのだ。なにせ前世からの生粋の魔法少女オタクだ。


「おまえらミュリたちを追い詰めてただですむと思うなよ!!」


 マコトが後方にいるアリアたちにも聞こえるような怒声を張り上げた次の瞬間、岩の鎧兵たちの足元、その地中にある大量の土砂を一気に亜空間に収納した。マコトの亜空間の収納能力は無制限。

 100万トン以上の土砂が突然消えてなくなり、地中が空洞となったのである。直後、当然のごとく地盤沈下を起こし、岩の鎧兵団のほとんどが空いた大穴に吸い込まれるように落ちていく。

 それ見ていたアリアたち魔法少女はあまりにも馬鹿げた規模の落とし穴に心底度肝を抜かれた声を上げる。


「「「ええ~~~~!!」」」


 魔法少女ですらこの有様なのだ。見ていた王国兵など自らの目を疑い、正気を疑い、腰を抜かす者まで出る始末。

 だが、マコトははるか地下にてもがく岩の鎧兵を見下ろし更に追撃をかける。


「アリアたちの受けた苦しみこんなものじゃないぞ」

 

 今度は収納した土砂を容赦なく上から落として生き埋めにしていくのだから見ていた王国兵がドン引きしていた。

 ――そこまでやるのか!? と。

 それはもうゲリラ豪雨すら真っ青の容赦ない土砂を振らせていく。ちなみにアリアたちも真っ青だ。


「「「(それやり過ぎだから!!)」」」

 

 見ていた魔法少女たちは思わず敵に同情してしまう。それほどマコトは苛烈だった。戻ってきたマコトはダールトンにまず報告する。


「王国軍の窮状を見て少し敵を削らせてもらいました。残りの敵はお任せしてよろしいですか」

「少し……だと?」


 ダルートンはほぼ壊滅と言っていい惨状に首をひねりたくなる。残っているのは200ばかりだろう。4000以上の敵が今や地中に埋められ身動きがとれなくなっている。

 聞いていた王国兵は思った。

 ――これは少しとは言わない、と。

 助かったのは事実だ。それでも納得がいかない表情を浮かべ、兵らは顔が引きつっている。


「あらあら~~、ご苦労様ですわ~~」

 

 そこに空気の読めない侯爵令嬢サリィが魔法少女たちの誰よりも先んじマコトに近寄る。というか非常に近い。吐息が感じられる位に近すぎてマコトがちょっと焦っている。

 サリィは仰け反りそうなマコトの右腕を取って両手でぎゅっと抱きしめる。それをみたアリアが『はしたないですわ』となにやら慌てていた。そんなアリアをサリィは無視し、


「先ほどは助かりましたの~~」

「あ、ああ、当然のことをしただけだ」


 鼻孔をくすぐる髪の良い匂いやら、肌にかかる熱い吐息にマコトはドギマギして動きが硬い。やんわりと押しのけようとするがサリィはそれ以上にぎゅっと腕に力を込めてくる。

 サリィはクラスでも体の育ちがトップクラスである。フレアなら大丈夫だがこの姿であるとマコトは恥ずかしさで顔から火が出そうなほど真っ赤になっている。


「ううぅ、――離れてくれませんか」


 刺激が強すぎて、とはいえない。だが前世からの憧れだった魔法少女にこうも密着されてはいろいろと困る。

 だがもっと困ったことにレイスティアから嫉妬と責めるような視線に射貫かれ背筋が凍る。


「むぅ~~、マコト様。ティアナクラン殿下の援護に行かなくていいのですか?」


 笑顔なのに不満そうな声を漏らすレイスティアにマコトは急いで体を離した。底冷えする殺気にも似た気配を感じ恐怖がマコトを襲う。


(ティアって案外嫉妬深いのかも)

 

 遠くを見ればティアナクランやリリアーヌたちが奥にいる赤の巨人と交戦状態に入っている。フレアを安全な後方においてくると断って、一時離脱してここに降り立っただけなのだ。もちろんそれは方便でこの窮地に隠れてフレアからマコトに変身するための離脱だ。

 やはり土の上級精霊が元になっているだけあって遠距離魔法が通じにくいらしい。すぐに助けに言った方が良さそうだ。絶対魔法障壁に対抗する理論魔法はまだ生徒たちには難しいだろうから。


「苦戦しているようだな、ティアすぐに救援に向かうぞ」


 マコトは背中に光の翼を生やすと羽ばたかせ、一気に空に駆け上がる。ちょっとだけ怖いティアから逃げるようにも見えた。ティアもすぐに後を追って飛翔魔法で空に飛び上がり、巨人に向けて加速していった。

 2人を見送ったサリィはほほに手を当てておっとり呟く。


「フレアちゃんとは違うけどとても可愛らしい方でしたわねえ~~」

「「「えっ、どこが!?」」」


 むしろ容赦ない戦い方に怖い印象を受けていた魔法少女たちはサリィの言葉に耳を疑った。

 もう1人マコトをみて違う感想を抱いていた人物がいた。近衛将軍ダールトンである。


「マコト……。それに天使の翼か」


 霊体化や物質化により自由に出し入れ可能な光の翼をみてダールトンは確信する。


「(あの少年が大天使ユリエルの息子なのか。あの戦闘力、そして血筋をみても王国にとって有益であることは間違いない。陛下に我らが姫との縁談を進言してみるか)」


 エレンツィアによる謁見の折り、ティアナクランの反応はまんざらでもなかったと記憶していた。政治的にも、姫自身の感情を考慮しても悪くない縁談だろうとダールトンは自信を深めた。

 これが後に国王ビスラードの頭を更に悩ませることになると彼は知らない。


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