ワルキューレ
オカメ視点
バアルが向こうからマアルを連れてきた、ドローサニアとの接続がバアルのおかげで安定したのは助かることだけど、気付いたらいろいろやらかしてくれるバアルには困ったものだ。
『お姉さま、各エリアの巡回終了しました。異常はありません』
『ご苦労様ヒルデ、次の巡回時間まで休んでください』
礼をしてさがる配下のブリュンヒルデを眺めながら再び考える。
古神であるドラブラス様の力は強大だった、ただいるだけで溢れて垂れ流される魔力は自然を蝕み、動くだけで破壊を撒き散らした。
とられた対策はドラブラス様の力を切り離すことだった。新神達より少し力があるくらいで切り離された魔力はバアル、肉体や物理的な力はマアル、魔力と肉体を繋ぐその他の力はカアラとなり神格を与えられた。
こうしてバアル、マアル、カアラとわけられたことでドラブラス様の力はだいぶ弱まって普通の生活をおくれるようになった。そのバアルに続いてマアルまでこの世界にきたのはどうなんだろうか?と思わなくもない。
『オカメちゃん、いるかい』
『なんの用よ』
『用がなくちゃ来ちゃいけないのかい?』
思考していると、バアルがやってきた。最近のバアルは突然やって来ては難題を押し付けて来るから、身構えてしまうのも仕方ないわね。
『そういや、さっきワルキューレシリーズの子に会ったよ』
『ヒルデに?』
『そうそうヒルデちゃん………調子はどうだい?』
『おかげさまで助かってるわ』
先のイベントでもそうだったが、バアルがドローサニアと安定させたことでドローサニアの人間もココで遊べるようになったのが一番大きいと言える。
ドローサニアでは娯楽はたいしてないのだ。この世界の人達のように電脳世界を作りあげ、その世界の住人になって遊ぶという発想がない。
こちらの世界に魔法はないが、科学の力で遊ぶ為の空間を作りあげてしまったのだ。向こうで科学にあたる魔法で異界を作りあげて遊ぶなんてことはないだろう。
そんなわけでドローサニアの住人が遊びの場を提供されて飛びつかないはずもなかった。はじめはバアル配下のモンスターが実験代わりのモンスターアバターに入って遊び、データをとりながら調整して瞬く間システムを完成させてしまった。スライムが骸骨アバターに入りたがったりモンスター達にも好評だったと言っていたわね。
私達の方に話がきた時にはシステムも完成してドローサニアで流行にまでなってしまっていた。ドローサニアの住人もこの世界に来て遊ぶことの弊害は一気に私に押し寄せきた。
そんな時にドローサニアから私のサポート用に配下を連れて来ればいいと提案してきたのがバアルだ。バアルのせいで忙しくなってしまったのだけどサポート用のアバター『ワルキューレシリーズ』も持ってきたことでチャラにしてあげたのだけど………よく考えると私の仕事が増えたのにバアルの仕事が増えてないのはおかしいのではないかしら?
向こうにも人手を残しつつ、ブリュンヒルデ、ジークルーネ、ヘルムヴィーゲ、グリムゲルテ、ゲルヒルテ、ロスヴァイセ、スクルド、ノルン、シュヴェルトライテの9体のワルキューレに配下が入り私のサポートをしてくれるようになった。
サポートAIで追いつかなかった仕事も彼女達の活躍により、ようやく落ちついてきたところに登場したバアルに警戒するのは仕方ないことだろう。
『─聞いてる?オカメちゃん?』
『聞いてないわよ、ちゃん付けしないでくれる』
『じゃあ、もう一度言うねぇ。オカメちゃんには申し訳ないんだけど………』
バアルはぜんぜん申し訳ないと思ってない顔で一旦視線を外す。私から見えない顔は笑ってるのではないかしら?バアルならあり得そうだ、人の嫌がることが好きなバアルなら
『………ドラブラス様が来るから』
『………えっ!?』
『本当、ゴメンねぇ』
バアルはさっさと移動してしまった。マスター権限でバアルは呼び出せるからいいとして………ドラブラス様まで来るの?




