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黒幕への殴り込み

 とある屋上にあるコンクリート製のへりに半分ほど中身の入った缶ビールを置いて、スマホを片手に持った恰幅の良い髭の男は笑う。


「くく、遂に来るか……! 」


この後に起こる全ての悲劇を予兆しているように。


※―――※

第6話

「黒幕への殴り込み」

※―――※


「確かに、おかしな所はあったわ」


死神は顎に手を当てて鈴木を見る。


「私はあそこに死ぬべき人間が居るって聞いて行ったのに、実際に居たのはどう考えても生きるべき人間……」


彼はなにか反論していたが、彼女は構わず続けた。


「それって、誰かに踊らされてるってことでしょう? 」


ハルもそれに同意する。


「僕もそう思うよ。だってハナちゃんが死ぬなんておかしいもん! 確かに死相は滅茶苦茶はっきり出てるけど! うん、死ぬべきなわけがない! 」


おっさんも同意した。


「その通りだ。私たちだって頑張れば海賊王になれるはずなんだ! なれないとしたら誰かの陰謀だ! 」


そして、三人は覚悟を決める。


「満場一致ね。行きましょう! クライマックスへ! 皆! 丸太は持ったわね! 」


トピアは何処から持ってきたのか、割りと太めの丸太を抱え、ハルは、


「もちろんだよ! レベル5デスも習得済みだ! E缶も抜かりないよ! 」


と何処かで見たような缶を抱えるほど持って言い、おっさんは、


「空を飛ぶボスなら、降りてくるだろうところで爆弾を持ったまま待機し、跳ね返りを利用して場外まで運べば完璧だ! 」


どこかの爆弾男で使えそうな攻略法を口にしながら、赤く大きな爆弾を持つ。三人は頷き合って一斉に走り出した。ちなみに鈴木はと言えば、その横で、


『俺たちの戦いはこれからだ! トピア先生の次回作にご期待下さい! 』


と書かれたホワイトボードを掲げている。そう、準備は整った。

世界の命運を賭けた聖戦が、今始まる!

かに思えた。しかし、


「ばーか、もう始まってんだよ」


その直後に目の前に某探偵漫画で見慣れている全身黒タイツの人物が空から現れ、彼?彼女?は機械で変えたような声で言う。


「こんな茶番に6話も使うとはね。君たちには困ったものだ……。あまりに遅いから、私の方から来てしまったよ」


おっさんは聞いた。


「おい、貴様が黒幕か! 」


黒タイツは答える。


「黒幕、ね。そんな安っぽい呼び方は止めて貰おうか。私のことはGM様、又はUV様とお呼びなちゃい! 」


それに続いて言葉を発したのはハルだった。


「お前がハナちゃんをっ……! 絶対に許さないぞ! 」


彼は叫び声と共に飛びかかりながら、自身の大鎌を振るう。だが、


「くそっ! 」


それは黒幕の三発のハリセンによってあっけなく叩き落とされた。


「無駄無駄無駄ぁっ! 私はこの世界では神に等しい存在! そんなものが通用する訳ないだろ! 」


落ちてきたハルを受け止めて、おっさんは黒幕を睨み付ける。そして、次に口にしたのは、


「……なんて、真似を……。許さない……もう、ここで終わってもいい……! だから、ありったけを……! 」


という力強い言葉。彼は言葉と共に変容し、金色の髪を逆立たせた。


「うぉおお! これがスーパー死神の力ぁああ! 」


飛び上がるその体に最早重力というものはなく、その気迫は空を割かんばかりだ。ただ、実際のパワーは……。


「ぐはぁっ! 」


殴りかかっても黒幕を一歩も動かすことは出来ず、むしろ指でつつかれただけで床に落下した。


「ええっ!? 弱っ! 」


所詮は名前のない捨てキャラということだろうか。彼らの存在価値は小説において、道端の石と同等か、それ以下だ。


「いや、脇役の割には私たちより目立ってる気もするけど……」


まじすか、サーセンサーセン。ちょっと俺、自分の台詞用意するので忙しいんで、地の文までは無理っす。


「いや! 地の文お前が書いてんのかよ! 」


死神は憤怒した、そう、まるで褌のように……ぷっ!


「めちゃウザっ!! 」


「はぁ!? ウザくねぇし! 俺があの会社で死者が出るってデマを流さなければ、この物語成り立たねぇんだぞ! 」


「成り立たなくていいのよ!! 」


「アイキャンフライっ!」


「ああああ! 下らないことをしてる内に鈴木が二階からダイブしてるしっ! 」


「……くっ! 描写をおろそかにしたばっかりに……! さして惜しくない主人公を無くしたぜっ! 」


「まだ死んでないわよ! 」


「そうだ、俺たちはまだ死んでない! 生きていればなんでも出来る! おっさんの底力を嘗めるなよぉお! 」


「まだ居たの!? 」


「あの人、僕たちより絶対に目立ってるよね……というか、僕の存在って……必要? 名前の価値ある……? 」


「そして、あんたはなんで部屋の隅で落ち込んでるのよ!? ハナちゃんを助けるんでしょ!? 」


「……はっ、そうだった! 飛び降り自殺じゃワンパターン過ぎて読者に失礼じゃないか! 今こそ誠意を見せないと! 」


「どういう理屈!? そんで、やっぱり生きてたわね! 」


「喰らえ! おっさんハリケーン! 」


「ちょっとぉおお! 今、地の文がニートなんだから派手な技やめてぇ! 誰にも伝わらないからぁあ! 」


「ぐふっ! なんやら分からない力でぶっ飛ばされて壁にぶつかってしまったぜ! これはヤバいぞ! 人生最大のピンチ! 」


「真面目が全損してるぅう!」


「うぉおおお! 今こそ決着をつけてやるぞ魔王めぇええ! 」



《つづく》

《次回予告》

そうだ、分かっていたはずなんだ……何にだって終わりは来る。地の文も、やる気も、この小説だってそう……。

という朗報です。

次回、「終わると思う」お楽しみに!

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