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She's So ×××(改稿版)  作者: 青月クロエ
シーズ・ソー・クール
27/93

閑話休題 幼なじみ(1)

 子供にとって大人の用事に付き合わされること程退屈なものはなく、歳より大人びているフレッドといえども、それは例外ではなかった。

 エリザがアパレル会社勤務の常連客から貰ったファミリーセールの招待券には、一枚につき四人まで入場できる――と書かれてあり、『子供服も置いてあるから』と、エリザとアガサによってメアリ共々(渋々)セール会場へと連れて来られたのだが。


「子供服って言っても、赤ちゃんとか小さい子向けの服ばっかりよね」

 古い雑居ビルのワンフロアに数多くのハンガーラックが並び、トップス、アウター、スカート、パンツ等がラックごとに分かれて掛けられている。

 他の客達に混じり、夢中でラックを漁るエリザとアガサを横目に、フレッドとメアリは退屈そうに壁際に凭れかかっていた。

「つまんない」

「おい、どこ行くんだよ。小母さん達にここで待ってろって言われてるだろ」

「だってじっとしてるの飽きてきたし。どうせお母さん達まだ戻らないから、ちょっとぐらい、他のとこうろついたっていいんじゃない??別にフレッドまで付き合わなくてもいいわよ」

「俺だけここに残ったら、お前より先に祖母ちゃん達が戻ってきた場合、俺が叱られる」


 喋りながら、すでに会場を出る気満々で扉に向かうメアリの後を慌てて追う。

 二人で手押しの両扉の片側を開き、廊下に出る。

 廊下に続く階段から上階か下階、どちらへ行こうかと揃って視線を上下させている時だった。


「ねぇねぇ、君ら暇そうだねぇー。どうせさぁ、親に付き合わされてここに来ただけだろ??子供服置いてあるって言ったって、ほんのちょっとしか置いてないもんなぁ」

「……誰??」


 突然、頭上から降ってきた声にメアリが訝しげに階段を見上げる。

 フレッドも階段を見上げれば、階段の途中で手摺に身を乗り出す少年の姿があった。

 背丈の大きさからフレッド達より少し年上に見えたが、変声期前の声や幼い喋り方、悪戯めいた表情から同年代くらいだろう。


「俺??エドワードって言うの、エドって呼んで!美人()()な君らは何て言うのー??」

 反応が固いにも関わらず、エドと名乗る少年は手摺から身を乗り出した状態でぐいぐい話しかけてくる。

()()??」

「え、違うの??だって、髪の色と顔がよく似てるじゃん??」

 全く悪気がなさそうなエドの笑顔に、メアリはちらっとフレッドを見返してきた。

 気遣ったつもりだろうが何のフォローにもなっていない。

「違うわ、私とこの子は幼なじみで友達なの」

「あ、そうなんだ!」

「それと」

「俺は男だ!」


『この子は男の子よ』とメアリが訂正する前に、眉間に深い皺を刻んでフレッドが叫んでいた――











「――そういう訳でさー、俺、最初はフレッドにすっげぇ嫌われてたんだー」

「……へぇ」

「あのファミリーセールやってたの、俺の親父の会社でさー。兄貴もそこで働いてて、俺もいずれその会社に入るから社会勉強しろって、兄貴に無理やり連れて来られてさ。社会勉強って言っても特にすることもないし、つまんねー!って思ってたところに同じ年くらいの二人を見掛けて、ついテンション上がっちゃったんだよねぇ」


 最近通い出した専門学校の帰りにオールドマン家に立ち寄ると、例の如くエドとフレッドがリビングで勉強をしていた。

 通う学校も、おそらく階級も違う(ジルの予想では低位中流(ロウアー・ミドル)のオールドマン家に対し、エドの家は中位中流(ミドル・ミドル))割に仲の良い二人が不思議で、遠回しに疑問を口にしたところ、エドがフレッドとメアリとの出会った経緯を話してくれたのだ。


「と言うか、お前の目がおかしいだけだろ」


 台所から移動させたダイニングテーブル、ジルの隣で勉強そっちのけで喋り続けるエドに、エドの対面の席でノートに視線を置いたまま、フレッドがぼそりと口を挟む。


「だって、メアリよりチビだったし??」

「誰がチビだ、デカブツ」

「……低レベルな喧嘩はやめてよ。こんな喧嘩ばっかりしてるのに、エドのお父さんもチェスターもよく一緒に遊ばせるわね」

「だって、チェスター小父さんと俺の親父知り合いだし、母さんはお店の常連客だもん」

「元々繋がりがあるからか」

「まぁ、それだけじゃないけどね」


 そう言うと、エドはたまたま顔を上げたフレッドに視線を送った。

 エドの視線に気付くと、フレッドは一瞬目を細めてみせた後、ふいっと逸らす。

 少年達の意味深な仕草が気になりつつ、ジルはあえて見なかった振りをする。

 きっと、メアリも知らない、二人の間にしか通じない何かがあるのだろう。


「どうでもいいけど、口より手動かしたら??俺、もう少しで終わるんだけど」

「うぇ、マジかよ!?早っ!!」

「エドが遅いだけだろ。今日は手伝ってやらないからな」

「冷てーぞ!!」

「知るか」


 冷たい言葉とは裏腹に、普段はきつく引き結ばれているフレッドの唇が緩んでいる。

 これにもジルは気付かない振りをした。

 どことなく楽しそうなフレッドを見ていたいと思ったし、それを引き出せるのは自分達大人じゃなくてエドやメアリなんだと、改めて感じさせられたのだった。

フレッドとエドが仲良くなったきっかけはまた別の話で語ります。

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