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第114話 魔技研編 『奇襲作戦!! いきなり失敗です』

 魔技研本部と王都を結ぶ林道で不規則な突風が葉擦れを起こす。

 それはフレアの騎士ランスローと反魔五惨騎のキリング。2人の剣士が命を削りあうような刃の応酬によるものだ。

 木の葉が雪のように舞い踊る中で、鋭い金属音が音を奏でてていく。


「フヒヒ、楽しいな。貴様は間違いなく俺が戦った剣士の中でもトップクラスだ」

「なら、ここで終わりにするか」


 返答は剣で示す。

 そう言わんばかりのランスローの鋭い斬撃が、キリングの迎え撃つ剣をはじき飛ばし、キリングを斬りつける。そして、重いランスローの斬撃で分厚いキリングの鎧は大きくひしげてはじけ飛ぶ。


「ぐううっ、今のはきいたなあ」


 脳みそまで揺さぶるノックバックに、キリングの体は大きく後退し、どうにか制止する。キリングはかぶりを振った。


「やはりか……」

 

 ランスローはキリングの鎧の砕けた肩口部分に注目し確信する。

 キリングの大きな鎧に隠れている腕が存在するのだ。キリングは背中の人間でいう肩甲骨辺りにも2本の腕が隠れているのだ。

 ランスローが長々とキリングと斬り合っていたのも、得体の知れないキリングの秘密を警戒してのことだった。

 前回ランスローが不覚を取った秘密がようやく明らかとなった。


「普段2本の腕は隠し、いざとなったら切り札にする。効果的な戦術だ。だが俺には二度と通用しねえよ」

「フヒヒ、我の秘密に迫った敵は本当に久しいぞ。本来なら第2形態で死合いたいものだがここは精霊の加護が強くていかん。残念だ」

「可能ならばここで仕留めたい所だな」


 しかし、ランスローは王都の南の方から感じる禍々しい気配を肌で感じている。何時いつまでもキリングを相手にしているわけにはいかないと考えている。キリングの方もシンリーが人間の負の力を集める任務の補佐を命じられていたため、本当に名残惜しいがほどほどに撤退するつもりだった。

 両者の都合は一致を見せ、互いにこの場は決着のときではないと斬り合いのなかで悟っていた。

 

「フヒヒ、決着の(いか)()にかかわらず次で最後にしよう」

「望むところだ」


 キリングは秘密がばれた以上腕4本で剣を持つ。4刀流だ。

 対して、ランスローは剣を(さや)に収めて精神を研ぎ澄ます。ランスローは二刀流だが、一刀での勝負を試みる。

 この気迫を前にキリングは不粋な言葉を口にしない。ランスローは2本目の刀をあえてしないだけの理由があるのだと無言の圧力の中に感じ取っていた。

 そして、その意味を読もうとすると次の一撃が楽しみすぎてよだれが出そうになる。


「じゅる、いくぜええーー」


 キリングが先に仕掛けた。4本の豪腕によって振るわれる大剣の4連撃。人間ではあり得ない境地の攻撃が容赦なくランスローに襲いかかる。

 既に振り下ろされているというのにランスローはまだ微動だにしない。ただ、すっと目が開かれる。

 キリングは極限の集中状態の中、そこまでを知覚する。

 しかしだ。突然ランスローの動きだけが早送りにされたように動き出す。キリングにはまるで途中の動画を切り取られたように感じられた。

 そう錯覚するほど瞬発力が異次元の水準にあったのだ。キリングの動体視力が対応できずにそのように捉えた。

 気がつけばランスローはキリングの全ての斬撃を一刀で迎え撃ち、全てのキリングの大剣をへし折ってなお振り切った。


「フヒ?」


 そして、振り抜かれた斬撃のすさまじさに大気の真空状態が2人の間に生まれ、それがやがて刃なき斬撃となってキリングに襲いかかった。


「ぐはっ」


 キリングはまっすぐ200メートル飛ばされ巨木に叩きつけられた。自らの剣がすべてへし折られたことに目を見開く。たった一撃の斬撃でキリングの4撃分を抜いたのである。

 ランスローは静かに残心、その後告げる。


「これが北神一刀流奥義『絶対斬撃』」

「フヒヒ、絶対斬撃か。確かにその名にふさわしい攻撃だった。防ぐことも、そらすこともできない揺らぐことのない芯のこもった一撃だ。素晴らしい」


 キリングはゆっくりと立ち上がり南の空を指差した。


「いいものを見せてもらった礼に1つ教えてやる。南の空に注意しろ。現実と幻の狭間を迷いし亡霊たちがくる。警戒することだな」

「……亡霊、か」

「フヒヒ、シンリーも王都を去ったようだ。我の任務もここまでだ。いずれまた会おう。今度はしかるべき戦場で、人類の命運をかけて死合おうぞ」


 キリングはまだまだ余裕を感じさせつつ静かに、陽炎(かげろう)のようにはかなくなるといつの間にか消えていく。


「まだ戦いは終わっていない。むしろこれからか」


 ランスローは急いで王都に向けて走り出すことにした。



 

 

「……フローレア、何か申し開きはありますか?」


 無魔シンリーを退けた直後、ティアナクランは南門側で起こったバカみたいな大爆発を目にしてこう思ったものだ。

 ああ、フローレアがまたやってしまったなと。

 その危惧は大いに当たっておりティアナクランは南の城壁の上に立つとその目を覆いたくなる惨状に卒倒しそうになった。


「見渡す限りの荒れ地……」


 草原は焼きなぎ払われ、いっそすがすがしい。いや、もう皮肉である。完全に。

 こんがり焼けて黒い(すす)だらけの城壁の上で正座させられ、フレアはポタポタと玉のような汗をこぼしながら(しゃく)(めい)に追われることとなった。


「全ては反魔五惨騎カノンの仕業です。私はむしろ王都を救ったと言っても過言ではありません」

「ええ、ええ。聞いておりますとも。王都を破壊するほどの自爆技にフローレアが同じく馬鹿げた兵器を使って相殺したとも」

「そうです。やむを得なかったのです。――ギリギリの判断でした」


 フレアは実に白白しく自己弁護する。

 

「そうですね。ではその件に関しては不問としましょう」

「本当ですか」


 それはもう助かったとばかりに大きく胸をなで下ろしたフレア。しかし、話はまだ終わっていなかった。

 ティアナクランは青筋が浮かんでいそうな強張こわばった声でもってフレアに言った。


「では、わたくしに内緒で王都を焼き払えるだけの大量破壊兵器を作っていた件の追求にうつしましょうか」

「しまった。その手がありましたかっ!!」


 フレアの柔らかいムチムチしたほほを両側からつねり、ティアナクランはその手に残る心地良さに驚く。


「あら、ぷにぷにで気持ちいいわね。前から思っていたけどフローレアは肌と髪が本当に綺麗だわ。どんなお手入れをどうしたらこんなに潤しくできるのかしら」

「ふみゅ、ひいまひゅからゆるひて~~」


 痛みに涙目となっているフローレアはようやく解放され赤く腫れた両ほほをさすっていたわる。


「私が個人的に開発している化粧品や石けんなどを使っているのですよ。ママも若々しくなれるからと愛用してくれてます。というか切らすととてもねるので貴重な研究時間を潰してでも作ってます」


 その言葉にはここにいた女性陣に衝撃が走る。

 彼女らは常々思っていた。フレアの母フロレリアがあまりにも若すぎると。1児の母がまだ魔法少女として外見に何の違和感もなく戦える容姿。魔法少女たちは常々不思議に思っていたのだ。その秘密がフレアの化粧品の数々にあるのでは思い至った。

 詳しく聞かせなさい。

 ティアナクランの興味が大きくそれようというとき、魔法通信から悲鳴のようなセリーヌの声を受信する。


『大変です。王都にとんでもない軍団が。西門から王都が(じゅう)(りん)されていますよお』

「「「はあ!?」」」


 フレアは慌てて光学指揮システムとつながったモニターを取り出すと画像を展開する。そこで目に入った光景に目を疑った。


「なっ、なな、これはなんですかああーーーーっ!!」


 ティアナクランは仰天した。モニターには恐ろしく巨大な人型を中心に物騒な軍団が王都を破壊しながら突き進んでいる。

 もはや兵が路傍の石のように蹴っ飛ばされ虫けらのように飛ばされていく光景が見える。全身が金属質のフルアーマーに覆われていることといい、フレアは前世の記憶が想起する。


「まるでリアルロボットですねえ」


 フレアはビーム兵器を持っていたらどうしようなどと本気で心配してしまった。顔が引きつっているフレアにリリアーヌがたずねる。


「フレアっち、それって何?」

「ああ、こっちのことです。それよりもこれは無魔ではなさそうですねえ」

『それはわたしも同感ですねえ。恐らく敵は『ホロウ』の魔物ですよお』


 フレアはモニターから見た限り、鎧の下には固そうな岩のような肌を見て当たりをつける。


「土の精霊を無理矢理使役しているのでしょうね。人型の岩の入れ物に入れて自立型の戦闘人形としているのでしょう」


 フレアはこの岩の鎧人形を見て、前世で言うゴーレムを連想していた。

 ニャムはそれを聞いて表情が沈む。


「それって土の精霊さんが嫌々従わされてるんだよね。どうしよう。倒したら殺しちゃうのかな?」

「それについては同じ精霊に聞くのが一番でしょうね」


 フレアは胸元に取り付けてある魔装宝玉に手を当て、膨大な魔力を吸収させると、それに呼応して美しい神秘の雰囲気をまとう女性、時空の上級精霊《アナスタシア》が姿を見せる。彼女は邪道騎士ジェノムに使役させられていた所を助けた上級精霊である。

 全身魔力で構成され、髪は魔力光で淡く薄紫に輝くアナスタシアにシャルたちは一瞬我を忘れて見惚れてしまった。


「アナスタシアさん、土の精霊を殺さず保護する方法に心当たりはありませんか?」

「同胞である精霊を気遣って頂き感謝致します。そうですね。土の精霊は恐らく多少砕いたところで死ぬことはないでしょう。正し、頭への攻撃は避けてください。頭部の保護と胴を必要以上に粉々に破壊しなければしばらくは持つでしょう。それまでに……」


 アナスタシアはスッと一際巨大な鎧の巨人を指差した。


「あの土の上級精霊を魔法少女のフィニッシュアタックで解放してあげてください。そうすれば残りの付き従う土の精霊たちの支配も弱まり簡単に封じることができます」

「となれば鎧兵団を分断する別働隊を使ってあの巨人を分断。巨人は私たちがどうにかしましょうか」


 フレアの提案にティアナクランたちが同意した。セリーヌが現状を報告する。


『現在、警備兵とダールトン卿率いる近衛部隊が向かっていますがどうにもなりませんよ。敵の1体1体が強すぎます。その上隊列を組み戦術を使ってきています。どこかに指揮官がいるかも知れません』


 それは気になるところだが今のところそれらしき姿は確認できてない。フレアは頭の片隅に考慮しながらも提案する。

 

「グローランス商会に残してきた魔法少女を率いて近衛部隊の援護を。ダールトン卿と連携して兵団を引きつけてください」

『無茶を言ってくれますねえ』

「わたくしからも頼みましたよ、軍師セリーヌ」

『うわあーー、プレッシャー。誰かに丸投げしたい。わたしはテキトーがモットーなのですが?』

「妹さんがセリーヌの活躍を見ていると思いますが」

『そんなのちょちょいのちょいですよお』


 モニターの向こうではセリーヌが張り切っている声が漏れ聞こえる。既に現地の魔法少女に指示を出して動き出しているようであった。


「ティアナも大分セリーヌさんの扱い方が分かってきましたね」

「彼女はわかりやすいですから」


 ティアナクランは苦笑しフレアに応える。


「フレアちゃん、話は終わったようですね」


 いつの間にやらちゃっかりレイスティアが戻ってきてフレアを抱きしめた。


「ティアちゃん?」

「今度は私がマコ……フレアちゃんを抱えて飛びます。他の女にギュッとなんてさせません」


 レイスティアはふくれっ面で嫉妬をにじませ、フレアを抱きすくめる。


「アハハ、うん。任せるからそんなに警戒しないで」

「皆さん、西門に急ぎますよ。飛べない人は私が飛翔魔法をかけますので近くに来るように」

「ほええ、王女様そんなこともできるの。やっぱりすごいの~~」

「さすがは王国最強やね」


 ニャムやキャロラインらはティアナクランのそばに寄り、風の飛翔魔法に包まれると魔法少女たちは新たな戦場に飛び立っていった。





 王都西区画では近衛部隊を中心とした王国軍が、岩の鎧兵団と激しい戦いを繰り広げていた。


「なんとしても食い止めろ。この先にあるのは戦えない民ばかり。後がないぞ」


 近衛将軍ダールトンは兵を()()し、自らも先頭に立ち立ち向かう。近衛騎士はわずか500。それ以外の魔導騎士が1000。警備兵が4000。魔法使いが800である。

 対して岩の鎧兵団は5000と後方に馬鹿でかい巨人が続く。数ではそれほど差はないが、岩の鎧兵団は非常に防御力が高く、魔装剣レベルの武器でないと鎧に傷すらつけられない。その上力が強く突破力は侮れない。更には最後尾にいるとてつもない巨巨人が王国兵に無言の圧力を与え続けている。


『だめだ、通常の武器じゃ歯が立たない。うわあああっ』


 装備が(ぜい)(じゃく)な警備兵から恐ろしい勢いで戦闘不能者が続出した。これではただの肉の壁にしかなっていない。

 このままではまずい。誰もがそう思っていたとき、少女の澄んだ声が響く。


「みんな頑張ってーー」


 魔法少女ミュリによる斥力の魔法障壁が兵を守る。加えて武器に攻撃力を高める付与を与えた。これによりただの警備兵は攻撃を受けても軽傷程度に抑えられる。さらに鎧は砕けずとも反発力が強化され、岩の鎧兵団にノックバックを与えて進撃が緩んだ。


「今だ。反撃のときである!!」


 ダールトン卿の声で魔装武器を持つ騎士たちがダメージを与えていく。確実にダメージは与えるが、1体1体が人に比べればはるかに巨大な5メートルサイズ。しかも、倒すにはあと何十と攻撃すれば倒れるのか分からない。

 それでも王国兵は決死の覚悟で立ち向かっていく。奥には彼ら兵の家族や隣人がいるかもしれないのだ。


『ぬおおおーー通してなるものかああーー』


 少数故に隊列を乱すかもしれない魔法少女たちはセリーヌの指揮の下、後方支援に徹している。特にミュリが活躍しているがそれだけに魔力の消費も激しい。


「ミュリさん、大丈夫ですの?」


 既に大粒の汗をこぼし始めているミュリはアリアに笑って応えた。


「大丈夫だよ。それに支援がないと多分あっという間に崩れるよ。それだけ敵は強いの」

「……そうですわね」


 アリアは敵が突破してきたときに備えていつでも対処できるように準備していた。アリアは危惧する。


(まさか連戦になるとは思いもしませんでしたわ。初陣の反省から魔力持久力の課題に取り組んできましたがそれでも……)


 先の無魔の襲撃では魔法少女がいち早く対応し、被害は最小限に抑えられたかもしれない。だが体力と魔力の消費量はそれだけ大きく不安がある。

 アリアの隣で控えるパティはじっとしていられない表情をしていたので釘を刺しておくことを忘れない。


「パティさんは今のうちに魔力の回復に専念して休みなさい。あなたは切り札なのですから」

「……分かってるよ」

「支援魔法は年少の子に任せますわよ。いずれ王国軍の隊列がもたなくなりますわ。そのときはわたくしたち魔法少女が最後の砦となるのですわ」


 アリアの声にGクラスの生徒たちは真剣に聞き入り頷く。アリアたちはすでに多くの戦いで経験を積み、戦況が見えるようになってきた。誰もがこのままでは押し負けるだろうと予感していた。

 それでも彼女らに悲壮感は全くといっていいほど感じられない。なぜなら信じているのだ。ここにはいないフレア教官がきっと驚くような策と方法で戦況をひっくり返すのだろうと。今までもそうして勝ってきたのだから。




 一方で戦闘には加わらず身を潜める少数精鋭の別働隊が戦場の側面外れの住宅街に潜んでいた。

 ミレイユ副団長率いる赤虎騎士団に近衛隊長グラードとその部下の混成中隊。更にマルクスらが中心となったウラノス魔導騎士学園の選抜精鋭魔導騎士候補生たちである。


「おうおう、すげえな。激戦だぜ」


 遠目にみても激しい戦いにマルクスはちょっとびびっていた。


「どうやら王国軍の劣勢の様子。よろしくありませんね」


 共和国からの盟友として参戦する竜人のカロンが冷静に戦況を分析した。

 ミレイユとグラードが光学指揮システムとつながったモニター端末を手に、今西地区に急行する王女とフレアから命令を受けていた。


「つまり、あたいらは横撃をしかけてあの1番後ろにいるデカブツとそれ以外を分断すればいいんだね」

『はい。その間に私たちがあの1番大きい巨人を倒します。そうすれば他の岩の魔物たちも弱体化するはずです』


 言うのは簡単だが、とグラードはフレアに意見する。


「ダールトン卿が近衛部隊を率いても抑えるのがやっとだぞ。我々だけで分断できるとは到底思えないが。何よりなぜここに学生がいる?」


 グラードは実力を疑問視するまだ若い学生騎士たちを疑わしげに眺めた。

 

『大丈夫ですよ。ミレイユたち赤虎騎士団とマルクスたちは強いですよ。クロノス騎士団にも鍛えられていますし、……ここだけの話、近衛部隊よりもはるかに性能の良いグローランス製の新型魔導鎧試作型を支給しています。力負けはしませんよ』

「はあ?」

『むしろ、私は近衛騎士の方々が足を引っ張るのではと心配していますが』

「な、何だと。近衛は王国最強の騎士団。学生に劣るなどと侮辱も大概にしろ」


 思わず(げき)(こう)するグラードにマルクスたちは慌ててもっと声を抑えるように身振りした。そして、マルクスがフレアに言った。


「おまえ相変わらずイケメン嫌いなのな」

『マルクスみたいな残念な二枚目なら大歓迎ですが』

「お前この超イケメンに失礼だとはおもわないのか」

『ぷぷっ、今の冗談は面白かったですよ』

「お前本当に失礼だな!?」


 フレアはグラードに(しん)(らつ)だった。なぜならイケメン映画スターのような雰囲気を持つグラードにイケメンアレルギーが激しく反応し、攻撃的になっているのだ。

 それはさておきとフレアはグラードを無視してミレイユにお願いする。


『まあ良いでしょう。ミレイユさんその辺上手くやってくださいよ』

「ああ、任せな。そっちこそぬかるじゃないよ」


 しかし、ミレイユの請け負う言葉は急速に説得力を失いつつあった。なぜなら……。


『ぐわああーーーー』


 一番先頭で警戒していたグラードの部下たちが次々に吹っ飛ばされていくのだ。


「何ごとだ!!」


 グラードが声を上げると周囲を警戒する。すると岩の鎧兵団の別働隊に包囲されつつあった。


「おいおいおい、囲まれてるじゃんよ」

「これはいけませんね」

「誰かがへまをしたようだな」

 

 グラードがマルクスら学生らに対して疑わしげな視線を向ける。

 その奥からは深くローブをかぶった小さな老婆があらわれ侮蔑に笑う。


「いーーひっひっひ、奇襲はもっと静かにやるもんだよ。大声出しておいてばれないとでも思ったのかい」


 ミレイユは額に手を当ててしかめっ面になってしまった。先ほど迂闊にも大声を上げたのはエリートさまであるグラードだったからだ。

 フレアは画面越しにグラードにいった。


『やっぱり足手まといじゃないですか。これだからイケメンは使えないのです』

「だ、だまれえーー」

「いきなり作戦失敗してんじゃねえのか、どうすんだよーー」


 マルクスは頭を抱えてこのピンチを嘆くのだった。


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