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規則違反と混乱

「この世界はクソだ! 」


 抱えるほど大きな鎌を持った黒衣の青年は、町で一番高い電波塔の更に一番高いところに立って何の脈絡もなくそんな言葉を吐き出す。ただ、普通ならばこんな上空の戯れ言を誰が聞くわけでもないだろう。普通ならば。


『ああ、その通り。今こそ争うべきだろう。君は神なんだから』


※―――※

第5話

「規則違反と混乱」

※―――※


 まるでその場で誰かに聞いたかのように閻魔は話す。


地上(うえ)で反逆者が出たらしいから、直ちに回収してきて。勿論、生死は問わないよ」


瞬きを繰り返す鈴木の横で、死神も首を傾げた。


「反逆者って……同業者ですか? 」


「うん、君の同業者。ええと、ハルくんって言ったっけ? 彼が回収すべき魂を回収しないで、他の魂回収まで妨害してるらしいんだ」


「あの惚れ屋のハルが……? 」


「そう、そのハルだよ。何があったかは分からないけど、彼が『センソラマっ! 』って叫びながら蒟蒻を仕事中の同僚の背後に貼り付けて妨害をしてることは事実だよ」


「いや、行動謎過ぎじゃね? 」


「分かりました、怒りに狂う友人を鎮めるのも私の役目です。必ずや」


「え? ここでシリアス貫くの!? 」


「それじゃあ、任せたよ。出来れば情状酌量してあげたいから、他よりも早くお願い」


「他の閻魔とかいるんだ!? 」


「さぁ、鈴木! 行くわよ! 」


「はぁ!? どういう流れぇええ!? 」


かくかくしがじか。

はい、そんな感じで、二人は最後の目撃場所である青い鬼が出そうな古い洋館にやって来ました。


そして、鈴木はそこで目にしたのです。


「死にたくなければここを去れぇえ! 」


「きゃあ、ちめたいっ! 」


蒟蒻と白髭を生やした死神のおっさんの悲鳴が飛び交う悲惨な光景と……。


「……なんということでしょう」


直後、自分と一緒に行動していた死神がおっさんとハルを麻縄でミノムシ状態に縛る所を。


「午前2時45分、確保っ! 」


ハルはもがいても抜けられずに叫びを上げる。


「くうっ! 僕はこんな所で止まるわけには行かないんだ! ハナちゃんを連れていかせはしないぞ! 」


「ハナちゃん? 」


「ああ、なるほどね。死亡予定のその子に惚れ込んで、反逆してるってわけ? 」


「……彼女は僕に花冠をくれたんだ! それに、将来結婚してくれるって! 優しい子なんだよ! 生きて何が悪いんだ! 」


「将来、ね。ハナちゃん幾つよ」


「7歳」


「普通に犯罪じゃないのっ! 」


「いたいいたいいたい! まだ何もしてないから! 僕にとっては12年なんてあっという間だよ? それくらい待つよ! 」


「でも、なんで7歳の子が死ぬんすか? 55歳の俺が死ねないのに! 」


「まぁ、病気か何かでしょ。別段珍しい事じゃないわ」


「そんな殺生な……。生きたいと思ってる子を殺して僕を殺さないなんて! 僕が代わりに死にますから、その子を助けて! というかその子は助からなくてもいいから僕を殺して! 」


「いや、前にも言ったけど、代わりとか無理だから。死ぬもんは死ぬのよ。私たちは言われた魂を回収するだけ」


「それが間違ってるんだろ! 死神でも閻魔様でもない、見知らぬ誰かの声に従って死を与え続けるなんて理不尽だ! 」


「声………? 誰なんすか? 」


「さぁ? 神だって言う同僚もいるし、閻魔様は知ったところで意味が無いって言ってるし……」


「なるほど……。ハルさん、僕も分かりました! 今こそ、そいつを殺して俺も死ぬべきです! 特攻を掛けましょう! 」


「そんな! 手がかりも無しに無理だ! 」


そこに唐突に声が響いた。


「いや、手がかりならあるさ! ここにな! 」


それは最初からこの場所にいたおっさん死神である。彼の手には「こえのばしょまでのちず」と書かれた二つ折りの紙が……!

ハルと鈴木は歓喜の声を上げる。


「「おやっさん!! 」」


「え? 何これ!? 行く流れなの!? 」


ただ、盛り上がる三人とは対称的に死神は同様を隠せない。


「勿論ですよ! あなたも最早共犯です! 処罰されたくなければ来て下さい! 」


「脅しが始まった!? 」


「そうだよ、トピア。僕たちは変えなきゃいけない、この腐った世界を! ほら、地図を見て! 」


「ええ!? 私が地図読むの!? 」


渋々受け取った地図を読むトピア。しかし、その地図は……。


「……え、ちょっと待って? 」


その地図は某海賊達の夢の海原、グラ◯ドラインそのものだった。


「行けるかこんなんっ!!!」


怒りの言葉と共に床に投げ捨てられる地図。ハルとおっさんはなぜか落ち込んで地面に手をつく。


「そっ、そんな……。僕たちの希望は潰えてしまったのか!? 」


「くっ、俺たちは所詮捨てキャラ! 海賊王にはなれないのかっ! 」


すると、地図を誰かが拾った。

まぁ、ここには四人しかいないから、誰なのか明確だが。


「……まだ手はあるさ」


鈴木はおもむろにライターを取り出して、地図を炙った。


「おおっ! これは……! 」


地図は瞬く間に書き代わり、ある場所を指し示す。


「鈴木の会社……? 」


それは最初に鈴木とトピアが出会った思い出の場所である。



《つづけ》

《次回予告》

抜け落ちていく説明文……消えていく描写……ついにこの小説もクライマックスへ!!

夢の台詞率100%も近いぞっ!

そして、鈴木は人生をリタイアすることが出来るのか!? 次回、「黒幕への殴り込み」お楽しみに!

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